夜明けて白、葬送を唄う始まりの名は 其ノ漆
相棒が織り成した魔の『剣』が輝き、
お姫様が紡いだ世界の『剣』が輝き、
高く高く翔け上がった俺の手に在る『剣』が、真白に煌めき空を染める。
「――――――『微睡む白の息吹』」
鎧も仕舞い、盾も仕舞い、他にはなにも要らぬと掲げるのは一振り。
「『遠き尊き天蓋を望みし、追憶に縋る愚者の腕』」
それはかつて、主の意地に従い牙を叩き付けた屑鉄だったモノ。
「『虚ろの断界、空の慟哭、無明を拓きて回帰せよ』」
それはかつて、共に見果てぬ御柱へと挑み、共に再起と再戦を誓ったモノ。
「『祐せし此方』」
雌伏の時は過ぎ去り、今ここに他のなによりも燦然とした輝きをもって、
「『希み願うは彼方』」
共に空を翔け――ただ一つの憧憬を討ち果たさんとする、魂の分身。
……よう大将。リベンジだってんだから、やり返さないとなぁ?
反則ずぶずぶの援軍を引き連れて、特大の必殺連打により無茶苦茶なフォローを賜ったのは承知の上で『挑戦者』の特権をもって宣わせてもらおう。
無に等しい一撃と、果てしない高みからの一撃。
一発ずつの交換から始まった仲だ――決着の形も、それしかねぇだろうよッ‼
「『この鋒は終にして始まりの嚆矢』……!」
翼を灼かれ、尾を断たれ、光輪を砕かれた『白座』が首を持ち上げる。
あの日、俺を遥かな上から見下ろしていた白き竜。上下を変えて交わった視線が……その瞳が、まるで『お前を覚えているぞ』と物語るかのように、
【白座のツァルクアルヴ】は金眼を眇め、ゆっくりとその顎を天へと向けた。
受けて立つと、言わんばかりに――しからば、勝負だ。
「『白座へ至る……神雷なりて』ッ!」
後先なんて知ったことか。俺たちが勝つか、お前が勝つか――――
「『いま此処に、星欠を描く』ッ‼」
我が魂の相棒に、全てを託して解き放つ。
「至り、届き、穿て――――――《神騙りしは望郷の白雷》ッッッ!!!」
竜が顎より放った消滅の息吹と、人がその手より投じた白剣の雷。
交錯は、かつて――かつての邂逅を再現するかのように、音もなく終わり。
息吹を喰らい尽くし、天から地へと翔け奔った真白の光が、
『――――――――……』
穏やかに瞳を閉じた白竜の容を、深く。
どこまでも深く、真直ぐに貫いた。
冗長で意味の無いじゃれ合いなんて要らない。
数えられるほどの短い時の間に、互いを見つめた宿敵だから。
謎やら何やらバラ撒きつつ、一区切りです。
また明日お会いしましょう。