【Clown・Archive】
『お姫様から』
『アリシア様から』
『姫の呟きから』
『これ何枠???』
『チャンネル名‼︎』
『お姫様から来ました』
『突発が過ぎて戸惑い100%』
『お姫様から』
『姫から』
『アリシア様から』
『お姫様から』
『お姫様から』
『同接数えっっっっっっっっぐ』
――――――――……
――――――……
――――……
――……
◇◆◇◆◇
――とあるArchiverのミラー配信にて。
「はい、てことで急遽枠を取りました。弱小Archiverの照月でーす。元配信の方が色々とパンクしてるっぽいので、俺らはこっちでリアタイ語りしようぜーってね」
『わこつー』
『こんちゃー』
『枠乙。語り場の提供助かる』
『始まってもいない待機状態からコメの勢い異次元で草なんだ』
『会話どころか他コメ追うことすらできやしねえ』
「ほんとそれ、同接の桁見て笑ったわ。一万分の一でも分けてもらえたらトップ配信者になれるレベルっていうね」
『チャンネル名、そういうことだよな?』
『そういうことでしょう』
『そういうことだとしても何故お姫様が宣伝を……』
『曲芸師さん来るー?』
「ようやくの顔出しなんかねぇ。や、顔出すかは知らないけど――おっ!」
『!!!』
『きましたねコレ』
『うはぁ金かかってそうなオープニングよ』
『ざわ……ざわ……!』
――――……あ、あー…………どうも、初めまして……?
『ハイきたぁああああああああああ』
『曲芸師さんだぁあああ!!』
『最高峰のプロ演出からド素人めいた開幕グダッ!!!』
「い、やぁ…………もし自分がって置き換えたら震えるわぁ……初の配信で視聴者数がコレとか……うわぁ…………」
『配信者の立場からするとドン引きだよねぇ……』
『グダついてはいても一応は話せてる時点で大物っちゃ大物かぁ……』
『これ録画の後付け実況パターン?』
「ぽいね。にしても一人称視点か……ってか、この真っ赤な背景――」
――ハイ。ということで、今回は【螺旋の紅塔】の攻略視点を配信しようかと。
「ファッ!?」
『ふぁっ!?』
『ほぁあ!!?』
『待って待って待って頭も心も追い付かない』
『なにが「ということで」なんだ……???』
『進行雑過ぎて草ァッ!!!』
『淡々とメチャクチャ言いますねぇ!!』
――まあとりあえず見てもらえればわかると思うんですが、内容的には実況もクソもないんで……え、なに……タメ……? いやでも最初は謙虚なほうが……。
『なんか注文食らってね?』
『開始三十秒でテコ入れされてて笑う』
『スタッフついてる? まあ当然か』
『OPからして金かかってるかんなぁ』
『そりゃもうどっかと契約してるよな。スポンサーどこだろ』
――……えー、『もっとフランクかつ陽気な感じに振舞え』との無茶振りが入ったんで、不本意ながら初っ端タメ口進行で行くが許されたし。
「うわきっつい……」
『ガチで不本意そうな声で草生える』
『かわいそう』
『まあこっちのが曲芸師っぽさはある』
『曲芸師っぽさとは』
『そらクラウンよ』
――あ、てことで動画内の俺がそろそろ走り始めるけど、注意点が一つ。
『うん?』
『なんぞ』
『注意点とな』
「走り……?――――あっこれ」
――画面中央にマウスポインタなりなんなり……視点酔い防止の策を講じることを強く推奨する、ガチで。
『あっ』
『あっ』
『あっ』
『あ゛ッ゛……‼』
――――――……
――――……
――……
「ヴぉえ゛っ゛……!」
『マジ無理』
『吐きそう』
『死』
――とまあ、そんな感じです。
「い゛やっ……わかんないわかんない、意味わからんて……!」
『そんな感じってどんな感じ……?』
『途中から「床どっち?」って首傾げてる間に動画終わったんだけど』
『途中からというか開始一秒からというか……』
『なに一つ意味がわからんということがわかりましたねぇ……!』
『スロー再生……しても結局なにやってるのか理解できない予感』
『三人称視点くれよ』
『おそらく三人称でも理解不能だゾ』
『一人称視点だと思考加速スキルの効果が反映されるはずなんですが……』
『思考加速ナシ確定……? はぁ???』
『景色が百割ただの線だったんだけど???』
――ご覧の通り『意味わからん』って感想が大半だとは思うんだけど、
「大半というか世界中一人残らずだろ……」
『それはそう』
『よくわかってんじゃん』
『詳細解説の義務を果たしてもろて』
――『弾幕のパターンを全部覚えて全力疾走』が俺の攻略法なんで、見てもらった以上のコツとかそういうのは存在しないんだなコレが。
「なんて???」
『パターン全部覚える……?』
『誰か日本語に翻訳してくれるか???』
『日本語よりもまず地球上の言語に直してください……』
――あと一応、動画でやって見せたのは初攻略時のランを再現したカタチっす。当時は今と比べてスキルも乏しかったから、ほぼ素のAGIでゴリ押した感じ。
『やべぇなに言ってるか一つも理解できねぇ』
『なにをどうすれば素のアバタースペックで壁やら天井を跳ね回れるんだよ……』
――まあ攻略に関してはそんな感じで。
『どんな感じだよ‼』
『一ミリもわかんねんだって‼』
『説明責任ッ‼』
『照君、口開きっぱなしよ―』
「うるせぇこんなの口ポカンなるわ」
――なんでいきなりこんなアレな動画を配信したかと言いますと、
『よくわかってんじゃねえか!』
『本人もアレだと自覚していて何より……』
――近いうちにルビバレの角素材を市場に流してもらうよう知り合いに頼んでるんだけど、その素材がちょっと問題児だから注意喚起も兼ねてて、
「ふぁっっっ!!!??」
『なんつった!?』
『ルビバレの角???』
『【紅玉の弾丸兎】の角素材マ!!??』
――アレなんだよね。四柱戦争で短刀とか槍とかの面白機能をお披露目したと思うんだけど、その辺の特殊能力を使うにはちょっと条件があるんだよ。
「条件……」
『カラッドボルグ‼』
『えんれいかぐら‼』
『それさえ満たせば俺らにもあの素敵必殺技が使える……?』
『え、教えてくれんの? 情報公開の気前よすぎない???』
――まあその条件ってか資格の証明品になるのが、あのダンジョンの『単独踏破報酬』で貰える【螺旋の紅輪】っていう指輪タイプのアクセなんだけど。
「無理に決まってんだろッ!!!」
『ハイかいさーん‼』
『クソがよぉッ‼』
『必殺技は夢と散った……‼』
――あと悪いけど、こないだ『魂依器』に食われたんで現物が見せられない。
「はぁ???」
『なんて???』
『理解不能な爆弾情報しか話せない身体でいらっしゃる???』
――その辺については、チャンネルの説明欄とかに詳細をまとめた情報ページへのリンクを貼って……くれてるっぽいから、そっちを見てもらって。
「り、リンク……URL……」
――ついでに俺のステータスとか所有スキルとか全部公開してるはずだから、興味ある人はそちらもご自由にどうぞ。
「なんッ……」
『ふぁーwwwwwwwwwwwwww』
『やりたい放題でもう大草原よ』
『ここまで無茶苦茶だと笑うしかないんですわ……』
――なのでまあ、とりあえず今回突発的に配信させてもらった目的は、近いうちに素材を流すけど〝欠陥品〟だから購入は自己責任でよろしくって伝えることかな。愉快な兎装備を十全に楽しみたい場合は、単独踏破を頑張っていただいて。
「無理だよ?」
『無理です』
『無理なんだよなぁ』
――ちなみにルビバレの角が素で持ってる能力は『一定以上の速度下で耐久値がロックされる』ね。大体AGI:200相当の全力スイング中は耐久減らなくなる。
「………………」
『絶句で草』
『それ特殊能力無しでも軽戦士垂涎では?』
『爆売れ不可避』
『耐久減らない武器とかいう夢の狩り装備が作れる……?』
「俺ちょっとこれから金策ガチるわ。配信来てくれてありがとうじゃあね」
『えっ、おつ』
『有無を言わさず配信閉じやがったwwww』
『こういう自由なことしてるからいつまで経っても弱小なんだゾ』
『いやこれガチ。笑ってる場合じゃねえ100%争奪戦になるぞ』
『俺も金策しとこ……』
『じゃあ私も』
『なら俺も』
『軽戦士多くない?』
『結構プレイヤーいたのね……』
『ねえ資金いくら用意しとけばいいと思う……? 300メガで足りる……?』
『オークションになったらまず足りないぞ。ギガ用意しろ』
『ヒェッ』
『どこもかしこも阿鼻叫喚になってて笑えねぇなコレ……』
『これはクラウンアーカイブですわ……』
『で、元配信のほうもサラッと終わったわけだけど……』
『クレジットで流れた【四條】って、あの四條グループのことでOK?』
三章第二節、はりきって参りましょー