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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
桜花一片、無窮の天嵐は影と遊ぶ 第二節
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定員集結

「――――なぁんだお前さん本当に若ぇってか向こうのまんま・・・じゃねえか、オッサン一人で浮いちまうよ参ったな会いたかったぜ坊主ぅ!」


「そういうアンタもあっちと変わらず……――ぐべっ、なん……!? ちょ、ギブギブ締まる腕太い筋肉……!」


 アーシェが到着の連絡を受け取ったとかで、一旦厨房を抜けてエントランスへ顔を出してみれば三十秒足らずでこの始末。


 見慣れた見慣れぬ顔・・・・・・・・・が二つと、仮想世界あちらでも未だ見慣れたとは言えない女性一人を含む三人組。すぐ目に留まった彼らへヒラヒラと手を振れば、ズンズンと迫った偉丈夫の剛腕がものの数秒で有無を言わせず俺を捉えていた。


 咄嗟にジタバタ抵抗するも、残念ながら効果は一ミリも認められず。


 二メートルを超える向こうのアバターと全く同じ――とは流石に行かないまでも、百八十は下らないであろう長身に加え筋肉だらけの分厚い体躯は堂々たる様。


 少々離れた位置から呆れたような申し訳ないような視線を俺に送っている〝娘〟の様子から推測するに、最低でも齢四十後半は固そうなのだが……。


 いやはや、アンタも十分以上に若ぇよなんだこの筋肉量は。全盛期は一体どんな化物だったんだよリアル豪傑め――


「……父さん。そのくらいに」


「おっと、わりぃ」


 そうこうして、抵抗を諦め脱力状態へ移行した数秒後。声音を漏らさず小さな溜息をついた〝娘〟が近寄り、暴走状態のオッサンこと〝父〟を嗜める。


 助かった。出会って早々、首をもがれるかと思った。


「いかんなぁ。現実こっちで向こうのダチと会うと、つい年甲斐もなくテンションが上がっちまって……――あー、大丈夫か?」


「だ、大丈夫、だけども……こっちでSTRに物を言わせるのはヤメテくれ、死ぬ」


「カッカ! すまねえすまねえ、気い付ける」


笑い方それこっちもなんだ……」


 ――ま、ともあれ。


「ゴッサンと、ヘレナさん、だな」


「あぁ。改めてよろしくなハル」


「父が失礼いたしました、お久しぶりですハル様――……様付けは、流石に現実こちらでは大仰でしょうか」


「ですね。どうぞ気安く呼んでください」


「えぇ、了解しました」


 並んだ父娘の二人組は、どちらも向こうとほぼ同じ顔。


 ゴッサンの方は死ぬほど似合っているダンディズムカットの短髪がやや新鮮だが、ヘレナさんは本当にそのままだ。アバターと比べて目元が少し柔らかい印象かな? というくらいで、スーツを着れば完全再現と相成るだろう。


 雰囲気的な第一印象としては……こう、アレだな。気のせいでなければ二人とも、ソラの御父上こと徹吾氏に似たものを感じる。


 おそらくだが、親子揃って現実でも上に立つ系・・・・・の人間なのではなかろうか。


「――――挨拶が済んだなら、部屋に案内する」


「おう、頼むわ」


「お願いします」


 と、脇に立って終始ゴタゴタを見守っていたアーシェが口を開く。


 俺が顔を出す前にホストと招待客の挨拶は終えていたのだろう。加えてこちらの二人も〝常連〟ゆえか、お互いのやり取りはサッパリしたものだ。


「もうユニが仕上げを始めてるから、よければすぐ夕食にするけれど」


「おーいいねぇ! 恋しかったぜぇ、アイツの料理」


「……またしつこく絡んで、怒らせたりしないように」


 気心の知れた者同士、気安げに言葉を交わしつつアーシェが二人を連れて行き……――後に残ったのは、もう一人。



「ふーむ……まさかとは思うが、実はこっちだと無口キャラだったりするのか?」


「――やかましい。単にタイミングを計っていただけだよ」


 こんな風に思うのも気持ち悪いが、男に限れば仮想世界むこうで誰より聞き馴染んだ声音。腹立つくらいの爽やかボイスは当然ながら現実世界でも変わらないようで、同じく変わらぬ爽やかフェイスと相まって小憎らしいほどに This is イケメン。


 ある意味で、誰よりもそのまんま・・・・・


 いつものかみしもを着せて刀を持たせれば、ヘレナさん以上の再現度百パーセントを叩き出すのであろうソイツ――


「そっちこそ、向こうと比べて大人しいものじゃないか――ハル」


「ッハン、そっちは清々しいまで同じで逆に安心したわ。いや、なにが『逆に』なのかは知らんけど」


「訂正する。その適当さは紛うことなき君だな」


「なにおうこんにゃろう。ネイトさん・・・・・って呼ぼうか?」


「おい、リアルネームアタックは犯罪だぞ」


 イスティア序列四位【無双】こと囲炉裏は、おそらく俺と鏡写しなのであろう苦々しげな表情を浮かべた後。


「……せっかくの休暇だ、素直にいこう――そこそこ会いたかったよ後輩君」


 憎まれ口を叩き合いながらも、時たま急に素直さを炸裂させてくる癖は変わらないらしい。そうして、ふっと緩い笑みを浮かべた青年に毒気を抜かれ、


「あーはいはい――俺もそこそこ会ってみたかったよ、先輩」


 擦れ違いざま掲げられた右手と、軽く拳をぶつけ合い――



「「っ……!?」」



 互いの骨がいい感じにカツーンとクリーンヒットして、二人同時に顔を顰めた。








旅行定員ラスト一名は囲炉裏君こと御岳ネイト君。

予想してた人いるかな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全員集合ゥ!! 砂糖を吐く覚悟は十分か? [一言] ハルが絡むと途端にポンコツ侍になるよねイロリン
[良い点] うっしゃあ〜、いろりんキタァ!!!!!!
[気になる点] 南陣営の慰安旅行が原案なのに東陣営の方が多い件について。 東が大雑把で顔出し気にしないだけか?? お姫様にビビってる南序列持ち、正直に手を挙げなさいww
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