表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第四節
809/976

然シて来たレ青ノ子ら、扉を閉ザす由ハ無ク 其ノ参

 それ・・を明確に目視できた者は、その場に誰一人としていなかった。


 限界高速機動につき視界を失う使い手は元よりのこと。唐突に訪れた神風に虚を突かれたとはいえ、日々トップクラスの戦場に身を置く精鋭たちとて例外なく。



 全ての目に等しく、辛うじて僅かな残影を彩したのは〝水〟の色。



 斯くして、()()()()()()()()()()()()()()を携えた風は吹き荒び……現れたのは、周囲に蔓延る夥しい木根の触手をゴッソリ断ち切ってみせた少年が一人。


「────標的タゲ役、預かりますッ!」


 友軍の壊滅劇に待ったを掛けるまま、化物を前に恐れることなく声を放つ。そして、異形の身より放たれる情報圧だけで違う・・とわかる〝敵〟と視線を交えた刹那。



『──────』



「ッ────」



 意思の汲み取れぬ無声が一つ、戦意に満ちた静謐が一つ。同時に矛を刃を持ち上げた双方が動くと共に、一時の静けさを享受していた戦場に音が舞い戻った。


 空裂く木根と、地奔る弌矢。


 タウントスキルがなくとも『脅威』と判定されるには十二分。飛び入りの一閃・・ただそれだけで敵愾心ヘイトを丸ごと掻っ攫ったカナタ一人へ、暗色の矛が殺到する。


 そうして向けられた、数十に上る致命の鋭利を……──


「──────────《火属性付与エンチャント》」


 床を走り、壁を奔り、天井までをも縦横無尽に駆け巡り、悉く置き去りにした末に放たれるは〝力〟を宿す鍵言の声。然して触れるモノを灼く朱に輝くは、



「【遥遠へ至る弌矢レヴェリオン】」



 世界より拝した、魂の分け身。


 蒼二刀、朱二足・・・。天井に立つ身へ差し向けられた矛を最小の動きで躱すと同時、天の地へ突き立った致命を足場へと代え木根の剛槍を躊躇うことなく直滑降。


 さすれば、着弾は瞬きよりも早く。



「────……ッ‼︎」



 駆け巡る赤の雷光、連なり響くは斬と打の会心音。


 口に咥えられた黒刀のトリガーは引き絞られ、ゼロ百加速からの百ゼロ停止の常を蹴飛ばして止まらず迸った攻め手が【adminiアドミニstratorストレータ:02】に傷を刻む。


 左右斬撃、からの左右蹴撃。一息刹那で放つ曲芸四連撃が狙い違わず通り、木根の怪物が鮮血代わりのライトエフェクトを盛大に撒き散らす──


「っ……!?」


 と、その場の誰もが思っていた。


 しかし、戦果を告げる紅は宙に舞わず。相も変わらず声も反応も起こさぬ牡鹿が示したのは、やはり相も変わらぬ無機質な行動のみであった。


 つまり、即座の反撃。


「────ッ、ぶな……! すいません、アレどうなってるんですか!?」


 ダメージエフェクトが出ないどころか、H()P()()()()()()()()()()


 まるで爆ぜるかの如く撒き散らされた木根の鞭から咄嗟に逃れ、時速五百キロを優に超える瞬間超加速により退いたカナタが混乱を叫ぶも……。


「俺らは君こそ『どうなってんだ』って思ってるよッ!?」


「カナタ君やばないですかね!!?」


「曲芸師二号が益々もって曲芸師二号に……!!!」


 返ってくるのは、少年の混乱を上回る混乱および動揺の声。そんな場合でないのは各人とて百も承知、ゆえにこそ度を越えた驚倒を示すモノに他ならず。


「────っ、み、見ての通りっ! 攻撃を入れてもHPが出ないんだよコイツ! ()()()()()()()()()だと思っていいんじゃないかなぁ……‼︎」


 けれども、そこは流石の小隊長ライラック。序列持ちも斯くやの動きを見せ付けられ驚きに揺れる隊員を他所に、声を揺らしながらも情報共有を遂行優先。


 なれば、伝わるべきことは余さず伝わり、


「ステータスバー未表示のエネミー…………『色持ちカラード』の共通項……!」


「少なくとも、そこらの雑多なダンジョンボスとは別枠だと思われ!」


「成程、了解しました────」


 改めて敵を見定めたカナタは、二刀二足を構えるまま。


 それ以上のお喋りは許さぬとばかり押し寄せる木根の津波を睨み付け、



「だそうですよ、テトラ君・・・・ッ‼︎」



 自らの影へと、呼び掛けた。その瞬間、



 目前へ迫る圧倒的な物量を『温い』と嘲笑うが如く、カナタの足元より迸った更なる〝圧倒的〟な闇色の濁流が無数の矛を喰い散らし荒れ狂った。


 そして、



「────そっちの状況どうなのさ。継戦、キツイ感じなのかな」



「「「「うぉビックリしたぁ!!?」」」」



 最早ほけーっと状況の見守り体制に入ってしまっていたライラック班の背後、音もなく気配もなく立っていた小柄な少年がもう一人。


 影を従え闇を侍らせ、黒に染まる【不死】は緊張感の欠片もない声音で問う。


れるの? れないの?」


「「「「戦れますッ!!!!!」」」」


「そ。じゃ、頑張って────()()()()()()()()()()()()、好きに動きなよ」


 問うて、頷いて、気のない声を呟いて……ただそれだけで、味方へ無限の戦意と士気を与える『序列持ち』の威光の下。


「ッッッ……いよっし‼︎ カナタ君! 壁役タンクは俺たちが受け持つよッ!」


「ご機嫌にダメージディーラーやってくれや‼︎」


「ぁ、りょ、了解です!」


「ねぇ俺いつまで詠唱保持しとけばいいです!? もう撃っていいかなぁッ!?」


「肩の荷まるっと消えてないなった……!!!」



「……なんだ、思ったより元気じゃん」


 瞬く間に威勢を百パーセント取り戻した……どころか、全快から更に上積みして活気付く野郎どもを他所に涼しい顔で『弓』を喚ぶテトラの脇。


「み、皆がんばぇー……!」


 勝利の女神といった雰囲気ではないが、紅一点【彩色絢美】の声援も添えて。



『─────────……』



 いまだ表情も貌もなく静を貫く、怪物狩りが幕を開ける。






――――――――――――――――――


◇Status◇

Name:Kanata

Lv:100

STR(筋力):100(+125)

AGI(敏捷):500

DEX(器用):100

VIT(頑強):50(+50)

MID(精神):300(+100)

LUC(幸運):100


◇Skill◇

疾剣ノ奏主ヴィンド・アルター

《クロウリィ・リヴィンド》

《バルト・ロンデ》

首断ライフレス

足断マーシレス

《グラビレイト・エラー》


・火魔法適性

《ブレイズ》

《スロウテック・リファイア》

火属性付与エンチャント


・Active

無見ノ瞳憬ヘイズ・オキュラス

瞳瞠巫リアクト

瞬間転速イグニッション

《ブレス・モーメント》

超跳躍進ウルトリープ


・Passive

憧憬弌矢ファラウェイ

《体現想護》

《韋駄天》

《リファーベイト・ランニング》

《飛燕走破》

《アンリステア・フィート》

《フェイタレスジャンパー》

《真眼》

《手品師》

《奇術の心得》

《魔を統べる者》


《水精霊の祝福》

《四辺の加護》

《疾走者》

《岩窟穿ち》

――――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
カナタ君も《奇術の心得》取れたのかぁ。マジで別方向第二【曲芸師】になり得るぞ。ってか実際になろうとしてるな。
もしかしてカナタくんのスキル・ステータス一覧初出か?? AGI500って、、もろもろの補正抜いたらハル超えてるじゃん(なおその補正)もはやそのDEX100は仕事してんのか? スキルに水属性らしき新武器…
AGI500・・・とんでもなく偏ったステータスになったものですね DEXとセットのイメージだった?初期のAGIは何処に・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ