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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第六節

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基たる樹の頂にて 其ノ伍

 鍵言承認、拍動する星剣が〝名〟を求めて瞬く。


 魂依器解放────即ち必殺の予備動作プレモーションにして終幕を見据えた合図でもある俺の声を聞き、挙動を見て、歩を並べぬ者は此処にはいない。


 例によって、その場にいるだけで最大級の貢献を果たす仮想世界屈指の壊れ支援バッファー〝巴〟の三律。手を出さずに見守ることこそ常とばかり、暇を暇と思わず気を抜かぬ様子で役目を果たし続けていた三人の中から……。


「〝剣法招来〟」

「〝鏡法招来〟」


 まず、気を発したのは二人。


 剣の左、鏡の右、左右それぞれの手印が事の起点。さすれば目に見えて起こる事象は……──先行、眩く無数に乱顕する反射光。


 映しては返す〝鏡〟の権能。【鏡法】ショウが敷いた反射のラインが瞬く間に道を形作り、更には【隔世ノ擬神像アポクリフェイト・ヴェルミカーネ】を取り囲む檻と成る。


 そして後行、道を辿るは【剣法】レン。姿なく奔るは〝剣〟の権能。


 新たな脅威を察知した巨躯が荒れ狂うよりも早く。反射光ならぬ反射道を刹那の内に駆け抜けた斬撃の概念が『檻』の中へと届けられ────



『       』



 無声の叫びを錯覚して然り、終わりなき凄絶な乱反射を開始した。


 然して、それも()()()()()()()()



「『赤──宿すは無限、果てなく望むは共鳴りの円環』」

「────『其は人を救いし剣ではない』」



 時間稼ぎに名乗り出た二人の間から歩み出る【玉法】様の声が並び、連なる詠唱歌が長い戦いの終幕を彩るが如く高らかに響く。



「『白──宿すは境界、微睡み求むは真なる自由』」

「『正義を齎す剣ではなく、罪を正す剣でもない』」



 呼応するように、響くは空鳴り。


 歌に反応しているのか、あるいは吹き荒れ始めた魔力に反応しているのか、鏡と剣の檻の中に在って身を捩り暴れ始め────ようとした擬神像へ、



「《氷剣の円環エルテ・クライス》ッ!」



 同じく檻の中へと浸み込んだ無数の雪華が、空間を満たす斬撃概念に大半を墜とされながらも『濃度』と称すに相応しい馬鹿げた数で以って殺到。



「『四柱は未だ揃わず、集いし眦は欠片なれど』」

「『光を見よ、光を視よ、光の身よ歩み給へ』」



 力の簒奪封印、からの極冷気による行動阻害。暴威を抑え込まれた怪物が、再び檻の最中にて斬撃の海へ沈んでいく様を見据えながら、



「『此方より彼方を、希む瞳は此処に在り』」

「『聖鍵の往先とびら未来いまを望み、過去みちを照らしてヒトを紡ぐ』」



 隣に並ぶ足音。


 眩く白く輝きを放つ星剣を手に振り返れば、負けず劣らずの光を引き連れた聖女様が微笑んだ────然らば、あとは一歩を踏み出して、



「拓け────」

「『遍く満たす祝福の調、記す此名は〝星天ほし〟の御手なり』────」



 声を連ね、物語の節を彩るのみ。



 ……斯くして、最後の最後。


 ただ一つ檻を突破し、無視できない力の高まりへと伸ばされた手の対処は、



「やれ」



 横合いから容易く消し飛ばしてのけた、頼もしい〝拳〟に任せきって────



「《此方を穿つ廻神矢エル・ソラス》」


「《光芒一条クラウ・ソラス》」



 瞬き閃くは白輝ひかり、降り落つは光芒ひかり



 投げ放ったが最後。物も空間も時間さえも、ありとあらゆる障害と無理を穿ち貫き着弾が確定する必中概念攻撃が擬神像の顔面に出現・・


 音もなく、見た目だけでいえば些細な光景。そんな挨拶代わりの一撃を他所に……──光流瀑布、光属性最高位魔法の威が天井から地へと迸った。


 瞬間、滅多なことでは腰を折らない無貌の女神が首を垂れる・・・・・。それ即ち、巨躯に降り注ぐ光の奔流が【双拳】の全力殴打に勝るとも劣らない威力を誇る証。


 つまるところ、一秒、二秒と経っても首を垂れ続けているということは、



 そんな超威力を、与え続けている・・・・・・・という証左でもある。



 《光芒一条クラウ・ソラス》────数ある光属性魔法の中で最高位に在るハイエンドスペルにして、数ある光属性魔法の中で最も非情と恐れられる確殺の一手・・・・・


 広範囲殲滅を得意とする光属性において珍しい、直径僅か一メートルという小範囲の座標指定型。大魔法の枠に則った長文詠唱、更には詠唱開始時点で座標指定を求められ以降の位置変更が叶わないという極まった命中難。


 しかしそれらをクリアして敵を捉えた光の瀑布は、裁きを終えるまで。あるいは術者の魔力が尽きるまで降り止むことなく、行動不能の枷を以って対象を縛る。


 実に恐ろしい────が、



 ()()()()()()()()()()()俺も、他人のことは言えないだろう。



 ……ってなわけで、有言実行。いざ華々しく・・・・


「見せ付けてやれ相棒ステラ────」


 起点は、その身体に白剣の鋒を埋めた【隔世ノ擬神像アポクリフェイト・ヴェルミカーネ】の巨躯。



「────地味『魂依器アニマ』の汚名は、返上だってな」



 無垢に輝く『白』へ寄り添うように、咲き誇るは『赤』の大花。



 内から銀を突き破り出でた無数の巨刃が、降り注ぐ光の滝と絡み合い────






 ◇【隔世ノ擬神像アポクリフェイト・ヴェルミカーネ】を討伐しました◇


 ◇第百層の攻略を確認しました◇



 ◇基底樹路の完全踏破を確認しました◇



 主の消え去った階層最奥に、煌めく緑光の雨を呼び込んだ。






此方を穿つ廻神矢エル・ソラス》:Ver.赤+白

・二柱招名による威力補正。

・追加効果『白座』:投擲時の空間転移による絶対的必中概念。

・追加効果『赤円』:標的のHPを吸い上げることで内から生じる無限増殖の剣刃。


よし、地味魂依器の汚名は完全に返上できたな。

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― 新着の感想 ―
必中無限攻撃……代償あるのは知ってますがえぐいなぁ。あと三つくらい取り込めるんですかね?どうなっちゃうの
>標的のHPを吸い上げることで内から生じる無限増殖の剣刃。 なるほど強制的に体内でシュウ酸カルシウム(尿路結石)や尿酸結晶(痛風)を作り出すものか。それはエグい。
光属性大魔法、詠唱が水と似た感じな所が大変良き。 こうなると他属性大魔法も気になってきますねぇ。
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