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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第二節

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熱を繋いで

『――――決着ぅッ! 一般人に優しくない目にも止まらぬ一瞬の交錯を制し、本日初の一勝を飾ったのは【剛断&不死】のタッグでございまーす!!!』


 歓声に負けぬよう張り上げつつも、みっともない叫びにはならぬプロの声音が圧倒の幕引きを彩り響く。斯くして、影と闇の蹂躙劇を見届けた観客は、


「――――いやテトラ君こっわ。やっば」


「な、生で見ると、全部こう、迫力が別世界だね……!」


「『エレボス』……聞いたことない技名。技じゃなくて能力? 語手武装が由来か、魂依器が由来か、もしくは両方の併せ技……――――」


アイツ・・・、アレと同格っつか世間認識的にそれ以上なのか……すげぇなぁ……」


 一般来場客に紛れて観客席に並ぶ招待客四人組は、人生初となる生ファンタジー・・・・・・・の非現実感に当てられるまま。思い思いの感想や驚嘆を口々に零しつつ、それぞれの顔に浮かべているのは皆一様に冷めることを知らぬ興奮の色。


 若干一名に関しては熱が行き過ぎて倒れかけたりしたものの、前日の予防接種が功を奏してかギリギリで踏み止まり救護室の厄介になる事態は避けられた。


 然らば、後は周囲の同類こと仮想世界ファンたちと共に熱狂へ身を任せるのみ。


 そして、



『ご両名、テト君――――こほん。闇の君主様が魅せた最後のアレについて解説とかいただけますっ? 私ですら・・・・ちょーっとご存じないのですけれども!』


『……知らない、あんなの初めて見た。うい?』


『いえ、私も存じません』


『そう。後で誰かに・・・聞いてみようかしら』


『そうですね。後ほど訊ねてみるとしましょうか』


『ゆっるいんだよなぁ是非もう一生やっててくださいますかねぇ!!!』



「…………この錚々たる司会面子とも、友達アレ師匠アレ恋愛関係アレなんだよなぁ……」


「実際こう肌で感じると、意味わからんくらい現実感なくて笑えてこない?」


「剣聖様が……お姫様と……楽しそうに、お喋りしてるぅ…………!!!!!」


「……改めて、一生分の幸運を使い果たして此処に居る気がする。楓、息して」


「してるよ……!? いつも息止めてる変な人みたいに言わないでってば!」


 数多の者には叶わぬ、真実特別な視点で幻想の舞台を観覧できる埒外の幸運を。各々ただ胸に秘めつつ、噛み締めるばかりであった。



 ◇◆◇◆◇



「「「「――――えぇ……」」」」


 記念すべき初戦が電撃的な終幕を遂げてからの第一声。待合室にて上がった四つのソレは、奇しくもなんともなく揃って困惑に満ち満ちていた。


「……なんでアンタが困惑してんのよ。同じクランで活動してんじゃないの?」


「してるけども、あんなの知らん。なんすかアレ雛さん」


「と言われても、私も初めて見たのよ……なにをしたのかしら」


「元々テトラ君って能力詳細不明でしたけど……にしても、実はあんなに強かったんですねぇ。まとめて三キルとか相当ではー?」


 何故かと言えば、誰も彼も【不死】が一体なにをしたのかサッパリわからなかったから。影がフィールドを埋め尽くして、テトラが唐突に自傷したかと思えば、他三人が同時に馬鹿みたいな量のデバフを発症して即死した。


 起きた現象は把握できても、そのタネに関して咄嗟に理解が及ばない。


 自然、思うことは一つ。


「え、こわ。イヤなんですけど」


「下手すりゃ問答無用でわからん殺しか……」


「隠していたのか、変わったのか・・・・・・……うふふ、怖いわね」


「いーやー……特殊系とか概念系とか相手するの苦手なんですよねぇ私……」


 純粋に『相手したくねぇ』と、ただそれだけであった。



 ◇◆◇◆◇



 ――――然して、次なる役者たち。


 第一試合の二組が歓声に称えられるまま舞台を去って数分後。興奮が冷めることなど有り得ない極短いインターバルを置いて、降り立った者たちは一様に。


「さぁーて……――負けてらんねえぜマル坊。俺らもいっちょ魅せっとするか」


 己が陣営の先駆けとして見事が過ぎる戦果を打ち上げた、普段は熱など知らぬ涼しい顔をしている少年のやる気・・・を見届けた【総大将】も。


「っすね。及ばずながら、アシストは精一杯やらせていただきます」


 当然の熱を湛える、大物も大物な相方に敬意と同調を以って応えるべく。意気を奮わせて並び立つ【変幻自在】も。


「……っし、作戦なんかいらへんなゲンさん」


 盛り上がりに浮かされたフリ・・をして。ただひたすらに真っ直ぐ対戦相手を見据えることで、リアルの観客たちを意識の外に追い出している【大虎】も。


「あぁ――――やることは、戦るだけだ」


 静かに、淡々と、いつも通り無雑の戦意を以って立つ【双拳】も。


 舞台上に連れてきたのは、最高・・の前座から最上・・の初戦を経て引き継がれてきた『本気のお遊び』に対する熱狂のみ。


 さすれば、第一回戦に引き続き男四人。



「よし。んじゃまあ……――――戦ろうぜ、野郎ども」



「戦りましょう」



「戦るとしよか」



「あぁ」



 殴り合いに持ち込むは、それぞれ笑み一つにて不足なしであった。






それはそれとしてノノテトはありま

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― 新着の感想 ―
ノノテトときどきテトノノだと大好物です。 どうか、どうか間話でっっっ…!!!!!!!!(土下座 更新ありがとうございます。
ノノテトではなくテトノノだと嬉しい。異論は認める。
やっぱ救護室は満員御礼になってたか…… >私ですらちょーっとご存じないのですけれども! なにそれこわい >さすれば、第一回戦に引き続き男四人。 そして次の試合は女四人(一人TS)、と? これは“わ…
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