1,仮)ですが、売られました3
生まれてきてから32年。
一体、、、、何をどうしたら、、、こんなことが起こるのか。
今、私の頭の中は、魔界の門と魔物という、日常生活では使ったことのない2つの言葉がぐるぐる、ぐるぐる、回っている。ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、、、、。
もう一度、月を見上げる。あの見慣れたお月様は、私の知っている地球の周りを回っている惑星のお月様ではなく、魔界の門?なのだそうだ。そして、魔物?とやらは、あの月からやってくる、らしい??
え?そんなのファンタジーすぎるって、ゲームの中じゃあるまいし、頭おかしくない(笑)
ねえ?こんなにイケメンなのに、実は残念な人なのかしら。本当は、ものすごい厨二病をこじらせているとか?
カイト本人にいろいろ確認したいことは山積みだが、とりあえずいろいろなことは一端、端に置いておいて整理をしたい。頭が追い付いていなくて、悲鳴をあげている。
わかっていることは、どうやらこの体の持ち主と私は入れ替わってしまっているということだけは、とりあえずわかった。この体の持ち主、アルドラムダ本人は、日本で加藤美子として、私の代わりに?私になりすまして?暮らしているようだ。まずは、生きていてくれてよかった、と思う。私の体の無事が確認できたことは大きい。
そして、アルドラムダというこの体の持ち主は、おかまさんだったのかしら、、、。やっと女の体を手に入れたと言っていたと思う。出会ったのは、ほんのちょっとの時間だったけれど、仕草も話し方も女性のようだった。この体はこんなに筋肉隆々でガチでムキムキなのに。好きで鍛えていたのではないのだろうか。男性の体はよくわからないけど、普通に生活していてつくような筋肉ではない気がするのだが。仕事は工事現場みたいな力仕事のようなところだったのだろうか。
ここで大事なのは、魔界の門とか魔物とかが、本当に存在するというのなら、ここはどうやら地球ではないということになる、ということだ。いや、もしかしたら、安倍晴明とかの時代にタイムスリップしていて、そういう信仰みたいなものであるかもしれないという可能性を捨ててしまったわけじゃないけど、、、、
わかってる!本当は、いろいろおかしいって。この言葉の変な翻訳機能とか、訳が分からないことが多いこともわかっているが、わかってはいるが、往生際が悪いとか、もう観念しろとか思われるかもしれないけど、私はどうしても異世界とか、荒唐無稽な話だと思っているし、受け入れがたいことも事実なのだ。
そして、アルドラムダ本人は、今回の入れ替わりは奇跡で、もう元には戻れない、と言っていた。
けど!!人生に絶対なんてことはない!
入れ替わりが実際に起きたのなら、元に戻る方法だってあるはずだ。その方法を探すためには、この世界の知識が1つもない私1人では無理だ。生きていけない、こんな森で何を食べたら大丈夫かなんてわからない、火だっておこせない、速攻で野たれ死んでいる自分しか想像ができない。
自分の体を取り戻すためにも、絶対に誰かの助けが必要だ。ちらりとカイトを見る。私がさっきから百面相のように表情をころころ変え気難しそうに考え込んでいるので、声をかけられずに心配そうに様子を伺っている。
全部を話してしまって大丈夫なのだろうか?と考える。
この体の中身が、実は別人なんですって。果たして信じてもらえるだろうか。もしも仮に信じてくれたとして、カイトは私を助けてくれるのだろうか。
私はカイトをみる。心配そうにしているカイトの黒い瞳が何かを言いたそうにしている。
本当は嫌だけど、記憶を遡ってみる。
私は目をつぶっていたけど、この人は、私にはとても親切なこの人は、さっき、多分、人を殺した。とても簡単に。現実味のない出来事だからなのか、それとも入れ替わりという真実を知ったことで、私の心に余裕がないからなのかはわからないが、さっき自分に向かって剣を振り上げていた男性が、目の前のこの人に殺されたという事実が、いまだに夢のような感覚で、実感が沸かない。
もちろん、あの場でカイトが助けてくれなかったら、あの時に死んでいたのは確実に自分だ。カイトが命の恩人なのは事実だ。でも、守るために人を殺してもいいという道義はまかり通らないことも事実だ。過剰防衛とみなされるかもしれない。というか、そんな理屈はどうでもよくて、、、
ただただ、目の間にいるこの綺麗でかわいくて親切でイケメンでイケメンで、顔面凶器で顔面国宝級の素敵な男性のカイトが、私の命の恩人であると同時に、人殺しであるという、躊躇せずに人を殺してしまうことのできる人なのだというところが、正直に言って「怖い」のだ。
血しぶきを浴びていた彼の顔と、世話焼きのオカンのような親切な彼とのギャップに、ただ、私の心はひどく動揺をしていた。
私は、どうしたらいいのだろうか、、、、。