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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第六節
914/977

side:Team.A


 轟と吹き荒ぶ〝風〟の最中、駆ける金色が瞬いた。


 内に秘める獅子の素顔を動力に駆動する、煌びやかな黄金のヒーロースーツ。床を揺り動かすほどの強烈な踏み込みで宙へ躍り出た戦士が放つは────



「どぅオッラァ‼︎」



 天へと昇る、ドロップキック。


 アッパーカットめいた軌道で風の下顎・・・・を捉えた両脚。然して鎧衣の脚部より、燦然と激烈な光芒が溢れ出すと共に()()()()()()()()()()()()()


 即ち、まさしく〝必殺のキック〟を受け止めてしまった敵の身体へと。



 数えて、三、二、一。



『ッ──、──────』



 尊顔を足蹴にされた〝風〟が憤るまま黄金へと手を伸ばすより先。軽快に鎧衣を鳴らしながらスマートな着地を決めた戦士────【総大将】の背後。


 つまりは、魅せを決めたヒーローの背景と化した敵が、爆発四散・・・・


 そうして冗談のように色とりどりな爆炎が空間を賑やかし、熱も衝撃もない光が一切の意味を持たず……否、()()()()()()()()()()()を真摯に成した末。



 ◇【風ノ魔人ジン】を討伐しました◇


 ◇第八十層の攻略を確認しました◇

 ・報酬が贈与されます────【緑宝ノ盟珠】を獲得しました。


 ◇秘匿忘楔アンノウン【風ノ魔人 ティゼロシェン】の討伐を確認しました◇

 ・報酬が贈与されます────【風魔ノ宝雫:魔賜】を獲得しました。



 去るは、その身を緑光と散らした暴嵐の巨人。訪れるは、勝利の喝采ファンファーレ


「ッハ、決まったぜ……」


 祝いを享受しながら冗談めかして……けれども満更でもない〝顔〟を晒したゴルドウの身体から、黄金の鎧衣が光に解けるように消えていく。


 然らば、そんな偉丈夫を囲むのは仲間たち。


「なんだい、また大物を持ってかれちまったよ」


 愉快半分、悔しさ半分といった面持ち。一切の遠慮がない振る舞いで以ってゴルドウの背に祝辞半分、小癪半分の平手打ちを見舞うは桜梅桃李。


「流石っス大将!」


 モテ・・が絡むと残念キャラ。しかし根本的にはノリ良く快活で地に足付いた性格がファンには好評、リッキーが()()()()()()()手放しの称賛を贈り、


「えぇねえ、ほんまに楽で」


「少しは働いてください???」


「そんなんゆうても、後方支援はレコ君が十人分も働いてくれるんやもん」


「なに言ってんですか千人分は働けるでしょ貴方」


「いやいや、単体相手じゃ五人分が精々よ?」


 それぞれ後衛を預かるジンとレコードが、少し離れて言葉を交わす。


 【総大将】【女傑】【足長】【群狼】【雲隠】────言わずもがな錚々たる面子。如何に鍵樹迷宮が高難度と言えども、流石に過剰戦力が過ぎる並び。


 なれば、そんな中に一人。


「ようカナタ。お前さんも良かったぜ、ご苦労さんだ」


「うわ、っぷ……!? あ、ありがとうございます……っ!」


 唯一〝名〟を持たずして参戦する少年を、しかし場違いと謗る者はいない。


 それは人格診断をパスしたアルカディアプレイヤーであるからとか、序列持ちに選定されるに足る精神性を持ち合わせているからとか、そういった要因を別に。


 頭を鷲掴みに出来てしまいそうなほど大きな手で髪をクシャクシャ撫でられながら、素直に称賛を受け入れ喜んでいる少年が実力を示し続けているからだ。


「俺、カナタ君と戦うたら負けそうなんやけど」


「俺も怪しいですね。ジェネリック曲芸師と一対一は厳しいです」


 と、()()()()()戦士程度であれば小指で捻るであろう頂点後衛二人が零した冗談半分が、現時点におけるカナタが勝ち取った評価の全て。


「っ……苛烈な援護の中での立ち回り、お二人に学ばせていただいてます!」


「ほんでメッチャいい子」


「おそらく憧れに倣っているのと、本人の気質で完璧いい子ですね」


 更には素直かつ勤勉を極めているという人格面および在り方まで含めて、根本的に『上を目指す』という性質を持つ序列持ちの目に好ましく映らないはずがなく。


「本当に、良く成ってきたじゃないかカナタ。再戦、近々にしとくかい?」


ほえあおえんあはいほそれはごめんなさいおふほいはへひもうすこしだけはふはほひいへうじかんがほしいです


 お梅も可愛がりに参戦し、偉丈夫と女傑の両名から揉みくちゃにされる少年の図は組分けより一週間を経て日常の光景。


 方向性は多少なり違えども、人の好意を嫌味なく集めるという点も果たして。かの〝憧れ〟に倣った在り方が引き寄せるモノであるのか否か……──


「リッキー君。今更やけどアレはええのん? 頭が幸せそうなことなっとるけど」


 と、むさ苦しい剛腕はともかくとして。()()()()()()()()()()()少年を指差しジンが後輩へと一言、紛うことなき悪戯心による戯れの問いに、


「んぇ? ぁー……いやぁ、羨ましいっちゃ羨ましいんすけど…………」


 リッキーはジッと冷静な目で……やけに落ち着いた澄まし顔のまま可愛がりを素直に受け止めている少年を、改めて暫く眺めた後。


「カナタ少年は、モテても別にイラっと来ないんすよね……なんですかね?」


「や、そんなん俺に聞かれても知らへんて」


 不思議と嫉妬や羨望が欠片も湧かぬ己の内心に、首を傾げていた。






カナタはかわいいからね。

半分幕間。DとEのもあるよ。

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― 新着の感想 ―
>美女の胸に抱かれている少年 >DとEのもあるよ。 深読みしすぎました()
カナタくんはモテてるというより、弟かわいいというか後輩かわいいというか
序列持ちと序列外特記戦力の株が上がれば上がるほど、本職ヒーラーのくせしてイスティアで序列入りしていたロッタの化け物具合(いい意味で)と不気味さ(いい意味で)が際立ちますね。彼の本気が見れる時は来るので…
2025/08/15 01:59 アルジャーノン
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