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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第一節
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観客の目

『――――《点火イグニッション》ッ!!!』



「うわーひゃー……! ノゾミン容赦ねぇー……!」


「いろんな意味でスゲェなアイツ……」


 ホームシアターの大画面から叩き付けられる映像と共に、スピーカーから出力される迫真の――というより、まさしく真なる気迫と轟音が鼓膜を揺らす。


 いつだか話には聞いていた隠し技から始まり、魔法迎撃、数多の障害をすり抜けての超速機動、肉薄した勢いそのまま拳一閃からの、全く未知なる凄技・・披露。


 更には召喚したオバケ戦鎚にて力尽くで【騎士】を叩き伏せたかと思えば、一切の迷いなくトリガーを引くという容赦なき殺意満点コンボ。


 いつものメンバーのリアクション役こと幼馴染ペアが感嘆の声を上げたのも、四柱恒例『リアルタイム編集配信』などという神の所業を行う誰かさんが巻き戻し&リピートに踏み切ったのも頷ける見所の暴力。


 申し訳程度のスロー倍率では「なにがなにやら」と首を傾げるしかない一般人視点だと、至極ありがたい気遣いのリプレイ。そもそも現実と仮想世界では時間の進む速度が異なるため、こうした編集は割り切って度々差し込まれるのが常だ。


 疑似・・LIVE配信とは、つまりそういうことである。


 そうこうして振り返り形式でピックアップされていく各シーンを眺めながら、友人の姿を追いかける四人が浮かべるのは一様に同じ表情。


 それ即ち――――


「戦いってなると女子相手でも容赦ナシなんだよねぇ……良き」


「あの男女平等殺人パンチの精神は真似できねえわ。流石【剣聖】の弟子」


「人並み以上にゲームと割り切ってるのぞみ君の強みでもある……――楓、息して」


「してるもん……!」


 共通の〝推し〟にして仲間でも友人でもある青年の活躍を、我がことのように誇らしく思い手放しで喜ぶ綻びの顔。本人が場を同じくするときには抑えているフォロワー魂が解放されると、いつもの如くこうなる・・・・のは内緒の話だ。


「三人相手はヤバげと思ったけど、流石の【曲芸師】様だったね。まーたファンが増えちゃうぞー、増えちゃいますよーっと!」


「ガワもアレだしなぁ……」


 かの【剣ノ女王】アイリスに匹敵する美貌と持て囃される『ハルちゃん』こと彼の転身体は、台頭後すぐいろんな意味で難しい話題・・・・・を抱えてしまった【曲芸師】のイメージ面に極めて良好な影響を与えている。


 端的に言って、例の【影滲の闘技場】攻略動画がアップロードされてから『曲芸師ハル』に肯定的なフォロワーは爆発的に増加した。


 それは勿論、戦いの中で示したアイリスとの信頼関係や対等かつ誠実な向き合い方。そして視聴した者の悉くを魅了する鮮烈で気持ちの良い飛び抜けた〝強さ〟によるところもあるが……やはり、()()()()()となる『見た目』は大きい。


 リアルそのままの……というのは世間の知らぬところだが、嫌味なくサッパリと整った親しみやすいビジュアルは元々一定数の人気を博してはいた。


 けれどもあと一押し、初見でガツンと心を奪うようなインパクトがなかったのは事実――――その足りない部分を、あの顔・・・が見事に埋めてしまった訳だ。


 否、埋めたどころの話ではない。『トランスシステム・アルファ』による完全ランダム生成の顔……即ち、造り物ではあるが造り物ではない真なる美貌。


 もう一つの現実として認識されているアルカディアにおいて、ソレは最早ゲームのアバターという枠を超えた()()()()()()()()()()()()()()()()()である。



 早い話、一目惚れ勢が爆増したということだ。



 そして一旦でもアレに好意を抱いてしまえば……かの【剣ノ女王】に笑顔を齎し、多くの序列持ちと瞬く間に友好関係を築いた人柄が更なる評価を積み上げる。


 加えて世界が信を置く〝姫〟が脇目も振らずに首ったけとなれば、複数の女性に好意を向けられるに足る器というのも『まあそうか』と納得感が生まれてしまい……。


 そうなれば、天性の人たらしたる【曲芸師クラウン】の大沼に沈む者は数え切れず。


 そしてそれは、元より彼を好いていた人間の心も同じこと。本人不在をいいことに活躍を褒め倒す友人たちは、今や声を揃えて言う。


 ――――男も女も、こんなもん惚れて然るべきと。


「てかノゾミン、結局あんまり魔法とか銃とか使ってなくて笑うんですけど」


「やっぱアイツ、賢いフリして根本的には脳筋だろ」


「『とりあえず突撃して暴れる』がデフォルト思考になってそう」


「「だがそれがいい」」


「凄くわかる。曲芸師の戦闘は、どれもこれも見ていて気持ちがいい」


「……、……! …………!!!」


 目を輝かせながら黙ってリピート映像に見入っている四條の令嬢を置いて、翔子&俊樹の幼馴染ペアに美稀を交えた三人が盛んに言葉を交わすいつも通り・・・・・


 憧れと友情の入り混じる、世界に増して熱い視線。それを一身に受けるヒーローは、スクリーンを隔てた別世界にて――――また、いつも通り。


 眩い笑顔と意気を携え、誰よりも速く、軽快に舞台を踊り狂う。






君らメッチャ持ち上げるじゃんって感じで描きながら「おぅ……」ってなったけど、冷静に考えて実際アホみたいな功績しか上げてない気がしたのでヨシとした。


ちなみに本編には関係してきませんが、大学女子三人の中で主人公を最も異性おとこのことして意識しているのは翔子ちゃんです。本編には全く関係してきませんが。


本編には一切もう全く全然、関係してきませんが。

かわいい。

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― 新着の感想 ―
かわいいは正義。 かわいいは暴力。 なのでハルちゃんは何れ程暴力を振るったとしても法の範囲で許される。 正義にも限界はある。
>タイトル >戦いってなると女子相手でも容赦ナシなんだよねぇ 観客目線であればfoooo!!だけど、両親の目線だとどうなるのか気になる今日この頃。 仮想とは言えほぼリアルなグラフィックで息子(with…
かわいい
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