表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第二節
694/988

冠は此処に

『――――っはぁーい! んではではではではそういうことで、全然まっっっっったく観客の皆さん頭がついていけてないものと思われますがぁっ!!!』


『元気ね』


『斯くして、やりたい放題やり散らかした〝頂点〟お二人が舞台に残す熱は冷めやらずぅっ! 極厚ステーキばりの前菜を私たちが飲み込めたかどうかなんて知ったこっちゃないと、容赦なく続いてくぜトライアングル・デュオ!!!』


『とても賑やかですね』


『したらば毎度恒例のゲストMC招待枠も、初っ端から過去最高の豪華版! なんかもう本人たちは感動的なくらい悠々暢気で澄まし顔ですがぁ! お二方を私が先導するのはぶっちゃけ荷が重すぎるので気配を消して壁になりたいでーす!!!』


『頑張って』


『ノノミさんとお会いするのは、いつ以来のことでしょう。お元気でしたか?』


『見ての通り、だと思うけれど』


『それは……ふふ、そのようですね。喜ばしいことです』


『むしろこれファンとして無限に会話を聞いてたいんですけどねぇ!!! 私もアレなのでお仕事なので! ギャラ分は働かないとなので不本意ながら混入させていただきます不純物とか言わないでね泣いちゃうからね――――!!!』



 ◇◆◇◆◇



 四方の巨大ディスプレイ――――ではなく。舞台上、観客席を問わず無数に投影され、宙を漂う半透明の実体なき小さなスクリーン。


 その配信画面・・・・に映っているのは、一人×二人の実況者もとい賑やかし役。


 前者の一は他ならぬ元アイドルMC殿。そして後者の二は事前の観客アンケートを参考に、序列持ち選手陣から試合ごとに指名されるゲスト枠。


 トラデュオ毎度恒例お楽しみ企画にして、口下手勢からは深く恐れられている公開処刑企画。斯くして、第三回大会のトップバッターは有無を言わせず当然のように【剣ノ女王】及び【剣聖】の二人が抜擢されたのだが……――――



「――――……はぁ、もう、なんか、滅茶苦茶じゃん」


「ま、仕方ねえ。前々回の四柱然り、今回は例外として馬鹿騒ぎする他にないな」


「わかるけどさ……」


 当然も当然のこと。先の心が震えるような頂上剣舞を演じた者たちとは思えぬ緩いMCっぷりに、メイン司会者と心同じく『無限にやれ』とばかり。


 呆れるほど沸きに沸いている観客席は、果たして今、入場してきた自分たちを見ているのやらと……まあ、そんな風に考えてしまうのも仕方ない。


 そんな風に考えてしまう自分達とて、観客たちと似たような心境なのだから。


 ぶっ飛び呆けた埒外の前座・・に続く、真なる開幕第一回戦。オープニングより改めて舞台に降り立った少年――【不死】ことテトラは、相方と苦笑いを交わしつつ、


「これ、流石に文句を言っても許されるやつだよね? ただでさえ人前でわーわー戦うのなんて勘弁してほしいのに、空気も微妙とかやってらんないよ」


「そりゃもう心から同意だ。いくら姫さんと剣聖様とはいえ、後でしっかり『居た堪れない思いをさせてごめんなさい』くらいは謝ってもらわないとな」


「ほんとそれ。じゃ、僕の分もキツく言っといてねオーリン先輩」


「おう、任せと……いや待て、なんでサラッと俺一人に押し付けた?」


 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 容赦なき魅せる力を以って、注目と熱狂を掻っ攫って行った前座の二人に対する苦情を冗談紛いに投げ交わしながら。


 対面する試合相手――――共に舞台へ転移してきた【詩人&雲隠】両名と視線をぶつけ、既に了解しあった心をヤケクソ気味に呟いた。



「「「「――――見てろよ・・・・」」」」



 前座は前座、舞台に残すは次へ続く熱だけで十二分。いつまでも話題を抱えたまま、観客の心を連れて行かれたままでは堪らない。


 そこは頂点者として、かの【剣聖】による気遣いだろう。


 あらゆる度を過ぎた力に封を掛け、純粋無比な〝技〟の応酬にて彼女たちは開幕を彩った。つまり、いくらでも『余地』はある。



 ド派手に舞台を染め上げて、更なる盛り上がりを勝ち取る『余地』がある。



 【剛断】、【不死】、【詩人】、【雲隠】――――全員、綺麗に、元の予定やテンションなど、全て悉くを吹っ飛ばして此処に立ったのだ。


 男四人。いくら心の底から認めている『最強』と『至高』が相手とはいえ……麗しい女性二人に、殴り合いの場において大人しく負けてなどいられねぇと。


 熱ゆえに、布告する。


 目を向けども、いまだ心奪われている観衆に。


 期待はすれども、上限・・を決めつけた観衆に。


 心のどこかに、早くも『来て良かった』などと満足を抱いた観衆に。



 ――――冗談ではない、こっからだぞ、と。



 虚空に灯るインターフェースが、試合の開始を告げると共に。



「――――《断別せし剛躯ゼルエクス・デクストラ》」


 【剛断】が、


「――――《影に座す無垢の王エピタフェイト・ダーク》」


 【不死】が、


「――――《吟い遊ぶ伽藍洞リ・ジェスター》」


 【詩人】が、


「――――《偏在空虚オルカムラス》」


 【雲隠】が、



 それぞれの王冠を掲げ、さあ見さらせと〝名〟を示す。


 自分たちもまた頂点に在りと、ただ事実を体現するままに。






第一回戦 Aブロック:【剛断&不死】vs【詩人&雲隠】


あれこれ諸々を鑑みて一番の被害者は混入物ノノミちゃん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>かの【剣聖】による気遣いだろう。 聞いたら「そっちの方が楽しそうだから」とか言いそうな気も、ういういしい。
テトラ君とか自分は一般的な感性してるとか言ってたけどさ、世界最高峰の戦い見て、結論が「見てろよ」になる時点で、やっぱり序列持ちは逸般人だなぁって
テトラ君がノリノリになってるのすこ
2025/01/26 23:31 しおりすぐ無くす読書好き
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ