幕間
『―――さあさあ今回もやって参りました! 仮想世界アルカディア四ヶ月ごとの大祭、第十一回目! 四 柱 戦 争 のお時間ですッ‼』
『開幕まで残り三十分を切りました! 存分に盛り上げていきましょう、毎度恒例の直前番組【クアッドウォー・ビフォアー】!!』
『進行はこちらも毎度お馴染みワタクシ! 野々宮蜜柑こと、西陣営第三席 【彩色絢美】ノノミでお送りいたしまーす!!』
『さあさあ残りは二十六分弱! CMやら何やらを除けば二十分もありませんってか本当に毎度毎度ですが語ること多過ぎて時間が足りないんだよなぁ!? なんでいっつもこの密度で三十分枠なのか! どうなってんのプロデューサー!!!』
『それはさておき、まずは基本情報から! このあと開幕の四柱戦争、開幕時間は現実時間の午後八時から十二時までの計四時間で――――』
◇◆◇◆◇
「いつにも増してテンションたけぇな」
「ノノミちゃん好きー」
広々としたホームシアターに集まった大学生の四人組。大画面に映し出された情報番組を前にして口々に交わす言葉は、図らずもいつかと同じもの。
『今回ですが、もうどこに注目とかそういう問題ではなく! 永遠に話題沸騰中の【曲芸師】さんを中心とした、前回にも勝る盛り上がりが期待されており――』
「前回ぽっと出の九位君が、今や誰もが知る四位様だもんねぇ」
「台頭速度も頭おかしいけど、躍進っぷりも頭おかしいよなウチのヒーローは」
「未だに伸びしろしかないのは、本格的に少しおかしい」
しかしながら、時は進んで四ヶ月。
過去のいつかとは何もかもが大きく変わり……画面の内と外。双方の友人は、関係性も視線も言葉も大きく色を変えて今を見る。
『斯くいう私も奇跡的に縁が繋がり今ではスターのお友達! どうですか皆さん羨ましいですか生ハルちゃんに颯爽と命を救われたり怒られたり叱られたり呆れるような視線を頂戴したこともある私が羨ましいですかそうでしょう!!!』
「荒ぶってんなぁ……」
「語ること多過ぎ問題の大部分がノノミちゃんの暴走なのホント好き――――っと、それはさておき……かーえーでーちゃーん?」
「わっ、わ……!? な、なに、どうしたの翔子ちゃん」
いつも通り賑やかな幼馴染組の傍ら。
親友と並んで微笑ましげな笑みを浮かべつつ、抱いたクッションの上でスマホを見ていた楓が……これまた、いつかのように翔子に絡まれ悲鳴を上げた。
「なーにこっそり密談してんのマネージャー」
「み、密談なんてしてないもん。もう三十分前だよ、現実にいないってば……!」
それはそうと一瞬でスンと納得する翔子に、楓が心中でほっとする――隙を逃さず、隣の親友が裏切り行為に走り彼女の手中から端末を攫っていった。
「――――そうね。密談してるじゃなくて、密談してたが正しいみたい」
「あぁああぁあぁああっ……!」
ほぼほぼ家族に近い親友特権にて暴挙を働いた美稀の言葉に、微かに頬を染め慌てる四條ご令嬢。途端、ニマァと邪悪な笑みを浮かべた新たな親友(仮)より追撃を仕掛けられるのは既定路線――――と、賑やかな女性陣を他所に。
「いつものことだが……男一人は辛いよな、友よ」
女子のじゃれ合いから自動的に弾き出される俊樹が、ゆうて自分より遥かに高難易度な『男一人』に常日頃挑んでいる友人を思うのを他所に。
『さてさて各陣営の序列持ちほぼ総勢が出てくるだろうと予想されている今回の戦争。どこもかしこも注目ポイントですが、やはりアイハル――ん゛ん゛、しっつれいしました。かの【剣ノ女王】様が【曲芸師】に対して一体どういった動きを見せるのか、といった点に世間からは関心が集まっているようで――――』
残る時は、幾許か。
世界で十一度目の仮想大祭が、始まろうとしていた。
『なお私は圧倒的ハルニア派で――――ん゛ん゛、しっつれいしました』




