一方その頃:side 剣二振り
「――――ん……」
響き始めたアラームに意識を揺られ、目蓋を持ち上げれば闇一色。
シンと静まり返った洞窟内は冷たい空気で満たされているが、現実と比して強靭なアバターは些細な冷気で不調を起こすほどヤワではない。
相方が意外な技を発揮して仕立ててくれた毛皮のブランケットのおかげもあるが、三日目の目覚めはそれなりに気持ちの良いものだった。
すぐ隣で未だ静かな寝息を立てている小柄な同行者自身も、そのどこまでも穏やかな寝顔を見るに睡眠の質は良好なのだろう。
もっとも、彼女の穏やかではない顔など滅多に見たことがないのだが。
シャワーも浴びず寝起きだというのに、サラリと引っ掛かりのないアバターの髪を手櫛で梳きつつ一瞥。システムクロックが示す時刻は丁度AM5:00。
昨日は、というより、イベントが始まってからずっと。
こちらは意外で済ませていいものか……常軌を逸した方向音痴(?)であったらしい〝誰かさん〟のおかげで、とんでもない目に遭いっぱなしではあるものの。
退屈しない冒険など、なによりも彼女が望んでいたことであるからして――
「………………気まぐれで、誘ってみるものね」
すよすよと眠る【剣聖】を、不思議な気持ちで眺めながら。
先に目覚めた【剣ノ女王】はひとり、満更でもなく楽しげな呟きを零していた。
16%を引いたので更に短い閑話を投下。
『とんでもない目に遭いっぱなし』の簡単な流れ↓
・合算知名度が高過ぎるのでグループの混乱を避けるため非合流二人行動。
・初期地点の平野から遠目に見えた『山』と『湖』どちらへ行くかジャンケンして【剣聖】が勝利→『山』へ向かう。
・【剣聖】の先導で迷子になる(!?)
・夜襲含む【星屑獣】の群れを適当に粉微塵にしながら、ひとまず野宿をするために偶然見つけた洞穴に入る。
・朝起きたら【剣聖】がいない(!?)
・奥へ続いていた洞窟の中をフラフラお散歩中の【剣聖】を確保。お説教……は一時呑み込んで「戻りましょうか」と微笑み引き返す相方についていく。
・地下大迷宮に迷い込む(!?)
・【剣ノ女王】が【剣聖】にお説教する。
・三日目現在、迷子継続中。
超楽しそう。いつか番外編で描くかもしれない。
ちなみにいくら方向音痴でも人外二人が易々と遭難するはずもないので、
お師匠様がヤベーのではなく『山』がヤベーです。
それはそれとして、お師匠様もわりとヤベーです。