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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
桜花一片、無窮の天嵐は影と遊ぶ 第二節
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竜と狐と主人たち

「――――……えと、私の言いたいこと、わかりますよね?」


「なんとなくわかるから言わなくていいぞ」


()()()()()()()()。ハルは本当に、いつでもどこでもハルですね」


「言わなくていいって言ったのに……!」


 ソラが満足するまで空中散歩を楽しんだ後。どことも知れぬ小川の傍へ降り立った俺たちは、川辺に腰を下ろして至極のんびり土産話を交換していた。


 情報共有というよりは、ただ『あんなことがあった』『こんなことがあった』と適当に思い出を語るだけ。俺側のアレコレを聞く度にソラさんはいつもの呆れ顔だが、今回に限っては彼女の〝冒険譚〟も大概だ。


「そっちこそ今回は人のこと言えないぞ。小狐ルビィのレベル、いくつだって?」


「だ……! それ、は……ですから、ルクスさんが……!」


 ソラが調伏した【星屑獣リム】である小狐――ルビィのレベルは24。サファイアの31には及ばないが、迫るものと評して問題無い数値だろう。


 それはつまり、彼女がそれだけの【星屑の遺石ラピス】を獲得したということ。三十六名フルレイドでイベントを戦い抜いた俺とは異なり、()()()()()()()()の旅の中で。


 夜に限っては毎度のこと俺が大暴れはしちゃいたが、頭二日分の昼狩りも含め仲間たちとて中々に気張っていた。今回の大報酬は決して俺単身の手柄ではない。


 それを踏まえて考えれば、今イベントにおけるソラのキルスコアは俺と大差ないどころか勝っている可能性さえあるだろう。


 ゆえに、君も大概であるそっちこそと言っているわけだが――


()()()()()()()()んですもん! それはルクスさんの分なんだからダメですよって、私は何度も叱っ――言ってるのに!」


 ……とのことで。おい北陣営序列第一位、十五歳に叱られてんじゃないよ。


 ルビィの愛らしさにやられたのか否か。トラ吉のワンころにお裾分けした俺など目じゃない勢いで、ルクスが自分の取り分を餌付けしまくったらしい。


 つまりは、ほぼほぼ二人分の戦利品を注ぎ込んだゆえの到達レベルということ……まあ、そうと考えても驚異的なスコアではあるのだろうが。


 ちなみに、ルクス自身は残念ながら初回調伏ならず。次は〝でっかいドラゴン〟を捕まえてやると、終わり際に息巻いていたそうな。


 いろんな意味で反応が鬱陶しそ……怖そうなので、


「サファイアを紹介するのは、しばらく遠慮しとこうかな」


「あ、はは……」


 で、そんな俺の薄情な言葉を咎めもせずに薄く笑うソラさん。なるほど、きちんと仲良くなれたようで大変に結構だ。


 ソラが若干辛辣になるのは一定以上に打ち解けた証だぞ、良かったな旅人。



 さて、そんなことはさておき……。


「――なんだ、あの極限癒し空間は」


「写真、撮ってもいいでしょうか……」


 二人揃って目を向けるのは、仲良く()()()()()()()()星空たちの姿。両翼を広げれば十メートルにも届きそうな巨大な竜の上を、元気よく小狐が駆け回っていた。


 はしゃいでいるのはルビィだけかと思いきや、サファイアの方も首を伸ばしたり尾を伸ばしたり、右に左に翼を広げたりと次々〝コース〟を作ってあげている。


 なにあれ尊い、異種間仲良しコミュニケーションは卑怯だよ卑怯。


 いや姿が違うだけで『同種』なのかもしれんけど、でっかい竜と小っこい狐がワチャワチャしてんの可愛すぎか万病に効くわあんなもん。


 一応は飼い主にお伺いをということだろう。そわそわ横目で視線を送ってきたソラにサムズアップを返せば、少女は一心不乱に獣たちを見つめ始めた。


 おそらくは、物凄い勢いで視界スクショが連写されていることだろう。


「仮想世界人生、狂わされる奴は続出するだろうなぁ……」


 いやはや、ペット要素は沼。


 星空一色の変わり種とはいえ、仕草や振る舞いは現実顔負けの真なる動物っぷり。現実には存在しない幻獣の類に至るまで様々なバリエーションを取り揃えているとなれば、その魅力は無限大だろう。


 この光景を愛でるため、全てを投げ打つプレイヤーがいてもおかしくは――


「――……仲良し、ですね」


「っ……、…………そうだね仲良しだね。俺も混ぜてもらおっかなー!」


「ぁ……もう!」


 主同士ということでわからんでもないが、二匹を自分たちに見立てでもしたのか『すり……』と()()()()()()()()ソラの隣から腰を上げる。


 ――この十五歳、本当に去年まで中学生かぁ?


 時たまビックリするくらい艶っぽい表情と声音を繰り出してくるもんだから、お兄さん心休まる時がなくて心底困るよ本当に。


 やられっ放しのままじゃ、もう勘弁ならないってのにさ。






このあと二人と二匹でメチャメチャワチャワチャした。






※以下雑記


本編とは全く関係ありませんが、本日で365日連続更新達成です。凄いですね。


投稿三日目の予約ミスにより一周年=365日連投にならなかったり、キリよく500話にも届かなかったりと絶妙に気合が欠けていましたがヨシとしましょう。


『よし頑張るぞ』と決めた日に自分へ課した目標は達成です。私えらい。


それに伴って本来であれば一年間連続更新達成となる本日のタイミングで〝隔日〟あるいは〝土日休み〟といった形で毎日更新を終えさせていただくつもりだったのですが、それに関してもナシということで。


よくよく考えたら休みなんか設定したところで、どうせ描きたくて書いちゃうからね意味ないねってことで。今後ともよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 凄いです! おめでとうございます!!
[一言] 目標達成おめでとう! たった一年の文量じゃないし間違いなく偉業だね!
[良い点] ほぼ丸一年、この作品を追い続けられたこと [気になる点] メッチャ今更だけど、自分がソラちゃんと同年代だということに気が付いてしまい、「こんな高一女子いてたまるか」と一瞬真顔になりましたと…
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