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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第六節

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基たる樹の頂にて 其ノ壱

 今や【曲芸師】の代名詞となっている瞬間爆推スキル《空翔ロケット》────もとい《煌兎ノ王(レガ=リエルタ)》統合後の《天歩ロケット》だが、キャッチーな名称も手伝って世間では大いに親しまれ……また同時に、大いにネタとして弄られている。


 俺が基本、多くの戦いで躊躇なく初手ぶっぱしてきたのも原因なのだろう。


 開幕ロケットだとか、とりあえずロケットだとか、ロケットいつものだとか、ロケットあいさつだとか、とか、とか、とか、とか、エトセトラそんな感じ。


 まあ、然りだ。傍から見ての評価がそうなるのも無理はない。


 けれども実際のところは甚だ遺憾。俺の『初手《天歩ロケット》』はピーキー極まる己が性能を十全に理解し、熟考を重ねた上で基本択と成した立派な戦術の一つだ。


 超々高速戦闘を立ち回りの基本にして要とする俺にとって、最も怖いこと。それがなにかといえば、ただ一つ『相手が自分より速い』ことに尽きる。


 移動速度が上。攻撃速度が上。反応速度が上。


 なんでもいいが、とにかく何かしらの要素で相手が自分の速度を上回っていた場合……それを()()()()()()()()()()()()()()()()、高確率で俺は頓死する。


 だから、相手が俺の速度に、順応できていないであろう、最たる刹那────



 つまりは開幕に基本全速を叩き付けることで、返し手の存在を引き摺り出す。



 リスク排除というより、リスク激突の強要。


 【藍心秘めるアクアマリン・紅玉の兎簪ラビットハート】の『致命無効』含む切り札アレコレを傘にして、一発目から己がペースに敵を引き摺り込む……──そのための〝賢い策ロケット〟なのだ。




 ……と、そんな熱弁を過去に語った折。


 『ッハ』と鼻で笑い飛ばした挙句に『結局はアドリブ上等の行き当たりばったりじゃないか』と正論を叩き付けてきやがったブロンド侍は許さない。


 なればこそ、()()()()()()()()()V()e()r().2()


「《ロケッ────」



 《アルテラ=ノーティス》並列起動。



「────》ッ!」


 安全性の根拠をも獲得した今の開幕一歩を、映像で突き付けるのが楽しみだ。


────────────────

◇Status / Restarted◇

Title:曲芸師

Name:Haru 

Lv:110

STR(筋力):100

AGI(敏捷):200+450

DEX(器用):0+450

VIT(頑強):0(+100)

MID(精神):500(+400)

LUC(幸運):300

────────────────


 臨戦態勢と同時に纏った燐光、当然のこと『決死紅』は初手切り安定。ならば総MID値の振り分け追加ステータス込みで俺の脚は容易く仮想世界最速数値へ。


 プラス《天歩ロケット》の馬鹿推力および《天閃イグニッション》添加による強引な『纏移』の瞬間起動……つまりは疑似『縮地』の技を以って、この身は音を置き去りに。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()



 《アルテラ=ノーティス》────秘める力は、()()()()()()()



 それ即ち、代表例を挙げるとすればアーシェと共に挑んだ【悉くを斃せし黒滲(レプ=ラ・ノウバディ)】戦。あの戦いの中で助けられつつ俺自身も困惑した我が謎能力、予知にも似た『勘』のスイッチを任意でON/OFFできるスキルってなわけだ。


 任意でスイッチを入れなければ発動しない勘というのも妙な話だが、しかし我がことながら反則と思える『あの感覚』を味方にできるのであれば────


 俺の開幕一歩には最早、一抹の恐れも逡巡も必要ない。



『   』



 空翔け一閃、反応ナシ。


 瞬いた紅の双刃に身長差ガン無視で顔面を刻まれ、しかし女神像は動きゼロ。声はなく、身動ぎもなく、加えて剣で触れてもなお気配さえ希薄。


 しかしながら、


「うっへぇ、こッッッわ……!」


 撒き散らされた、圧の波濤。直接、心に押し寄せた不安感の津波。


 無貌の頭上に展開したHPバーに記されたダメージは迫真のミリだが、どうやら些細な被害度に比例せず女神像やつの敵愾心を山ほど煽ることには成功したらしい。


 はてさてコレは俺がビビっているだけなのか、そういう権能・・・・・・なのか。


 そして返し手に晒されることなく無事に背後へ抜けられたのは、果たして偶然か必然か。これ以降は答え合わせの慎重な立ち回りも意識しつつ……。


 空中制動および〝想起リコール〟抜刀【早緑月】。


 更に外転出力『カイ』臨界収斂。



「〝四凮一刀〟」



「《剣の円環シュヴェルト・クライス》……ッ」



 果たして視覚があるのか否か。前後で無貌の巨躯を挟み、交わす視線は信を以って────注文通り一歩を待って後に続いたパートナーと共に、



「《はやて》ッ!」



「《千剣の一つネル・ウィダーシュ》‼︎」



 一点交錯。


 迸る翠刀、奔る魔剣が、異形の首へ閃を刻んだ。






開幕三秒フラットのお話。

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― 新着の感想 ―
この予知夢的な勘って現実世界と仮想世界の時間の流れの速さのズレから来てたりしないかな 時計からすれば仮想世界の1日の長さ=現実世界の1日の長さだけど、仮想世界ではありとあらゆる物に対して思考加速をかけ…
当たり前過ぎて誰も触れてないけど実際は何も見えないレベルの3秒フラットの出来事の中のその中の時間で完璧に合わせてるのほんっっっとハルソラしてる。
もはや曲芸師と書いてロケットと読むレベルになってるのでは? 第六感の機械(このゲームが機械だって信じてるやつどんだけおるんだこの期に及んで)的再現ってなに???????????????
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