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世界が知らない名前

「核心から、順にいこうか」


 勿論()()()()()()――そう念押しをしてから、徹吾氏は語り始めた。


「まず君たちが思うように、我々は【Arcadiaアルカディア】内部の仮想世界に干渉する権限を持っていない。ゆえに、運営開発という肩書きを預かりながら〝ゲームクリア〟を『外』に依頼する必要があったわけだ」


「…………」


 無言で先を促すアーシェの隣で俺も黙っちゃいるが、のっけから全くもって意味がわからないんだよなぁ……。


 徹吾氏の口ぶりから〝頂点〟こと上司的な存在がいるのは確実。しかもその権力は、彼が及びもつかないほど隔絶しているらしいと予想ができるのだが――


 なんのためにクリアを求めているのかは置いといて、なぜクリアを求めて()()()()()()()()()()()が謎。


 彼の上にいる者がそこまで絶対的な立場であるならば、一部情報開示に制限を掛けるだけで徹吾氏たちを自由にさせている理由がわからない。


 『一部は許されている』ということは、ゲームクリアを外に依頼する動きそのものは認められているわけだ。


 認められているが、制限を受けている。許されているが、許されていない。


 協力はしないけど好きにやっていいよ的なスタンス?――実質的な支配者なのであろう〝頂点〟たる御方の意図がサッパリわからない。


 協力をせずに制限を掛けているということは、ゲームクリアを目指す動きに少なくとも肯定的ではないと考えられるので……。


 なら普通に止めればいいのでは?――と、思うよな。【Arcadiaアルカディア】へ干渉する全権を握っているというのなら、それくらい容易いだろうし。


「いろいろと疑問は尽きないだろうが、残念ながら『上』について私が口にできることは多くない。契約を違えれば、私の首が飛びかねないからね」


「無理はしなくていい、です」


 アーシェの言葉に「ありがとう」と穏やかに微笑む徹吾氏だが、言っていることは全くもって穏やかではない。


 契約、首が飛ぶ……『立場の格差』と『一方的な強権』がより濃厚になった。


「ただまあ……口止めされているのは、あくまで『誰か』という答えだからね。それ以外の情報なら教えられるとも。例えば、そう――」


 グラスに注いだワイン……ではなく、葡萄ジュースを実に格好良く無駄にスワリングさせながら。


 どこか親に反抗する悪戯小僧の如き笑みを浮かべて、徹吾氏は言う。



「仮想世界は、現在〝ただ一人〟によって運営されている」



「――…………」


「……もういい。その件については、もう聞かない」


 元より黙っちゃいたのだが、濁しに濁した遠回りの〝情報ぶっぱ〟により心の底からの絶句。アーシェもアーシェで敬語を忘れ、使い物にならない俺の分まで彼にストップを掛けてくれた。


 堂々と、唐突に、意味不明かつヤバ過ぎる衝撃発言をしたぞこのオッサン――


()()()()()()()()『答え』に成り得るだろう。君たちが抱いたであろう〝何故〟の答えにね」


「――ちょっと、ストップ……マジで大丈夫です?」


 まだ言うか――と、思わず止めに入るが、顔を見るにどうも『大丈夫』らしい。ラインがわかんねえ……()()がセーフ扱いならアウトはどんな核爆弾なんだよ。


「良くも悪くも、()()は私たちに無関心でね。明確に約束を違えなければ、わざわざ咎めたりはすまいよ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ………………………………………………。


「……あー、と…………アーシェ?」


「……うん」


「そろそろ帰るか?」


「……もう少し、頑張る」


 そっかぁ、頑張るかー……まあ、多分もう()()()だよなぁ……。


 ――毒を喰らわば皿まで、いっとくか。


「質問、いいです?」


「勿論だとも」


 気持ちの整理をしつつ、これからの話運びを検討しているのだろうアーシェに代わり手を挙げる。首肯を返した徹吾氏は、()()()()()()()()()()()満足げな顔だ。


「常々【Arcadiaアルカディア】の技術全般イカれてると思ってたんですが、もしや――というかやっぱり、()()()()()()()()()()()()()()()?」


 即ち、現在仮想世界を運営していらっしゃる〝お一人様〟と同類的なアレなのかという質問に対して、彼は一度だけ瞑目すると――



 頷いた後に、首を横に振った。



 YesとNo。それが意味するところは……。


「今、あの世界を掌握している〝一人〟は運営者にして開発者だ――ただし、【Arcadiaアルカディア】の開発者は二人いる」


 つまり、片方はアレ。もう片方はアレではないと。


 答えが知りたいような、知りたくないような――我ながら形容し難い顔で見つめる先、四谷代表の口が開かれる。



「もう一人の名は、四谷よつや月人つきひと



 紡がれたのは、俺の知る限り()()()()()()()()()()()誰かの名前。



「私の息子であり……そらの、双子の弟だ」



 それは正真正銘――聞いたら後戻りはできないのだろう、秘密の一端であった。






「あの……いいですか?」


「勿論だとも」


「それはセーフなんです?」


「あぁ、勿論だとも」


 そっかぁ……ラインがわっっっっっっっっっっっかんねえなぁ……。






全部伏線です。

全部今は「???」でいいです。

全部忘れちゃってもぶっちゃけ大丈夫です(暴言)

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― 新着の感想 ―
[一言] アレと四谷月人はどうやって知り合ったんだろ
[良い点] そんなことよりゲームしようぜ! まさにまさに。 [気になる点] あのNPC群ってどう生成されたわけ? 連中のAI?は本当に生成されたものなのか、それとも………。 [一言] この海のリ○ク…
[一言] 月人…月かぁ… ソラちゃんに月に誓ってずっと一緒だとか言ってたよなぁ… というか主人公を気に入ってるもう一人の娘ってこれ…いやどういうことぉ?
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