スタートライン
◇【鍵樹の樹霊】を討伐しました◇
◇特殊称号を獲得しました◇
・『樹路ヲ辿ル者』
◇特殊称号『樹路ヲ辿ル者』がアクティベートされます◇
◇第一層の攻略を確認しました◇
・報酬が贈与されます────【PARLs】を獲得しました。
・報酬が贈与されます────【緑宝ノ盟珠】を獲得しました。
・報酬が贈与されます────【開闢鍵】を獲得しました。
「はいはい、盛り沢山だこって」
宙に舞い散るは緑の燐光、我が身を包むは黄金の光。
戦闘所要時間おおよそ三十分強。思いの外……ではないか。比喩なく貧弱に成り下がっている此方の戦力を考えれば、これでもそこそこ早かった方だろう。
ともあれ、勝利は滞りなく。
やはりLv.1で戦り合うには少々しんどいと言わざるを得ないポテンシャルを以って、見事な大暴れを披露した樹霊をコツコツ削ってノーダメフィニッシュ。
んで、然らば降り注いできたのはアナウンスと報酬の嵐。
直接的に攻略へ関係するネタバレは例によって避けてきたが、鍵樹迷宮内の特別ルール然り最低限の基本情報については知識を入れてある。
ゆえに、記念すべき鍵樹ボス初撃破にて『スタートラインへようこそ』とばかり贈られる初期セットに関しても予習済み。クランのメンバーと先を歩いているソラさんがアレやコレやと教えてくれた。
まず一つめの【PARLs】……公式から読み方が提供されていないため、暫定的に〝パール〟と呼ばれているアイテムから。外見的には『植物の種を模った拳大の宝珠』とでも言うべきもので、簡単に言えば財布みたいな代物とのこと。
インベントリから取り出しチョイと確認してみれば────今しがた散ったボスより得た分だろう。キッチリ『1000』という数字が浮かび上がった。
そのもの、ルーナとは別種の〝通貨〟である。使い道に関しては……ま、最短でも十層攻略が済んでからのお楽しみ。世間を熱狂もとい阿鼻叫喚の渦に叩き込んでいる主な要素であるため、期待半分の怖さ半分といったところだ。
で、お次の【緑宝ノ盟珠】は第一層攻略で一つ目が貰える他、その後は例によって十層攻略ごとに二つ目、三つ目と与えられる制限解除アイテム。
つまるところ、これを鍵樹迷宮内に在って機能停止している武装に用いることで息を吹き返させることができる。勿論のこと使い切りのアイテムであり、盟珠一つにつき使用可能にできる武装は一つ。基本は誰しも熟考を要するだろう。
────しかしながら、
「ほぼ一択だわな」
一つだけ選べと言われたならば、俺には選択肢などあってないようなもの。
とりあえずステータスの虚弱貧弱が極まっているため焼け石に水でしかない防具は後回しとして、武器優先。ならば……【兎短刀・刃螺紅楽群】? 【早緑月】?
いいや、違うね。
「そら起きろ相棒。木登りしようぜ」
諸々の事情を鑑みて、我が魂依器こと【真白の星剣】以外に在り得ない。
淡い緑光を宿す、やはり〝種〟のような形をしたビー玉サイズの宝珠を右手中指の円環へコツンとぶつければ────仄かな発光と共に、武装が力を取り戻す。
ご指名の理由は至極単純。兎短刀は小兎刀生成と本体再生で現状MID:0であるがゆえ乏しいMPを食い潰したら使用不可。翠刀に関しては意外と長い刃渡りゆえ閉所での戦闘に適さない上、そも重過ぎてSTR:0じゃ扱い切れないから。
後者の重量に関しては《全能ノ叶腕》の『限定時間完全武装支配能力』で誤魔化しは効くものの、やはり諸々の環境が噛み合っていないため厳しいだろう。
その点【真白の星剣】はオーソドックスなサイズかつ程々の重量で取り回しがよく、なにより『魂依器』がゆえの不壊属性が純粋に頼もし過ぎる。
決して壊れない武装が齎す安心感は、間違いなく攻略の強い味方となるはずだ。
一応ほぼ一択と言ったように、同じく不壊属性かつ〝手甲〟という最高クラスの取り回しを誇る【仮説:王道を謡う楔鎧】も候補ではあったが……。
ま、そこはね。
「っちょ、おうこら待て待て出てくんな……! MP溶かしたら元も子もないんだっつの落ち着け頼むから落ち着けステイステイステイ……‼︎」
レッツ初心ってなことで、改めて親睦を深めるいい機会だろうから。チカチカ瞬いて指輪も至極ご機嫌だ、いろんな意味で選択は間違っていないだろう。
なお、使用可能になるとはいえ完全に数値的性能や特殊能力が開放されるわけではない。その辺は俺たちと同じく、層攻略に伴って力を取り戻していくらしい。
つまり俺なら、例えば【藍心秘める紅玉の兎簪】を解放して初っ端MID+200上積みだぜガッハッハとかはできないということ。ままならないね。
────と、さておきラストの【開闢鍵】いっとこうか。
こちらに関しては、一層攻略時限定の報酬品になる。見た目は艶のある木の根で形作られた名の通りの小さな〝鍵〟で、グッと強く握ってやれば……。
◇【開闢鍵】を使用しますか?◇
そして、ポップアップしたダイアログの『Yes』を叩いてやれば。
◇任意スキル一つの開放が可能です◇
とまあ、そういうこと。
本来は十層刻みの攻略で一定数がランダム解放される仕様に先んじて、初期解放の武器適性スキルに次いで一つだけ好きなスキルを解放させてくれるってな話。
……んでまあ、これに関しても、
「ハイハイ、一択一択っと」
◇スキル《極致の奇術師》がアクティベートされます◇
《天歩》? 《天閃》? ハハご冗談を。
思考停止で《煌兎ノ王》なんざ選べるわけないだろ舐めてんのか。諸々の制御スキルを欠いたままアルティメットじゃじゃ馬を誰が迎え入れられるものかと。
自傷ダメージの感覚遮断、DEXステータスによる器用補正向上、更に地味ながら確たる力を以って俺の曲芸を支え続けている転倒耐性……一時たりとも忘れちゃいないぜ《極致の奇術師》よ、お前が俺のビルドの真なる屋台骨だって事実はな。
現状これで立ち回りが劇的に変わることはないが、少なくとも十層攻略と同時に制御難スキルが一斉に雪崩れ込み死という未来は抑制できる。
それが重要、それが大切────あ、特殊強化効果はお呼びじゃない。ハウス。
とまあ、そんなところで。
「っし、んじゃ行くか。張り切ってこうぜ相棒!」
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◇Status / Trance / Restarted◇
Title:曲芸師
Name:Haru
Lv:1⇒2
STR(筋力):0⇒10
AGI(敏捷):10
DEX(器用):0
VIT(頑強):0
MID(精神):0
LUC(幸運):0
◇Skill◇
・全能ノ叶腕
・Active
──None Skill──
・Passive
《極致の奇術師》
《リジェクト・センテンス》
◇Arts◇
【結式一刀流】
──────……
────……
──……
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一層で世話になった直剣を鞘に納め、サブ武器として同行させるまま。
俺は新たに呼び出した実によく手に馴染む白剣を携えて……広場の中央に立ち昇る青光の柱、第二層へと続く転移門に飛び込んだ。