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私の中国体験記(女版)

作者: 荻野雅嗣

私は塩野あさみ26歳。

北京に来て早一年近くになる。

来た当初は聞き取りすらできず不便な思いをした。


そこで国際交流センターの職員に相談すると丁寧(ディンニン)という一人の女性を紹介された。


凛とした佇まいで日本の慣用句、ことわざで言えば「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿は百合の花」とでも言ったとこだろう。


日本の東京の大学および東北地方の大学院で「仏教、特に法華経と宮沢賢治」というテーマについて研究をしていたらしく、ちょうど一年半前に帰国したらしい。


これから宜しくねと挨拶された。

こちらこそ宜しくお願いしますというひと通りの挨拶を済ませ早速レッスンに入った。


まずは有気音、無気音やhの発音などのリスニングと拼音の発音、音読から始めることにした。


そつのないシステマティックでそつのない教え方で人によっては冷たく味気ないと考える向きもあるだろうが、正直言ってこの人の教え方がクールで性に合っていると思った。


ちょうど秋だったので紅葉狩りと温泉の話になった。

台湾にも温泉はあるらしいけど日本の温泉はやっぱり最高。

東京にいる時、箱根湯元や草津、熱海は言うに及ばず、単身で西の有馬や城崎というところまで足を伸ばしたらしい。

京都の嵐山で紅葉狩りをし、保津川下りを体験し、秋を満喫したという。

新潟の妙高高原で友達と一緒にスキーもした。

スキーの後に食べた酱汤もおいしかったよ。


その話を聞いて、私は祖父が長野の出身でよくかぼちゃとぶなしめじの味噌汁やアザミという山菜やかぼちゃのおやき、じいちゃんお手製の十割蕎麦なんかがよく食卓にのぼった。

ばあちゃんは群馬の出身で素朴な人柄が大好きだった。

まぁ、二人とも死んじゃったけどねとしんみり。


それを丁寧さんにいうと私は今北京に住んでるけど元々お婆ちゃん大連出身でさという答えが帰ってきた。

ざっくばらんなそのさばけたような感じと快活さそして明るさは話し好きな北京っ子のそのものだ。


きちんとした折り目正しさ、礼儀正しさの中に隠れたそのチャーミングな笑顔を私は生涯忘れる事はないだろう。


私は東京の23区の出身だが東京の某女子大を卒業し、私費で単身北京に来た。

元の専攻は日本文学で紫式部の源治絵巻を中心に研究するゼミのゼミ生だった。

ただ外国語科目は中国語だったので幾分か助かっている。

俗に言う第二外国語、いわゆる学生用語でいう二外(にがい)と呼ばれるものだ。


あの時は正直言ってヨーロッパの文学、つまりゲルマン系のヘッセやシェイクスピアなどを研究している同性の友人が秀才にみえてしかたがなかった。

恐らく私の弱いところ、弱点の一つである。

あとアンネの日記を紐解くという授業形式の講義もあったという。

あと、クリントン元大統領やアーミテージ元国務副長官、トモダチ作戦をはじめとする日米地位協定を軸とした日米外交史やマンハッタン計画、ビクトールフランクルの夜と霧など大量殺戮(たいりょうさつりく)の歴史などヨーロッパの負の遺産や歴史についても学んだようだ。

またドイツ語でも用いられるウムラウトは中国語のローマ字、拼音(ピンイン)でも出てくるがアルファベットになるともうさっぱりである。

難しい単語になると手も足も出ず、せいぜいグーテンタークなどが関の山である。


丁寧さんは基本的に秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)、こちらが根を上げない程度に厳しく、とくに発音については基礎からみっちり教わった。

私の昨晩にも容赦なく赤をつける。

对外汉语(対外中国語)も履修しているらしく、他のクラスで助教、つまり講師をしているという。

つきっきりで文字通り懇切丁寧に教えてくれた。

ただ、厳しさの中に優しさがあったのも事実である。

そこは本当に感謝している。

格式ばった故事成語、例えば臥薪嘗胆(がしんしょうたん)などもそうだが英語で俗にいう俗語、流行語、スラングについてもよく教えてくれた。

あと春节联欢晚会、俗にいう春晩(チュンワン)などに出てくるタレントや流行りの有線放送のバラエティなどについても事細かに説明してくれた。


HSKの対策や日常の細々としたことや業者の勧誘の撃退なども手伝ってくれた。

お礼にコーヒーや食事を奢ろうとすると「いいから、いいから。私は家政婦なんかじゃないし、自分のお金は自分で使って」というありがたいお言葉が返ってきた。


あと日本人同士でも異国マジックには気をつけるように。

絶対日本人同士でも後に必ず別れることになるから。

これはジンクスではなく本当だと思う。

逆もまたそう。

私たちがそうだったから。

あとは察して。

結末は決まってる。

悲恋だから。

結局別れることになる。


それと中国の男性は優しいけどその人は北京以外の内モンゴルや天津、青島チンタオの出身かもしれないよ。

もしもそうだったらいいけどさらに地方都市、もしくは瀋陽近郊とか丹東あたりかもしれないよ。

現に日本人女性は股をよく狙われる。

そしてもちろん股を開く。

つまりセックスの意味はよく理解してるよね?

もし知らないままやったら女性の側が酷い目に遭うから。

それは十分理解してるよね?

時に男は狼ということを肝に銘じておくこと。

それをよく覚えとくこと。

きつい私たちを避けて安易に日本人の方にいきたがる。

私たちはあんなならず者、家伙(ジャーフォー)には絶対股を開かないから。

それをよく覚えといてね。

今時そっちもやわじゃないことくらいわかるけど。

あと人種差別、ヘイトクライムではないけど中国と日本、欧米以外の人間とあまり関わらない方が良い。

私の友人も散々な目にあったから。

とにかく何かあったらすぐ私たちに連絡すること。

そして言わなくても分かってると思うけど日本の異性にも極力関わらないように。

中国という異国で妊娠でもしたらあなたどうするの?

この留学自体おじゃんになりかねない。

そこだけは覚悟しておいてね。

身体の大きい東北人(ドンベイレン)でない限り、傲慢アオマン自私ズースー小变态シャオビェンタイ大色狼(ダースーラン)女人气ニューレンチーと大声で連呼すれば良い。


もちろん日本の薬で避妊はちゃんとしてね。

万が一のために日本から避妊薬送ってもらって。

何があるか分からないから。


男の退路を完全に塞ぐこと。

それと、さっきも言ったけど何かあったらすぐに私に連絡して。

友達みんなで半殺し目に遭わせてやるから。

中国でもレイプは重罪だからね。

即刻あの世行き。

中国の男は体はデカくても案外弱くてちょろいもん。

という丁寧さんからのありがたい忠告があった。

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