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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第一節
637/988

Ⅲ ≦ Ⅰ?

「……はい、こちら――――」


『――――ヘレナちゃんごめんッ‼ 舐めてたとかそういうのは一ミリもないんだけど()()()()()()()が予想の遥か上!!! 死ぬ気で頑張るし負ける気はないけどウチら三人とりあえず動けないんで戦力から除外しといてホントごめんッ!!!』


「……、…………」


 コールに応じて《念話》を繋ぐや否や、明らかな必死さを炸裂させる声音が矢継ぎ早に言葉を紡いで奔り抜ける。システムが絞ってくれたとはいえ、余りある勢いで頭を揺らされた【侍女】は目を閉じて数秒の沈黙。


 さて、なんと言葉を返すべきかと困り果てた末に――――


「…………相手が相手ですから、万が一・・・も仕方なしでしょう。ですが、それならそれで出来る限りの足止めを意識するように。タダで落ちるのは許しません」


『オッケーりょうかいッ!!!』


「では、健闘を」


 ありありと余裕のなさが感じられる即座の途絶。


 今まさに、迷路の深奥にて一体どんな地獄絵図が形成されているのやら……前回に負けず劣らず賑やか極まる開幕に、思わず零れそうになる笑みを呑み込んだ。


 そして、


「――……どうしたの?」


 そんな彼女の隣、律儀に『待て・・』を守っているお姫様が首を傾げる。


「ナツメから報告です。ハル様と戦闘に入ったと」


「…………」


「そんな顔をされても、出番はまだですよ」


 うず……――と、それこそ笑ってしまいそうなほど。わかりやすく無表情に色を差した主を窘めれば、返ってくるのは取り繕った澄まし顔。


「……ナツメ、大丈夫?」


「アイカとレコード含む三人がかりですが……どうでしょうね。しばらく前の彼が相手であれば遅れは取らなかったでしょうが、ここ二ヶ月の成長幅が未知数です」


 少なくとも、念話越しには余裕のある感じではなかった――そう伝えれば、


「…………その反応は、陣営の主として如何なものかと思いますよ」


 明確に無表情を脱し……微かとはいえ頬を綻ばせたアイリスを、呆れたようにヘレナが咎める。しかし彼女は「違う」と首を振って、


「ハルが相手なら、きっと三人も楽しめるから」


「はい……?」


「〝楽しい〟は、素敵なことよ」


「…………」


 迷路の入口を見やり、その奥に在る誰かを想い、ガーネットの瞳一杯に信頼を浮かべて……最早いつものこと。盛大に惚気てみせる主に、


「恋は盲目……とは少し違うのでしょうが、傍から見れば似たようなものですね」


 【侍女】は大きく溜息を吐き出して。


 戦況を記した地図を前にして、再び粛々と味方陣営の指揮を執り始めた。



 ◇◆◇◆◇



 糸が舞い、魔が飛び、鉄が閃く喧狂の舞台。駆ける白兎は縦横無尽。


 〝三対一〟――――字で表せば単純明快、この上なく端的に有利不利を表すであろう戦局に身を投じてなお、その『脚』は止まることを知らず。


「ッ……、…………――――!!!」


 静謐に受けるは騎士の矜持。声なく『盾』で『拳』を受けたアイカが冗談のような爆音と共に嘘みたいな勢いで跳ね飛ばされ、盛大な火花を散らして床を滑る。


「無理だこれ、当たる気がしないな……ッ‼」


糸も魔法どっちも掠りさえしないのは流石におかしいでしょッ!?」


 指を振るい、杖を振るい、振り撒く〝糸〟も〝水〟も白影には触れられず。徹底的に追い回すも、一歩も二歩も届かない。


 舐めていた訳ではない。


 侮っていた訳ではない。


 疑っていた訳でもない。



 ただただ、シンプルに――――



「――――――――ッぃい…………やッ!!! キッッッッッツぃえア!!!」



 あちらもあちらで必死の顔。しかし常軌を逸した極限機動を実現するまま跳ね回るアレが、こちらの予測と期待を軽率にポンと飛び越えただけ。


 成程、確かに【曲芸師】の名は伊達ではない――


 心底そう納得してしまうほどに、目前のアレは正しく【曲芸師】だ。


「いや、もうッ! 嘘でしょ意味わかんない、なんであの速度で動き回りながらウチの〝糸〟見えてんの意味わかんない‼ 意味わかんないッ!!!」


「三回も言っ――」


魔法士アンタは無駄口叩いてる暇ないでしょうがぁ!!! ――――レコ、様子見はいいから本気出しなさい! 三人まとめて畳まれたら・・・・・本気で洒落になんないわよ‼」


 感心する。驚嘆する――――そして、口にはしないが楽しんでもいる。


 しかし、それはそれとして。同じ序列持ち同士とは言え三対一で呆気なく敗北するようなことがあれば、流石にプライド諸々いろいろなことが許されない。


 新顔であるなど関係ない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ならば先達の矜持に加え、挑む立場としても手加減など以ての外だ。


 ゆえに、


「はいはい――――勿論、そのつもりだよ……!」


 中段に位置する非詠唱職キャスター。一応の指揮役を任されているナツメのオーダーに従うまでもなく、静かに歯を剥いたレコードが大杖を振り翳した。



謜 絃 解 放・・・・



「ッ、マジか……――――!」


 瞬間、放たれた鍵言を聞き取った【曲芸師】が目を見開き、



「唄え――――《紡贖の節榑人形エンドレス》」



 四又に分かれた杖の〝頭〟が更に裂け、四つの〝口〟が花開く。






三つ目の語手武装テラーさらっと登場。


なっちゃん達は結構フィルターも掛かって「超ヤベー!」ってなってるけど、

主人公も当然「超ヤベー死ぬッ!!!!!」ってなってるのは推して知るべし。

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― 新着の感想 ―
>604話後書き(超一級アルカディアン検定問題) もしかしてクリムゾンレッドルビーSpecIIだったりして。ただ情報出てたっけなぁ。
超やべーwith楽しいでしょwハル君はw むこうさも楽しんでくれちょるとうれしんがね~。
お互いが「超ヤベー」って時が1番楽しい
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