ご褒美タイム
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◇Status / Trance / Restarted◇
Title:曲芸師
Name:Haru
Lv:10⇒11
STR(筋力):30⇒40
AGI(敏捷):30
DEX(器用):10
VIT(頑強):0
MID(精神):30
LUC(幸運):0
◇Skill◇
・全能ノ叶腕
・Active
──None Skill──
・Passive
《極致の奇術師》
《リジェクト・センテンス》
◇Arts◇
【結式一刀流】
──────……
────……
──……
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鍵樹迷宮における十階層攻略というのは、様々な意味で節目となるポイントだ。
そこで待つのは、階層最奥に控えているボスエネミーの際立った強さ。そして攻略報酬となる武装封印解除アイテムやスキル制限一部解放といった具合に、十層ごと用意されている強烈な試練とソレを超えた先に在る褒美────だけではない。
本来ある力を制限された状態で課される困難、ぶっちゃけソレ系のコンテンツは一部のガチ勢を除いて忌避するプレイヤーも多いことだろう。
セルフ縛りは好まないが、公式側から提案される制限プレイの類なら〝ルール〟として楽しめる。そんな感じの俺とて、真なる一般勢からすればガチストイック勢の一種と見なされるはず。ゲーマーと非ゲーマーは根本的に別人種なのだ。
ならば、そういった不満点を完璧に吹き飛ばすために如何なる設計をすべきか。
答えは簡単────降り掛かる不便から生じるストレスやマイナスを遥かに超える、ポジティブかつ莫大な楽しみと報酬を用意してしまえばいい。
「さて……」
然して、十分少々の休憩を経て立ち上がった俺が足を向ける先。ボス討伐の達成と同時、大広間の中央に出現していた異変は計三つ。
一つは実体。つい最近どこかで見た覚えのある〝モノリス〟の小型版。
木とも石とも金属ともつかぬ不可思議な材質に、ビッシリとアルカディア文字が刻まれた縦長の長方形。背丈のほどは大体一メートルほどか。
で、残る二つは非実体。モノリスの両脇に展開している、それぞれ青と緑の光を放つ転移門……──端的に言えば、進むか戻るかの選択肢である。
青の光へ飛び込めば、待ち受けているのは次なる高み十一層。そっちはまあ自然な設計ゆえヨシとして、問題なのは緑の方。アレに飛び込んだ場合、迎え入れてくれるのはレッツ再スタートの第一層ではなく……。
自力で帰ってねの、第九層。
そう。この鍵樹迷宮、登り始めたが最後お手軽リセットが不可能なのだ。
離脱自体は安地か非安地を問わずいつでもどこでも『現在攻略中の階層内進捗を破棄する』ことで可能なのだが、既に攻略済みの階へ自由に移動できるといった階層を上下する類のゲームにありがちな便利機能が存在しない。
十階から一階へ下りたいのであれば、再び九階層から順に逆走攻略しなければならないということだ。勿論ボスも道中雑魚もキッチリ復活するが、これに関しては一応メリットも内包しているので単なる鬼畜仕様とは言えないだろう。
そこまでガッチガチのガチではないプレイヤー層は、ひたすら一層から十層を行き来して稼ぐのがトレンドみたいだしな────さておき、
「遂に拝謁が叶ったな、人類有数の悪しき文明にして欲望の権化……」
ひとまず両脇の転移門は『青』へ飛び込む一択ゆえヨシとして、これより俺が覚悟を以って挑み掛かるは中央のブツ。
遍くプレイヤーに〝熱狂〟と〝絶望〟を振り撒く、今なお現代人類に多大なる犠牲者を生み出し続ける極悪文明こと……──その名も『夢を売る概念器』だ。
然らば、とりあえずのご挨拶。
◇樹路の踏破進捗を確認しました◇
◇ランダムなスキルが解放されます◇
なにとも称し難い不可思議な手触りのモノリス表面に触れた瞬間、溢れ出した緑光が俺のアバターを包むと共にシステムメッセージが到来する。
そうして、幾度かの連続発光が広間を照らした末────
◇スキル《拳嵐儛濤》がアクティベートされます◇
◇スキル《水魔法適性》がアクティベートされます◇
◇スキル《アクア》がアクティベートされます◇
◇スキル《リフレクト・エクスプロード》がアクティベートされます◇
◇スキル《星月ノ護手》がアクティベートされます◇
◇スキル《影滲越斃》がアクティベートされます◇
「ッぃよ────────────ッッッッッしよし神引きキタぜおい‼︎」
俺の喉から溢れ出したのは、極まった是から来る喝采一つ。
開放されたスキルの数に関しては、事前情報からの推理とほぼ合致するため、今更の思考はナシでヨシとする。ついでに解放された内の三つが暫くほぼほぼ使い道を得ないであろう事実も、この際ヨシとしてしまおう。
そう思えてしまえるほど、残る三つの引きが神懸っていた。
「おぉ、なにやら甚く喜ばしいご様子で……」
「あぁ、もう、勝ったよケンディ殿。こっからの活躍は期待しといてくれ」
「稀人様。お言葉ですが、ここからもの間違いでは???」
アホみたいな使用頻度を考えれば当然のことだろう、順調に二度目の進化を果たした元《フリズン・レボルヴァー》こと《拳嵐儛濤》────神スキルを超えた超絶ぶっ壊れスキルが加わったことで、火力的な不安は一息に消し飛んだ。
更に他のなにを置いても有難いのが、こちらも『緑繋』攻略戦を経て《月揺の守護者》からの進化を果たした《星月ノ護手》である。
単なる『ヒト運搬スキル』から躍進を果たした特殊極まるコイツの力があれば、こっから先の木登りのペースアップは約束されたものと思っていいだろう。
オマケについてきた《影滲越斃》も文句ナシの良。
自らより強大な相手へ立ち向かう際に『攻撃力増加』や『消費MP低減&自動回復率向上』などの効果を発揮する割とシンプルに強力な特殊スキルであり、能力を制限されるがゆえ自動的にボスが格上となる鍵樹迷宮にはバッチリ噛み合っている。
総合すれば、倍どころではない強化幅。最高のクジ運と言って差し支えない。
MIDが乏しいゆえ残念なことになっている《アクア》や、手甲や盾を装備していなければ発動さえできない《リフレクト・エクスプロード》は……まあ残念ながらハズレ枠。活躍の機会が訪れるまで座っていていただこう。
────っし、そしたら〝次〟だ。
神引きの後は運気の残量を気にして清々しい撤退択を取る者も多かろうが、俺は運気を『分量』ではなく『流れ』として考える派。それ即ち……。
「んじゃ本番と行こうか。掛かってこいよギャンブルッ……!」
今、撤退の二文字はないということ。
さあ、いざ勝負。ステータス的には幸運ゼロとか知ったことかよ俺は勝つぞ。
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◇Status / Trance / Restarted◇
Title:曲芸師
Name:Haru
Lv:11
STR(筋力):40
AGI(敏捷):30
DEX(器用):10
VIT(頑強):0
MID(精神):30
LUC(幸運):0
◇Skill◇
・全能ノ叶腕
《拳嵐儛濤》
・水魔法適性
《アクア》
・Active
《リフレクト・エクスプロード》
・Passive
《極致の奇術師》
《星月ノ護手》
《リジェクト・センテンス》
《影滲越斃》
◇Arts◇
【結式一刀流】
──────……
────……
──……
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ポジティブで莫大な報酬云々については次話。
今日中に描こうかな、どうしようかな。
身体よわよわでエアコン使えない系の人類に救いを下さい。
いきなり暑すぎて気力が蒸発する。