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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第六節

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第百層

 鍵樹迷宮第百層、最奥部の手前・・


 これまで九十九度も見てきた階層主の間へと繋がる大扉。それらと比べて遥かに豪奢な外観……かつ言い表せない重圧を撒き散らす、隔たりの目前にて。


「────ってな感じだそうです。各々、覚悟はよろしいか?」


 いよいよもっての大一番、とはいえ最早それなりに以心伝心。


 これまで二週間弱。毎日毎日この迷宮で顔を合わせ戦場を共にしてきたのだ、それぞれのコンディションやら何やらを言葉を要さず把握するのは慣れたもの。


 ならば今更あーだーこーだと直前ミーティングが必要だとも思えず、代わりの戯れとばかり二着・・および三着・・の様子から察した難儀な未来を語ってみれば……。


「頑張りましょうっ……!」


 と、拳を握って張り切っている隣の相棒を筆頭に。


 並ぶ仲間たちの顔には、恐れも怯えも躊躇もナシ。修行的な意味合いで強敵ラブなゲンさんが表情硬くソワついていることを除けば、揃って落ち着いたものだ。


 五十層から百層ここまで何千回も思ったことだが、気が抜けてしまうほど頼もしい。


 然らば────


「よし……行くか」


「はいっ!」


「あぁ」


「「行きましょう」」


 見上げれば首が痛くなるような大扉に両手を当て、見上げるのではなく振り返る。そうしてソラ、ゲンさん、ショウとレンからそれぞれ言葉を。


「「────」」


 加えて、いつもいつとて見つめられてしまっているのだから当然のこと。自然と視線が交わったサヤカさんと小さく笑みを交わしつつ……。



 両腕に、力を籠めた。



 さすれば、ある種の思考操作。謁見者にして挑戦者ことプレイヤーの意思を読み取った『門』が、俺の手に押されるのではなく逆に誘うように内へと開く。


 そうして、目前が拓けて────


「………………うへぇ」


 第一声。俺は視界に飛び込んできたエゲつないビジュアルの巨躯を上から下まで瞬時に読み取り、その迫力および予感・・に対して苦い息を漏らした。


 なんの予感かって、そんなもの。


「…………わ、ぁ……」


「実際に見ると、聞いていた以上に……」


「……難儀、しそうですね」


 俺とほぼ同時に細い声音を零したソラさん然り。お手本のような苦笑いと一緒に交わされた、溜息交じりのショウレンの会話がその通り・・・・



 きっと、絶対、間違いなく、死ぬほど面倒臭いやつ。



 確信に迫る、そんな予感だ。


「………………………………」


 体高十メートルを優に超える銀色。遠目でもハッキリとした〝嫌な感じ〟を目に伝えてくる、生物味と無機質が混在した不可思議な質感の肌。


 顔の存在しない、無貌の女神像。自らを掻き抱くように身体へ回された両の腕を他所に、背部に観音像の如く生える五対十本の背腕。


 足に代わって、床に根を下ろす樹木のような一本脚。そして……()()()()()()()()()()()()()()()()、宙に浮かぶ純白の隻翼。


 まさしく情報通り、わざとらしいまでの怪物性オンパレード。そして正しく兄弟二人の言葉通り、実際に自分の目で見ると殊更にアレだった。


「完全にラスボスの風格だな……」


 鍵樹迷宮の常として、ボス部屋の扉を開け放ったとしてもフロアに侵入しない限り階層主が襲い掛かってくることはない。理性を宿すモノは静かにジッと瞳を向けてくるし、理性など知らぬモノは静かにジッと佇んでいるというのが共通項。


 それゆえの戦略的事前観察────なのだが、正直なところ。


「ぁー……背中の腕が伸びそう・・・・・・・・・、以外に思い付くことある人います?」


「伸びそう、ですよね。やっぱり……」


「アレは伸びますね」


「間違いなく伸びるやつです」


「……伸びるだろうな」


「再生能力も在るのではと予想します。物語における不死の竜ヒュドラのように」


 とまあ全会一致、そんな感じが考察限界。


 足元が床に根差している以上は本体が歩き回ったりはしなさそうなこと。それに絡めて、わんさか背中に生えている腕たちが元気よく襲い掛かってきそうなこと。


 目で見て容易く想像できるのはソレくらいだ。貴重な初見経験値を積むため『全チーム共通ネタバレ禁止』で挑んでいる俺たちに、察知できる何かは無い。


 つまるところ……おそらく幾つも擁しているのであろう特殊能力アレコレについては、初見で対処する他ないだろうってなわけだ。


 オーケー、わかったよ。



 誠に結構、上等じゃねえの。



「────ソラ、例によってダブルフロント。最初は一歩下がってフォロー頼む」


「っ、はい!」


「ゲンさんは基本中衛。必要に応じて前後移行、判断は任せます」


「わかった」


「ショウ、レンはサヤカさんの護衛。緊急時の差し込み・・・・は期待しとく」


「「お任せください」」


「サヤカさん」


「はい」


 いつも通り。ここまで四十九の層を止まらず一切ぶち抜いてきたセオリー通りを告げながら、最後の最後で振り返ったのは理由がある。


 まあ、単純な話。


「場合によっては聖女様の威光・・・・・・も頼りにさせてもらいます。そのつもりで」


「……ふふ。それは、張り切らなくてはいけませんね」


 相手次第で、彼女の〝本気〟も注ぎ込むべきやもしれぬってなわけで────


「ソラさん」


「なんですか」


「鷲掴みヤメて」


「知りません」


 戯れ一発、これにて和み散布も了とする。


 例の語手武装云々については勿論ソラにも共有済み。でもってニアやアーシェと同じく、予想した通り『お好きにどうぞ』との言も頂戴済み。


 だからこの脇腹ガッ・・・・は、そっちのアレとは無関係。


 なんというかこう『頼られて幸せです』的な感じで満面の笑顔を見せたサヤカさんから、思わず視線を逸らしてしまった俺に処されて然りのシンプルな制裁だ。


 その通り俺が悪い。ごめんて。



 ……と、いったところで。


「さぁて……それじゃ、我らがBチーム────」


 やきもち焼きな天使の頭にぼふっと撫で一撃。謝罪および埋め合わせは後に回して歩み出ながら……両手に喚び出すは、紅緋の短剣。


 九十層からこっち、ようやく力を解放されて以降。言わずもがな安心と信頼の活躍に次ぐ活躍を積み重ねてきたThe・マイフェイバリットも後ろ腰に。



────────────────

◇Status / Restarted◇

Title:曲芸師

Name:Haru 

Lv:110

STR(筋力):100

AGI(敏捷):200

DEX(器用):0

VIT(頑強):0(+100)

MID(精神):500(+350)

LUC(幸運):300


◇Skill◇

全能ノ叶腕ナラク・ガンダールヴァ

十撫弦ノ御指ミストルアーデ

拳嵐儛濤ヴォルカネイト

《ルミナ・レイガスト》

《エクスチェンジ・インプロード》

《貪欲ノ葛篭》


・水魔法適性

《アクア》

《フラッド》

《カレントハーケン》

《メイルストロム》

千遍万禍レーヴァタイン

水属性付与エンチャント


・Active

《リフレクト・エクスプロード》

《フラッシュ・トラベラー》

《影葉》

鏡天眼通アイズ・オキュラス

《アルテラ=ノーティス》


・Passive

《白竜ノ加護》

英傑ノ縁環アサインズ・フェイト

煌兎ノ王(レガ=リエルタ)

《アテンティブ・リミット》

超重技峨ギガント・フィガー

《剛魔双纏》

《タラリア・レコード》

弌軌到星スターレスト・マイン

《極致の奇術師》

危極転鸞フェイタル・クローザー

《戒征不倒》

星月ノ護手ディアス・ルナリア

《魔を統べる者》


《リジェクト・センテンス》

《影滲越斃》

《四柱継抱》

《水精霊の祝福》

《四辺の加護》


◇Arts◇

【結式一刀流】

飛水ひすい

打鉄うちがね

天雪あまゆき

枯炎かれほむら

重光えこう

七星ななほし

鋒雷ほうらい

 口伝:《結風ゆいかぜ


四凮しふう一刀流】

はやて

しずく

────────────────



 相対するは第百層の主。【隔世ノ擬神像アポクリフェイト・ヴェルミカーネ】……然らば、一歩。



「────ラストバトルだ。楽しんでこうぜッ!」



 いざ、正真正銘の全力を並べて。






もしやこれ百話以上ぶりですかね兎短刀君。

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― 新着の感想 ―
相変わらず軽戦士とは?と言いたいステータスですね。MIDが1番高くてDEXが最底辺と言う。なんならSTR・AGIの値が外と比べたらLUCの方が高く、合計してようやくトントン化してますし。スキルでDEX…
あれ、詠唱休符(レスト)って一覧に載らないやつなんですかね?
ソラかわ! いざ百層ボス…
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