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神を祀るは楔の王剣、世界が記すは二人の英譚 其ノ肆

「合体……?」


「とは、また違うかなぁ……?」


 ソラが零した呟きに『否』を唱えながらも、似たような表情で首を傾げる俺もそれ・・が一体なんなのかという答えまでは出せず。


 その行動も、それがなにを意味するのかも……前者に限って敢えて形容するなら、そうだな――()()()()()


 おもむろに『白』が自らの得物である大剣を圧し折ったかと思えば、光の粒子となったそれが瞬く間に欠損した『蒼』の新たな右腕となって納まり、


 対して『蒼』は自らの得物である双剣を『白』へと渡し、自らは俺相手に披露した徒手空拳の構えを続行――


「あの、ハル……」


「いや、うん、わかるよ。ただ()()()()()()だけってことは……」


 ないんだろうな――と、俺とソラの危惧を肯定するかのように、一対の【神楔の王剣(アンガルタ)】に更なる変化が生じる。


 宙を漂っていた四振りの魔剣が光に解けたかと思えば、再構成されるように現れたのは黄金の鎖。


 両端が『白』の右腕、『蒼』の左腕に巻き付いたかと思えば……〝戒め〟か、あるいは別の〝何か〟か、正体もわからぬソレは虚空に溶けるように姿を消した。


「「………………」」


 いや、わからん。何がなんだか全くもってわからんが……一つ、確かなのは、


「……私が、押し込みます」


「……オーケー、俺が留める」


 先程よりも、一層――〝連携〟を許したらヤバいだろうという予感のみ。


「『せーの』で行くぞ」


「カウント、お願いします」


 開戦時とは逆の役割。


 俺が足止めし、ソラが戦域を別つ。


「――3、」


 《ウェアールウィンド》起動。


「――2、」


 左の鎧拳を閉じて、開いて


「――1、」


 交わし合った視線に、恐れなど無し。


「――GOッ‼」


 鍵言と同時に揃って地を蹴り――二歩先んじた俺が後方へ左手を伸ばす。


()()えッ――」


「――()ッ‼」


 躊躇い無くソラがその手を取り、俺が〝投擲〟に踏み込むまで、互いに一切の躊躇ラグは存在せず。


 【仮説:王道を謡う楔鎧(アン=ル・ガルタ)】の強化によってステータス以上の膂力を発揮する左腕、そして暴風が追い風となって吹きすさび――


 砲弾の如く、少女が宙を奔った。そして、


「ッ――《三十連ドライシヒ》‼」


 おそらくは、さしもの鎧騎士ですら予測の利かなかった変則機動。瞬時に肉薄し、その手を白騎士の胸甲に押し当てた真なる〝魔剣の主〟が撃ち放つは、


 小さな身の丈を超える、砂塵の大剣の()()()()()()


 濁流に呑まれた流木の如く押し流された『白』を、当然のように『蒼』が追おうとして――その身に落とした影に気付き、兜頭を上げれば()()()


 よう蒼いの、腕は生えたが〝手〟は減ったな?


 そしたらコイツは――


「――受け切れるかなぁッ‼」


 《先理眼フェイタルリーク》起動――更に、頭の中で()()()()()()に拳を叩き付ける。


 両手に喚び出すは紅緋の小兎刀バレット、そして踏み切るは全力の、


「《空翔ロケット》ッ‼」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 初めから最高出力のみに想定を絞り、いまや三十秒以上先を見通す予知眼・・・と『記憶』のギフトを組み合わせれば――()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ……って、お師匠様が言ってた。


 さあ、無敵の剣聖様理論に文句がある奴は前に出ろ。いるか? いねえな?


 ならば披露してみせよう――()()()()()()()()()



 俺オリジナル、その名も無限《七星》、またの仮名を――



「――――《煌星きらぼし》ッ‼」



 踏み切った瞬間、全ての視界と音が消し飛んだ。


 一瞬七閃、一秒にて無数。


 ただ両腕から伝わってくる紅緋が敵を打つ感覚と、仮想脳に刻み込んだ記憶の道筋のみが技の頼り。


 もはや自分の腕が、脚がどう動いているのかも定かではないが――『やればできることはできるからやれ』がウチの流派のモットーなんでなぁッ‼


 踏み切ってから振ってるんだか、振ってから踏み切ってるんだか、十割わけわからなくなっているが効果が認められていればそれでヨシ。


 どれだけ視界が意味を失おうとも、やはりUIだけはプレイヤーを裏切らない。


 ()()()()()H()P()()()がゴリッゴリに削られていく様が、なによりもこの人外機動が『技』として成立していることを示して――


「ッ――――」


 超速機動に全ツッパした思考にノイズが走ろうとも、暴走するアバターは急には止まれない。全力の行使に痺れた頭が、突如の違和感に全力で警報を鳴らすも――


『――――――』


 掠れた視界に映る『蒼』を遮り、大きく広がった『白』い靄。


 そしてソレを上塗りするように、新たに生じた『攻撃予測線』の真紅が俺の視界を塗りつぶして、



 ――あぁ、もう本当に格好付かねぇ。



 次々に目の前に飛び込んできた不明な『危機』の全てを、最後に飛び込んできた金色が上書きした――――ので、《浮葉》起動。


 下手をしたら音速にも迫ろうかというトップスピードを、インチキじみたベクトル操作で理屈諸共に()()()()()()()


 鋲打ちされた【流星蛇の深靴ステイク・ブート】の靴底がフィールドを抉るような勢いで火花を取らして滑り――最後に俺を受け止めた相棒が床に剣を突き立てて、残る慣性を見事に散らしてみせた。


 そして、戻った視界。


 ソラの向こうに映るのは――双剣を振り抜く『白』の姿。



 状況も意味も何一つわからないが、またも確かな事実はただ一つ。



 やべぇ、いきなり超ピンチ――



耀かがやけ」



 しかしまあ、そこは自慢の相棒。


 いつも『とりあえず飛び込んでから考える』スタイルの俺とは違い、



「――【紡ぎ織り成す金煌の衣エクトゥルス・アウルム】ッ!」



 彼女の一手は、いつだって考え抜いた末の最善なのだ。






◇とある師弟の日常会話◇


「出力調整が効かず、壁や地面にぶつかってしまうのであれば」


「はい」


「そうなる前に、切り返し続ければ良いのではないでしょうか」


「はい?」


「加減ができないのなら、初めからしなければいい」


「そ、なん、は……」


「一から十まで、全力で駆けてしまいましょう」


「そ、れが、できるなら、そりゃまあ……」


「では、やってみましょう――できるまで」


「…………………………………………ハイ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ういういしい [気になる点] >あとがき …なんか「暴れ馬を乗りこなせない(泣)」と相談しに来たら「それなら戦闘機を乗りこなせるようになりましょう!」と言われたみたいだ…(苦笑) まぁ…
[良い点] お師匠様の笑顔、プライスレス。 なお、それにより起こりうる全ての事象については一切責任を負わないものとする。
[一言] >やはりUIだけはプレイヤーを裏切らない。 User Interface(ユーザーインターフェース)なのだけれども、ういさんに見えてしまって仕方がない(笑)
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