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呼び鈴押すOR電話をして、『こちらに佐藤ルシファー・レグナード様はいらっしゃいますか?』

作者: 孤独

…………


1つ、先に言っていいですか?


出来なくはないんですよ。ハンドルネームでご依頼されるのは全然できます。


問題なのは、こっちが捜す労力とこっちの恥ずかしさなんですよ。


現実に起きた事です。

自分も、ウーバーさんもすげー困りました。

頼む際は、”〇〇様方”ってつけて頂けると、助かります。

あと登録する電話番号は携帯にしてください!!

ご自宅にされて、留守電にメッセージを入れるのに困惑しました!!



◇          ◇


通販・ネット社会は色々な形となってきた。その最先端にやってきたのか、はたまた変な道に入ってしまったのか、分からんが。


「”佐藤ルシファー・レグナード”って誰だよ!!」


配達員の木下がこの荷物を見た瞬間。

明らかに外人の名前じゃねぇし、漢字とカタカナを含めれば


「受取人をハンドルネームにするんじゃねぇ!!」

「たぶん、いい歳のお子さんかそこらが頼んだと思います」


中身はオタク系のグッズっぽいのだが。

よりにもよって、この荷物の住所は存在するのだ。一軒家の並びで5件ほどある。

しかし、そこに”佐藤さん”は住んでないし、”ルシファー”さんも住んでないし、当然”レグナード”さんも住んでない。


「おい、ふざけんなよ!!これ電話するのかよ!?これ携帯の電話だよな!?」

「残念ながら固定電話ですよ、木下さん」

「嫌だよ!お前が電話しろよ、さね!!」



想像するだけでも嫌になるっていうか、笑ってしまったのだが。


『こちらに佐藤ルシファー・レグナード様っていらっしゃいますか?お荷物が届いているんですが、ご自宅が分からなくて……』


「誰が信じるんだよ!!本人以外、信じねぇよ!!」


業者の名前を口にしても、はぁ?で終わってしまう。

出来たとしても、


「家が特定できた上で、お客様に確認をとればいいじゃないですか?」

「笑顔で言うなよ!!頼んだ本人いなかったら、空気重いし、荷物が返し辛ぇし、良い事ねぇよ!」


住所があってない OR 居住が確認できないなどがあれば、荷物に記載されている電話番号でお伺いするのが、とりあえず、1番に来る。

その次はもうしょうがねぇから、1件1件、


『佐藤ルシファー・レグナード様はいらっしゃいますか?』


聞いて周るしかねぇ。

クソがって舌打ちをしながら、木下がこの荷物を抱えながら電話をかける。



プルルルルル



プルルルルル


「やべぇっ!出ない!!」


ピッ


『留守番電話に接続します。ピーという発信音の後に』

「留守電に入れるのかよ!!マジっ!?」


急にハラハラした。会社名と担当を名乗った後に、これを尋ねるのか?しかし、そんな恥ずかしさを持っていたら、仕事なんてできるか。


「〇〇の木下と申します。本日、えー……佐藤ルシファー・レグナード様……」


名前の読み上げはカタコトでゆっくり。読み上げが終わった後は一呼吸おいて



「にっ、お荷物が届いているんですが。ご住所はあるんですけど、佐藤さんがいらっしゃらず、お電話をしたんですけど」


ルシファー・レグナードはもうつけない。佐藤でここは行く。

あとはもう流れ作業の様にメッセージを入れ、現地で確認をしてきますとも伝えた。

これでもまだ始まり。


「じゃあ、現地で佐藤を捜してくる」

「ルシファー・レグナード様もつけなさいよ」


◇        ◇


現地調査は12時頃にした。この時間帯だと、お昼御飯中で在宅している確率が高い。

お伺いするのは、たった5件だ。10分ぐらいで終わると踏んでいる。


「佐藤ルシファー・レグナード様を見つけてやろうじゃねぇか。どんな野郎なんだ!」


手前から一件一件。

改めて言うが、この家の並びに佐藤さんはいない。木下の予想では、加藤さんじゃねぇか?って思っていた。その加藤さん。


「誰ですか、これ?」

「あ、加藤さんじゃない」

「いや、そんな名前聞いた事がないですよ。佐藤はあっても、ルシファー・レグナードって……」

「ハンドルネームだと思うんですけどね」

「あー、そうなの。電話番号もウチと違うし、頼んでないよ」


名前が近くても、加藤さんの家はよくよく考えたら、60代の夫婦だ。子供はもうとっくに独立しちゃっている。こんな訳分からん荷物に心当たりがあるわけもないか。

しかしさ。


”加藤”、”手島”、”糸井”、”天野”、”叶”


この5件のどこかにいるこいつを捜すって、ほぼノーヒント過ぎるだろうが!!

もう佐藤じゃなくて、電話番号で捜してるぞ、こっち!!


「あー、もう」


お伺いしまくって分かったのは、

”加藤”と”糸井”は違う。”手島”と”天野”、”叶”が留守のようだ。残り3件に絞れたのは、良い事と捉えるべきか。そんなとき、こんな場所で声をかけられる。それも


「アノー……」

「!!」


外人の声!木下は振り向きざまに訊いた、


「あなたが佐藤ルシファー・レグナード様か!!」

「イエ、チガイマス……」

「はぇ?」


明らかな外人名を捜しているところに、外人が声を掛けてきた辺り、もうこいつで確定だろって思っていた。しかし、よく見るとこの人の背には、ウーバーさんのバック。つまり、ウーバーの配達員だ。その人は申し訳なさそうに木下に訊いた。


「サトウさんサガシテマス、ルシファー・レグナードッテナマエノ」

「あんたも捜してるんかい!!」


荷物だけに飽き足らず、ウーバーの注文でもそのハンドルネームで頼んだのかよ!!

この人も現地につけば分かるだろうと思っていたが、表札がなくて困惑し、配達員の木下に尋ねたのであった。電話をすれば良いと言っても、


「ワタシ、ニホンゴニガテ……」


外人だとそーいう方がいるよな。何というタイミングの悪さ。

しかし、この人の注文の電話番号。


「おっ!これ携帯じゃん!俺がかけてあげる!一緒に探そう!」

「OH!」


佐藤ルシファー・レグナードに直通の携帯電話。これに木下は電話を掛けると、すぐにだった。


『はい?』

「私……、ウーバーのモノなんですけど。佐藤さんって方を捜してるんですけど、表札が無いものでしてー、どのお宅なんですかね?」

『”叶”に来て』


それだけで電話が切れた。まったく人騒がせな野郎だ。


「っていうか、俺が呼び鈴押した時、無視しやがったな」


木下と外人さん。

もとい、配達員とウーバーさんが並んで渡すこともたまにはある。

”叶”家にいる、佐藤ルシファー・レグナードって奴に文句でも言ってやろう!


ガチャッ


「私が佐藤ルシファー・レグナードでぇ~す」

「「…………」」


出て来た相手が、まさかのJDぐらいの眼鏡をかけた姉ちゃんだとは予想がつかなかった。

文句を言うのも忘れちまったぜ。

なんかエロいコスプレっぽいのもしてたし。

許す!!



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