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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第四節
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待チ侘びたモノたちよ、轟き駆けて斯く統べヨ 其ノ参

 万が一にも倒れてはならない、そんな縛りの下。


 多くの場合に小難しいギミックがない代わり、千差万別個性豊かなエネミーを提供してくれるアルカディアのダンジョンを攻略する際の注意点は幾つかある。


 まず第一、最大限に警戒しなければならないのは『反射型』『報復型』『道連れ型』など纏めると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のド畜生。


 これが最も致命的で、かつ最も出会う確率の少ないであろう稀少型。俺もアルカディアを始めてから七ヶ月程度が経つが、この身で喰らった経験は一度のみ。


 それもエネミーからではなく、プレイヤーが所持していた『死亡をトリガーとした強制ダメージ反射』という超稀少スキルによるものだ。


 アルカディアは割かし初見殺しが多いデザインをされているものの、どう足掻いても絶対に初見では対処できない類の理不尽は極めて少ない・・・・・・


 ないこたないのがアレではあるが……少なくとも山ほど蔓延る雑魚に対して、その手の理不尽を警戒する必要が薄いのは有情っちゃ有情。


 なおボス。まあ、それに関しては都度警戒して当たればヨシだろう。



 次に、()()()()()()()。このゲーム、そりゃもう凄まじいレベルでバフやデバフの種類が多い。冗談でもなんでもなく三桁どころか四桁は下らないとかなんとか。


 当然のこと、普通なら一々そんなものを覚えておくのは不可能である。


 そして仮に全てを記憶できるアレな能力が在ったとしても、次から次へ湧いて出てくる未知に不意を突かれることは避けられない。これに関しては流石に完璧な対処法などなく、その場その場で最善を尽くして立ち回る他にない。



 とまあ、他にもアレコレ気を付けるべきは無数にあるが────とにかく。


 なにもアルカディアに限った話ではない。知る由もない脅威への対策と対応という点において、遍く状況で通用する賢い立ち回りはコレ・・に尽きる。



 近付かない。触らない。



 そして可能であれば────なにもさせない・・・・・・・



「《十撫弦ノ御指ミストルアーデ》」


 《天歩ロケット》点火と同時に両手へ灯すは、得物を撃ち出す紫紺の光。


 照準は既に済んでいる。然らば豪速で弾かれた小兎刀バレットが向かう先は、進路を塞いでいた邪魔者二匹の脳天に他ならない。


 勿論のこと、威力ブーストエンチャントは施工済み。斯くして超加速により視界が失われるまでのコンマ一秒以下の刹那、黒の斑模様が走る真っ赤な甲殻を纏った百足二匹の頭が爆散するのを確認すれば……オーケー、おおよその難易度は把握した。


 そしたら全員、疾く爆ぜていただこうか?


 エネミー名なんざ優雅のんびり確認している暇はない。『緑繋』に至るためのダンジョン掃除・・・・・・・に際して、俺に求められているのは攻略ではなく、



「────ぃよっ!」



 ただ一つ、蹂躙だ。


 駆け抜け百発・・・・・・。《天歩ロケット》の進路上へ並べて召喚した小兎刀バレットの群れを一つ残らず撫で放ち、一足で飛び越え置き去りにした巨大百足どもへ刃の雨をプレゼント。


 でもって、珍しいギミック型のダンジョンである可能性を考慮すれば『殲滅』が道を開くトリガーになっている場合も……まあ、あり得なくはないゆえに。


「《爆裂兎バレット》」


 紅刃抜刀、そして破砕。背後に辛うじて残っていた幾つかの気配が爆砕音と共に消し飛ぶのを感じた瞬間には、俺は既に二足を踏み切っている。


「ははーんウジャウジャ系か────わかりやすくて大変結構ッ!」


 然して、言いつつ五足・・


 構造としては一本道。しかし無数に開いた細い横穴縦穴から絶え間なく湧き出す百足が通路を満たし続けるのを見るに、わかりやすい物量型ということだろう。


 つまるところ、一定以上の火力がないと死ぬほど苦労するタイプ。


 つまるところ、今の俺には諸々の危機を考慮する必要がないタイプ。


「来い相棒ステラ


 瞬き一つ分の時間で蹴散らした巨大百足は五十余り。


 そのどれもが被弾や死に際して起こしたアクション……というか、起きた反応は毒々しい体液が盛大に飛散するくらいのもの。


 即ち、可能性が在ったとしても『反射型』ではなく『反撃型』。全くもって問題ナシだ。なぜかと言えば、そんなものに────



「物足りないとか文句は言うな、よッ‼︎」



 今更、追い付かれるような鍛え方はしていない。


 記憶完了、進路構築、挙動設定────《天歩ロケット》連打。右手に携えた星剣を振るい、擦れ違う悉くを細断して駆ける。



 五秒。



 十秒。



 十五秒。



 二十秒────そこが果て・・だった。



 細道を脱し、拓けた視界に広がったのは大空洞。玉座におわすのは無数の百足を足元に従えた、竜と見紛うばかりに長大な百足……では、ないな?


「なんで芋虫???」


 配下、あるいは隷属下的なストーリーでもあるのだろうか。


 継ぎ接ぎにされた無数の百足の甲殻、赤黒い『鎧』を纏う〝王〟或いは〝女王〟に思わず疑問交じりのツッコミを我慢できなかったが重ねてそんな場合ではない。


 まあ、アレだ。


 願わくば、またどこかで出会い考察の機会があればいいなってな具合で──


「〝鋒撃ショット〟」


 挨拶一発。容赦なく撃ち放った【真白の星剣アルヴ・ステラ】で以って脳天一撃。瞬間、甲高く形容し難い叫鳴を上げて臨戦態勢に入った芋虫を他所に・・・



「────《七星ななほし》」



 瞬きの間に連撃を放ち終え、宙高くへ遊んだ身体を制動&翠刃納刀。


 そして握るは、左拳。


 【仮説:王道を謡う楔鎧(アン=ル・ガルタ)】着装。更に《フリズン・レボルヴァー》六重装填フルローディング


 《天歩ロケット》、点火。



「《震────」



 外転出力『カイ』、臨界収斂。



「────伝》ッ‼︎」



 轟音、震撃。


 一瞬の間に計沢山・・・の怒涛威力を弱点と思しき頭部へ集中させられ……堪らずHPバーを吹き飛ばした芋虫は、哀れ青い燐光となって爆散した。






二十七秒。まあまあですね。


Q. ボス相手に様子見警戒なしでガッツリ近接戦してない?

A. ボス一体だけなら兎簪の致命回避で十中八九ゴリ押せるでしょう?

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― 新着の感想 ―
わぁお。とんでもないなぁ・・・いつか持ってるもの全部惜しまず使ったうえでダンジョンクリアRTAを序列持ち達にしてほしい
逸般序列持ちによるダンジョン攻略RTAはっじまーr…え?終わった? まあ特筆するギミックなしで、速度と火力の揃った超音速戦術爆撃機が攻略すればそうなるか
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 RTA、各所で繰り広げられているんだろうなぁ
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