とあるArchiverの配信にて:中編
――――前髪切った?
「どういうこと???」
『いきなりなに言ってんだこの人』
『一言目から一般人とは思考回路が違うところを見せ付けていくスタイル』
『レプの見た目ソロの時と変わってなくね?』
『お姫様対応verの鎧騎士要素は何処へ』
『てかやっぱペア攻略か……そうだよなぁ……』
『まあ、そこはタイトルからして』
「いや……もうなんかアレだな。当たり前って空気があるよね、隣にいるの」
『それな……』
『お姫様の表情が明らか違うんよ』
『しんどい』
『しんどみと尊みが無限に殴り合ってて感情グチャグチャになる』
『まあそもそもの話、アイリス様はドル売りとか一切してないからね。外野がワーワー騒ぐのは御門違いってか静かに見守る以外は明確に悪でしかないのよ』
『死』
『効く』
『唐突なド正論パンチはNG』
『世界人口の一割くらいが死ぬ発言ですよそれは』
『一割で済むかなぁ……?』
「メッチャ愛称呼びしてるなぁ……」
『ねえ、いま「かわいい」って』
『かわいいって言いましたね今ね』
『俺もお姫様に可愛いって言われたいだけの人生だった』
『なんで終わっちゃうんだよ。もっとフリートークしろ』
『心行くまで俺たちの心を殴っていけ。もう姫が幸せならヨシとするから』
『ふふって』
『笑った』
『あぁ、笑ったな』
『ふふってな』
『あ、無理』
『消えるのか、俺たち……』
『諸々草』
『なんも始まってないのに瀕死になってんなよオマエら』
「……ぁ、あ、来るぞ」
『二人ともエンチャ』
『水と雷!』
『てことは、まず魔法対処の方向でうご初手詠唱!!!??』
「いきなり《兎く駆りゆく紅煌の弾丸》ッ!?」
『別れた』
『ハイ弾幕ゲー開始』
『いや展開も早いし脚も速いし』
『ちょっと待ってなんで二人ともそんなスパスパ魔法斬ってんの』
『芯に当てなきゃ相殺ダメなはずなんですがそれは』
『確定クリティカルかよイカれてんな』
『曲芸師やっぱ頭おかしいわ』
『当たり前のように超高速機動並行詠唱するのヤメてくれます???』
『武装依存の魔法とはいえなぁ』
『よくもまあ噛まずに……』
『武装依存の魔法ってなんです?』
「プレイヤー本人のステータスに生えた適性魔法と武装に籠められた魔法とじゃ詠唱の難易度ってか融通の利き具合が違うのよ。適性魔法の方は結構キッチリ節詠みとか抑揚とかコントロールしなきゃダメなんだけど、武装依存魔法の方は多少のズレくらいなら武装がアジャストしてくれるから並行詠唱の難易度が下がる」
『超絶早口解説助かる』
『魔法持ちの武装なんて激レア中の激レアで手に入らないんですけどね』
「しかもハルさんの【兎短刀・刃螺紅楽群】はグレード47の正真正銘ハイエンド品だからね。レアリティも能力も最高峰だから、単純な価値で言えば今のアルカディアに存在するモノの中で上から二桁に余裕で入――――おいなんだそれッ!!!」
『今のなんぞや!?』
『メチャクチャ回ってメチャクチャ斬った……?』
『ほわっつ???』
『え、え、水エンチャの射程拡張?』
『マジか』
『嘘だろ軽く五メートル以上は伸ばしたってこと?』
『えぇ……』
『そしてこの凶悪な笑顔である』
『あ、詠唱おわいや速いって!!!!!』
『スロー編集倍率ドン!!!』
『でも碌に見えないんですがそれは』
『お』
『あ』
『え』
『え?』
『いやわかんないわかんない情報量』
『魔法陣壊したと思ったらレプが破壊光線撃ったと思ったら既に回避済みだと思ったらまた魔法陣が壊れてまたビーム乱れ撃ちでまた躱して』
「――――……」
『ナニコレ……』
『凄すぎだろ』
『すげえということしかわからない』
『もう人の形ってか赤い線しか見えないんだけども』
――――アーシェッ‼
「――――――!!!」
『アイリス様きた‼』
『青‼』
『いや赤‼』
『!!!!!!』
『やばすぎ』
『クリーンヒット』
『痺れる』
『あ』
『やば』
『うーわ』
『なんその連携』
『焔零神楽!!!!!』
「……………………神懸ってんな、マジで」
『え、勝ち???』
『真っ二つやぞ!?』
『なんかパキンって音せんかった?』
「あ、これまだ……」
『なになになになに』
『なんか影が』
『今度はなんだ』
『第二フェーズ?』
『まだ強くなるってこと……?』
「……いやまあ、ヤバすぎだったけど。凄すぎだったけど、流石にあの【影滲の闘技場】だからね。いくらアイリス様とハルさんのペアでもこれで終わったら――」
――――『猛る天孤の竜が鳴く』
「――――――……っは」
『詠唱!!!???』
『マジで!!?』
『おいこれいつぶりだよアイリス様の魔法行使とか!!!』
『二年ぶり!!! 二年ぶりです!!!!!』
「『赤円』討滅戦以来…………マジか……?」
『んで曲芸師は曲芸師でなにしてんだオマエわあr!!!』
『投擲スキル進化してね?』
『両手仕様になってるのもそうだけど全弾エンチャントはどういう理屈だよ』
『情報量……! 情報量がッ……‼』
「【兎短刀・刃螺紅楽群】から生み出される小兎刀は分体……本体の分け身だから、本体エンチャントで全体に反映される……? 群体武装、的な……?」
『オタク考察がんばれ』
『テル君のブツブツと曲芸師さんの大暴れはさて置いて、とても耳が幸せです』
『職人頼んだぞ。是が非でもお姫様の詠唱音声を抽出してくれ』
『はい、来るぞ』
『3』
『2』
『1』
「――――……………すっ……げ」
『万雷招来』
『これが精霊の祝福持ちの大魔法ですよ』
『魔法士泣いちゃう』
『泣いてる暇があったら大精霊を狩りに行け』
『全個体の居場所が割れてんの雷だけだしワンパーティ攻略キツいっす……』
『なんでレイドだと条件達成できないんすかねぇ……』
『ねえ』
『あっあっあっ』
『ん゛んッ……!!!』
『その体勢はダメです』
『押し倒されたの??? 押し倒したの?????』
『アイリス様は紳士だなぁ(白目)』
『褒めてって』
『しっかり褒めて……』
『俺で良ければ一生を賭して褒め称え崇め奉り続けますが』
『もしかしなくても全編こんな感じですか』
『隙あらばイチャついてく感じですか』
『おい頑張れレプラ。極力隙を与えない方向で気張れやレプラ』
『わけわかんねえ殻に引き籠もってる場合かおめえよお‼』
『殻ってか、繭?』
『繭っぽい。それか卵』
『てことは中からなんか出てくるってことですよねぇ』
「それはそれとして、ヤバいな。さっきのサンボルで魔法陣一掃か」
『さす姫』
『雷属性最高位魔法は伊達じゃない』
『単純な火力ならミナリナの通常ぶっぱ越えレベルだからね』
『なおミナリナの詠唱ぶっぱ』
『アレはもう魔法というか奇跡の域だから』
『てかなに。残機制?』
「あ、そういう……ハルさんのアクセを模した死亡回避能力?」
『つまりさっきのパキンパキンで既に二回倒してる……?』
『え、じゃあこの人たちそれぞれ一発でレプラのHP吹き飛ばしたってこと?』
「普通に考えたら柔らかすぎな気がするけど……あぁ、わかった。これペア攻略の弱点実装でメチャクチャ紙耐久になってるパターンだろ。そう考えたら確かにってかハルさんガチでレプ特効じゃんヤバ――――んぇアッ!!?」
『は』
『んん!?』
『え、なに?』
『死んだのに生きてる』
『だからわかんねんだって一体全体なにをしてんのよ』
「アレだ! 【紅玉兎の髪か――じゃなくて、今は【藍心秘める紅玉の兎簪】! コレがアレの死亡回避だろ映像に映ってるやつ無いはずだから今回が初公開ッ」
『なるほどなぁッ!?』
『わかったけどわかんねえ!』
『どういう状況なのよ、曲芸師さんは何を躱してんの!?』
「いや見えね――……え、けど後ろの壁‼ ハルさんが回避動作した直後に壁でなんか弾けてる! クッソ速い遠隔攻撃!?」
『早いもなにもガチ見えねえんですが!?』
『ちょちょちょスロー編しゅ言ってる傍からはい来たあああ』
『スローってか止まってね???』
『ふぁっ!!!??』
『おい今なんか』
『止まってねえわ動いてるわ』
『どんな速度だよ曲芸師さんほぼ停止してたぞ!?』
『じゃあなんでソレをお前は避けてんのよ!!!!!』
『予知スキルでも持ってんのか!!』
『もう馬鹿だろこれ』
『わからんわからんなんもわからん』
『スローおわた』
『なんか割と冷静に相談してますねぇ!!!』
『度胸ぶっ壊れてる』
『おあ』
『アイリス様が打つ!』
『溜め』
「…………あ、っはは……」
『はい、これが剣ノ女王です』
『ヤバ過ぎ』
『これが根本的にはただの剣圧という事実』
『で』
『はぁ?』
『なんで無傷なんですかねぇ??????』
『もう全部イカれてる』
『ゲーム壊れちゃった』
『詰みでは?』
『アレでダメなら他のなにが通るんだよ』
『間違いなくアルカディア最高レベルの火力だろ……?』
『そりゃ流石のお姫様も困りますわ』
『かわいい』
『可愛い』
『困り顔アイリス様かわいすぎか』
『ちょっと待って全てがどうでもよくなるくらい今日のアイリス様が可愛い』
『尊みの塊』
『額に入れて飾っておきたい表情。もう曲芸師もセットでいいから』
『そしてそのセットの曲芸師がなんか言い始めましたよっと』
「火力……? え、あれ以上のなんかがあると……?」
『それは流石に嘘だよ』
『アレ以上は人類には無理だよ』
『曲芸師もギリギリまだ人類だろうしな……』
『怪しい部分はあるが』
『ねえ、俺が知ってる人類は蹴りで大斧かっ飛ばしたりしないんだけど』
『もう無茶苦茶で草』
『気付いたら無呼吸で見てたわ。お前ら気を付けろ、死ぬぞ』
『草』
『それはそれとして結式一刀!!!』
「《鋒雷》! 十の太刀ッ‼」
『&《迅疾の青》!!!』
『はい無傷! クソゲー!!!』
『そして隙あらばイチャついていくぅ!!!!!!!!!!』
『お姫様に魔法薬を叩き付けてもらいたいだけの人生だった』
『展開が……展開が早くてぇ……!』
『なに?』
『なんつった???』
「ごじゅ……」
『あるわけねえだろそんなもんがよお!!!』
『そりゃお姫様も困惑しますわ』
『そしたら俺が行く????』
『行ったわ』
『やったわ』
「もうほんと頭おかしい……! 最高かよ……‼」
『きらぼしってなに!!!!』
『結式の未出技……?』
『なんか眩暈してきた』
『俺はさっきから保険として洗面器を抱えてる』
『そしてこの無傷である』
『ちょっと待ってマジでアイリス様が可愛すぎるんだけど……』
『説教されてて草しか生えない』
『仲いいなぁ……!!!』
――――アーシェ
――――いつでも
「あ、やべ、なんか来る……!」
『避けた』
『行った』
『!?』
『るび』
『銃!!!?』
「初見初見ッ! 情報無いッ‼」
『ルビーバレットってルビーバレット!?』
『ひな……なに!!?』
『火縄銃!?』
『きつつきい!?』
『なんかわからんけどなんか格好良い感じの日本語!!!!』
『おい誰か解説う!!!』
――――貫け……【簇ル紅兎ノ大煌砲】ッッ‼
「ッ――――――――ぁ、えな、う……???」
『??????????????』
『穴』
『吹っ飛んだ』
『ナイスキャッチ』
『穴開いた』
『うわ痛そう……!』
『お姫様が王子様』
『もう頭痛い』
『なんなのこの人たち。すげえとかっこいいと浪漫の擬人化なんだけど』
誰が前後編だと言った。