とあるArchiverの配信にて：前編
「――――こちら照月。核爆弾投下につき突発生だ語るぞオマエら覚悟はいいな」
『枠取るの早過ぎで笑ったよね』
『ぜっっっっっっっっっったい来ると思ってた』
『動画アップロードされてから即座に配信始まったの怖いけどGJ』
『わこつ』
『出たわね完堕ち曲芸師ファン』
『チャンネル登録者数二万おめっと』
『もう完全に追っかけアーカイバーで笑う』
『祝砲からの序列更新だし、まあ爆弾来るのは分かってたよね』
『二本ありますよ動画！ 二本！ 勿論どっちも見るよなぁ！？』
「当たり前でしょ義務だよ義務――ってことで早速いこうか人が集まるのなんて待ってらんねえ！！！ 見るぞ一本目えァッ！！！！！」
ドッ、ゴッ、ガシャン。
『ねえ、なんか破砕音が聞こえましたけど』
『暴れんなｗｗｗ』
『落ち着けよ限界オタク』
『これもう単なる熱狂的ファンだよね』
「ごめんマウス飛んでって物破壊した。どうでもいいわ、見よう」
『どうでもよくなくて草』
『なにがどうなってマウス飛んだんだよ』
『ぶん投げたの？？？』
『物は大事にしろ？』
『お』
『お』
『はじまた』
『wktk』
『あぁ……実によく見覚えのある光景です』
『まあ方角と距離的にほぼ確だったよね』
『影滲の闘技場！！！！！』
『未だに影滲の読み方が定かではない件について』
『えいしん、では？』
『公式がフリガナを振らない限り真実は闇の中……』
『一本目はソロか』
『そ、そうだな。一本目はな』
『二本目のタイトル、あれもうそういうことだよね』
「そっちも楽しみだけどまずこっち集中よ。肝心なレプの形態は……あっ」
『うーん人型ですねこれは』
『はいヤバみ確定』
『人型レプラだけはアカン』
『九尾のお姉さん的な』
『つよそう』
「ふぁ」
『あっ』
『うわ』
『は？』
『ハイ』
『えぇ……』
『瞬殺で草も生えない』
『当然の如く初手激高倍率スロー編集で笑うしかないんだわ』
『それでようやく辛うじて目で追えるレベルというね』
『なに今の。反応速度イカれてません？』
『初手で真向から突撃かました曲芸師さんも大概おかしい』
『相変わらずゲームオーバーへの忌避感が薄すぎるよキミ』
『物の見事なクロスカウンター……近接系か？』
『九尾の妖狐だろコレ。魔法使ってきそうだけど』
『あら』
『また死んだ』
「っスゥウーーー――――……え、このレプやばくね？ 今の完全に純粋な速度勝負でハルさんの上取ってたぞ。見た感じ《空翔》も使ってたのに」
『なんで当たり前のようにスキル使用を見抜けるんですかねぇ』
『ガチ勢オタク特有の推し観察眼』
『《空翔》に関しては足元で水が散るから分かりやすいんだよなぁ』
『死が止まらねえ』
『十回目』
『お、決死紅』
『出たなインチキあたおか強化形態……！』
『更にスロー倍率を引き上げていくぅ！』
『あらま』
『ハイ』
『はい』
「いやいやいや……いやいやいやいや…………」
――――いや、ノータイム破壊光線はダメだろ
『なんか言ってる』
『アンタも大概やってること全般〝ダメ〟だけどね？』
『素直な文句で草』
『やっぱこれ魔法タイプでは？』
『魔法タイプが最速クラスのファイターとインファイト成立させてんじゃねえよ』
『まあゴン太ビーム軽率ぶっぱが有罪なのはそう』
『魔法陣の描画速度おかしいだろ。秒ってか瞬だったぞ』
『二十回』
『数分足らずで死亡回数が酷いことに』
『俺だったら二回目くらいで心折れてる』
『なんでそんなポンポン死んどいて平気な顔してるんですかねぇ……』
「その辺のメンタルは流石だけども……これ、一本目はそういう感じかなぁ」
『敗戦動画濃厚？』
『そういうアレで二本立てかぁ』
『様子見ってか下見ってことね把握』
『それにしてはフルスロットル』
『なにごとも全力で楽しむのはハル氏らしくて良き』
――――ッハァアアァアアアア！ なんだそりゃズルだろンの野郎ッ‼
『楽しんで、る……？』
『楽死んでる』
『いやまあ……』
『唐突に弾幕ゲー始まったらそりゃ叫ぶよね』
『なあにこれぇ』
『ビーム以外に搦め手も有り、と』
「被弾する度に減速してるよなコレ……AGIに負荷かけてくるタイプのデバフ？」
『それっぽい』
『大体そんな感じに見えますねぇ』
『常に駆け回るタイプのマグロメタかぁ』
『定置網に引っ掛かる回遊魚かな？』
「んふっ」
『草』
『草草の草』
『定置網&回遊魚は笑う』
――――ちょっと待てオイ無理だろこれッ……‼
『なお本人にとっては笑いごとじゃない模様』
『そらそうよ』
『触れてはいけないバラ撒き障害物多数ってか無数&肝心要の敏捷でタメ張ってくる&広範囲薙ぎ払い極太光線ノーモーション連射可能……？』
『無理では？？？』
『なんだこれレイドボスだろ最早』
『ここまで清々しいレベルの無理ゲー形態は久々に見た』
『総大将の超合金ロボめいた攻略させる気のなさを感じる』
『ミナリナの魔龍とかね』
『剣聖様の御爺様……』
『三十回』
『アイリス様の鎧騎士とも張るクラスなのでは』
『そうだねぇ……』
『え待って。結果が分かってるからこそ意味不明なんだけど』
『これを？ マジで？？？』
『なんか体温上がってきた』
『想像の遥か上を行くヤバさで二本目への期待がヤバくてヤバい』
「あ、ちょっと待って無理。手が震え通り越して痙攣してる」
『めっちゃカタカタ聞こえるｗｗｗｗ』
『マウスから手を放して一旦落ち着こうか……ｗ』
『四十回』
『つまりアレだよね。絶望的な無理ゲー感を印象付けておいてからの……』
『お姫様との共闘で更なるバケモノと化したコレをぶちのめす演出と』
『前座からの本番パターンかぁ』
『実は攻略できてないって可能性が出てきたな。祝砲とか序列更新のアナウンスは、なんかこう何かの間違い的なアレで（？？？？）』
『相も変わらず視聴者に混乱しか齎さねえなこの人』
『うわ笑ってる……こわ…………』
『この笑顔がいいんだるぉ』
「この笑顔がいいんだよ」
『こういうとこホント好き』
『曲芸師はこれなんですわ』
『滲み出てる感が良き』
『そりゃお姫様も惚れる』
『真向から向けられたら俺も惚れる自信がある』
『五……五じゅ……ごじゅu…………』
『すっげぇ耐えてるヤバ』
『逃げの一手で延命してるだけなのに絵面がアツいの本当になんなの』
『やっぱ敏捷特化は映えが強いんよ』
「あーもうほんとかっこいい好き俺この人に一生ついてく」
『はいはい曲芸師オタク曲芸師オタク』
『実際かっこいいからなぁ……』
『癖なのかなんなのか分からないけど、切り返しの時たまに無意味にグリングリン身体回転させんの派手なパフォーマンス感あって好き』
『ちょっとわかる』
「あれは多分だけど超高速機動下で一瞬立ち止まる切り返しのタイミングに全周確認からの状況把握で次の動きを即断する際の動きなんよ。限界までスロー編集かけて目元をアップで映すとヤベー勢いで視線が動いてるから大体合ってるはず」
『はぇえー』
『あの無駄に洗練された無駄のない無駄な動きにそんな秘密が』
『研究してるぅ……』
『もう本当に生粋のオタクで草』
『今の説明にこそスロー編集が必要なレベルの早口でしたね』
『あっ』
『あぁ……』
『ありゃー……』
『五十』
『やっぱ逃げきれないか』
『いやでも三十秒くらい保ったでしょ。普通に人間やめてる案件よ』
「ほんとそれ。流石の流石……――――」
――――マジ無理。撤退
「あ、マジか」
『ここで一本目終わりかああああ』
『推定十分程度の戦闘で死亡数50とかいうバグ』
『まさかの死亡集でしたねぇ……』
『もしこれだけだったら、誰とは言わんけどメチャクチャ擦られてただろうな』
『そうだな、これだけだったらな』
『アンチへの餌だったよね。これだけだったらね』
『二本目……！ 二本目を早く……‼』
「よし、いくか…………もっかい言うけど、覚悟はいいなオマエら」
『そらもうアチアチよ』
『阿鼻叫喚の準備は整ってる』
『やって参りました、常識破壊のお時間です』
『ついでにお姫様との推定デートで脳を破壊されるお時間です』
『おいやめろ』
『体調悪くなってきた』
『いろんな意味で約束された勝利の動画が始まる』
『構わん。（再生ボタンを）押せ』
「オーケー、押す――――ってことでいくぜ二本目ぇアッ！！！！！」
ドッ、ゴッ、ガシャン。
『おいｗｗｗｗｗｗｗ』
『またかよ』
『落ち着け照月ぃッ！』
『お前マジ……ｗ』
『今度はなに壊したの……！』
『マウス「解せぬ」』
『もうテル君の奇行は捨て置け。そんな場合ちゃうねん』
『ハイ来ました超絶クオリティOP』
『四條グループのご提供！！！』
『名実ともに本番だぁ……』
『追加の酔い止め飲んだ。かかってこいや』
――――――――……
――――――……
――――……
――……
……
楽しそう。
