アイリスが答えを待っています。
────ほとんど完全に、不意を突かれた形。けれども戸惑いと驚きだけでなく、振り返れば納得してしまう王子様の顔が過去に在った。
それは、本当に、彼が言う通り。
誰より『突然』に押し掛けて、誰より『突然』に恋をして、誰より『突然』に彼の心を暴いた……正確には、やり返す意趣が在ってのことだったとはいえ。
文句は言えない。言うつもりはない。
元より、きっと、そろそろだろうと思ってはいたのだから。
「──…………」
いつから心を備えていたのか、遡っての詮索など今更すまい。既に彼が辿った思考の事実は揺らぐことなく、また此処に在る今も姿を変えることはない。
驚いている。それは間違いない────けれども、
「…………ん」
右を見ても、左を見ても、そして正面を見ても。
この場にいるのは、全て等しく、今に至っては自分自身の〝大切な人〟だから。
私も、揺らがない。変わらない────誓った通りに。どんな未来が選ばれようとも、この私が守るからと己が心に決めた通りに。
アイリスは恋をした男の子の選択へ、ただ静謐に耳を傾けた。
さあ、
「──────……俺は」
答えが、齎される。
三人分ある、気を付けて。




