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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第二節
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銀幕に笑む身儘の白 其ノ弐

『――――おぁあっ!? 水ッ!!! 水の槍がいっぱ――うわっと流石の【銀幕】さん舞台の指揮者は余裕の無法連打――――ぁぇえっ‼︎ いきなり語手武装ぶっぱ――――ひょわぁい大熱線放射からの即一掃ぅっ!!?』


『……なに言ってんの?』


『大丈夫?』


『 実 況 し て ん で す よ !!!!! お行儀よく物静かな誰かさんたちに代わって!!!!!!! わけわかんないなりに必死にぃ!!!!!!!!!!』


『えぇ……――わかった、わかったから机バンバンしないでよ』


『ごめん、なさい……?』


『謝罪は結構なんで解説ぅ! 解説してください非戦闘員の私に代わってぇ‼︎』


『…………』


『…………』


『じゃ、よろしく』


『ん』


『ハイそれではアイリス様ぁッ! どうぞサクッと状況説明をお願いします、主に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()‼︎』


『うるさ……』


『テト君こそうるさーい! 頑張ってるノノねぇの邪魔しなーい!!!』


『はいはい。黙ってるよ』


『アイリス様ッ!』


『わ、わかった……――――それじゃあ、どうぞ舞台を楽しみながら』


『よろしくお願いしますッ‼︎』


『ん。まず根本的なことだけれど、魔法技術は究極的に思考操作が全て。これがサービス開始初期に戦士と魔法士の人口比率が前者へ極端に傾いた理由』


『思考操作という現実にはないシステムに適応できていなかった時代、大多数のプレイヤーは碌に魔法を扱えなかった、というアレですね!』


『少数の例外は、いたけれどね。一年、二年と時間が経つにつれて魔法士に転向する者が爆発的に増加したのは、プレイヤーが仮想世界へ適応し始めたから』


『ふむふむ』


『そしてそこから、どうしてハルが涼しい顔で【銀幕】の〝頽廃歌〟を乗りこなせているかの話になる。――――延いては、彼本人の適性・・の話に』


『ほう、適性!』


『簡単なことよ。魔法技術は思考操作が全て、よりわかり易く言えば想像力・・・が全て。創作物の魔法ではよくある〝イメージの力〟理論そのもの』


()()()()()()()()()ってやつですね!』


『そう。つまり……後は、わかるでしょう?』


『ごめんなさい、お口チャックするので最後までお願いします……‼︎』


『ん。つまりノノミの言った通り、アルカディアの魔法は想像力の多寡が〝才能〟になる。()()()()()()()()()()()()()()()、それが適性の是非になる』


『……で、それに加えて先輩の馬鹿げた状況判断力と思考速度が合わさればね』


『えぇ。似たようなこと・・・・・・・は、台頭初期から当然のような顔でやっているでしょう』


『《クイックチェンジ》スキル……!』


『そう。勿論、細かいことを言い始めれば詠唱を始めとした他の技術的要素も沢山あるけれど……覚え・・写し・・再現・・する力に特化した〝記憶〟の才能ギフトを持つハルは、本人の性格や好みは別として考えると…………』


『考えると……?』



『本来の適性と才能で言えば間違いなく――――()()()()()()()()()()



『おぉー……あの【曲芸師】が、実は魔法士タイプ…………‼︎』


『先輩自身は、多分これっぽっちも自覚してないけどね。まあそれも……』


『えぇ、仕方がない。彼に勝るとも劣らない思考操作技術に空間把握能力、桁外れの並行限界値による埒外の群体操作適性……そんな相手が、すぐ身近にいれば』


『あぁー……』


『これに関しては、自分自身に対する誤った過小評価も責められないでしょうね。……〝何故〟の解説は以上よ。それでは、続きを集中して楽しんで』



 ◇◆◇◆◇



 思えば、個人的には初となる本格的な魔法合戦。


 むしろ本格的を通り越して、いきなり埒外の大魔法合戦。そんなものに身を投じた今、当然のように胸中を満たしている心の叫びはただ一つ。



 ――――いや、こっっっっっっっっっっっっっっっっわ!!!!!!!!



 致命的な暴威が頬を掠める、なんてのは日常茶飯事だからヨシとして。問題なのは、そんな軽率に仮想的死を齎すモノから()()()()()()()()()()()()()という点。


 『ステータス』も『スキル』も封じられ、この身に在るのは現実比ちょい優秀止まりの身体スペックのみ。そんなほぼほぼリアル一般人仕様では、豪速で迫りくる脅威からの動的回避を試みるなど夢のまた夢である。


 つまるところ『あ、死ぬわコレ』と理解したら諦めて大人しく受け入れる他ないという極限状態。回避至上主義の俺としては、ソレがどうしても――――



「――――っぶねぇッ!?」



「――――いや『あぶねぇ』の一言で凌がれるの本当に意味不明なんだよッ!?」



 恐ろしくて怖ろしくて堪らない……なんて言ってる暇さえないのが真実もう堪らない。絶えず水針もとい水槍ハーケン水輪メイストの弾幕にて【銀幕】殿の土属性――――否、()()()()()たる地属性魔法の秒間ごと絨毯爆撃を迎え撃ちながら。


 無法の指揮者に支配された舞台を唯一、勝手気ままに駆け回るトニック氏のアタックに常人スペックで対処しなければならぬという激重ハードワーク強制劇。


 真実、息をついている余裕もない。開幕の焼き直しが如く喚び出した【巨人の手斧】にて迫る手を阻むと同時、瞬間最顕現リロードした〝輪〟で空を薙ぎ強引に後退させたヒーロースーツ殿から文句が飛んでくるがリアクションの暇もありゃしねぇ。


 更には、


「っやば――――」


 回避した先、一瞬の予兆を経て空間を爆炎が埋め尽くせど……。


「――かったぁ……‼︎」


 無傷ノーダメ継続。座標爆破の余波から『ヤバい』一つで五体満足のまま顔を出す辺り、当たり前ではあるが【銀幕】のみならず彼も彼で特級の厄介案件だ。



 北陣営序列六位【散溢】トニック。統べる〝力〟は『消散』と『充溢』。



 簡単に言えば彼の力は……あぁ、ほら。今も差し向けた致命の瀑布へ向けて、当たり前のように素手を差し出せば――――ハイ、()()()()()()()()()


 加えて、ヒーローめいた洒落乙スーツの各部へ〝光〟が満ちると同時、



「せぇ……のッ‼︎」



 彼が右拳を振るった瞬間、放たれた青い波動が後続の水槍を吹き飛ばし……返しの返しで迎え撃った赤炎と激突、ステータス皆無では少々辛い衝撃を撒き散らす。


 あの『倍返し』も厄介極まるが、それよりなにより件のスーツ。第五階梯魂依器【唯在る我の纏仮面アローネス・クオリティ】が誇る基礎能力たる『状態不動パーフェクト・パーソナル』が大問題。


 かの【銀幕】が敷いた領域の影響を跳ねのけている彼が、この場において唯一『縛り』なく自由気ままに動くことのできる奇札と化している。


 ご本人の基礎ステータスが目立った敏捷特化ではないことがせめてもの救い。高速機動時には決まって風属性補助魔法の予兆が見て取れるため、どうにかこうにか出力暴走魔法&〝想起リコール〟ガード諸々にて現状対処は叶っているが――――


 正直、しんどい。でもって、そう感じているのは俺だけではなく背中に向けられる視線と気配……即ち、抗し切れない分の地属性弾幕の迎撃サポート及びトニック氏の撃退追撃にてフォローをくれている雛さんも同様だろう。


 絶対的に手札の総量が違い過ぎるがゆえ、三度目の正直たる今回のダンス・・・は基本的に彼女が俺に合わせてくれる手筈。


 つまるところ、僭越ながらリード役は俺。ついでに初っ端から後手後手ピンチは目前ってな具合であるからして、のんびり手を思索している場合ではない。


 生意気に啖呵を切っといてアッサリ潰されたら無様もいいところ。然らば……。



「――――っし……雛さん! ちょっと慣れないこと・・・・・・試します!」


「っ……どんなこと、かしら!」



面白いことっす・・・・・・・ッ‼︎︎」



「なら是非もないわね! サポートは任せなさいっ‼︎︎」



 視界を埋め尽くさんばかりに絶えず去来する岩塊、石柱、無数の礫。更には間隙を縫って首元に迫る超人の手。二人して双方を必死に迎撃しながら言葉を交わせば、返り来るは思わず笑みを零さざるを得ない頼もし過ぎる『GO』が一つ。


 ならば真実、是非もない。ぶっつけ本番、いまだ練習曲エチュードさえ試していない有様だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 しかしこちとら本家に及ばぬ片手奏、超絶集中して死ぬ気で気張りゃなんとかなるだろ。先輩・・よ、後輩のサプライズに精々スクリーンの向こう側で驚くがいい!



「んじゃいくぜ……――〝セン〟ッ‼︎︎」



 【九重ノ影纏手ナインテイル】起動。右の腕輪より舞い出でた影の〝糸〟にて――――さぁ、これこそは正真正銘ピッカピカ新入荷の隠し種。


 いざ〝糸繰り〟に、臨むとしようか。






また「かわいくない」って誰かさんに睨まれるやつ。

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― 新着の感想 ―
これもまた、「ソラさんが序列入りしないのはおかしい」教の布教の一環かな?
お前、先輩のアイデンティティを…
雛さんもちゃんとイスティアンだったよ。 今まではお姉さん感あったけど、はしゃぐとお姉ちゃんになるのね。 …いいね(何)
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