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更なる彼方へ

 ―――視界端で淡々と時を刻んでいたカウントダウンが、百秒を切った。


「っと、遊んでる場合じゃねえな」


 ミィナと一緒になって俺を弄っていたゴッサンが、我に返ったように真顔に戻る。いや本当だよ、出番だぞって呼ばれてからコントしかしてないんだが?


 ちなみにもう片方、赤色の方は制裁をくれてやったところ無事に大人しくなった。結構、暫くは相方の影そこで震えてるが良い。


「ほらよ、いけるか・・・・?」


 そう言って渡されるのは、直径一メートルはありそうな大きな巻物。受け取ればズシリと重たいそれを開けば―――ひら、開く……ひら、けばっ…!


「貸して」


 丸まったポスターを開くのとは訳が違い、展開に手間取った俺の脇から黒いグローブに包まれた手が伸ばされる。


 助けに入ってくれたテトラに礼を言いつつ、今度こそ巻物を開けば―――記されているのは、手遊びの落書きなんかとはレベルの違う複雑怪奇な巨大迷路の全容だ。










「…………先輩?」


 きっかり十秒。動きを止め、言葉も発さず食い入るようにマップを凝視していた俺にテトラが首を傾げて、


「―――OK・・覚えた・・・


「…………まだ、半信半疑なんだけど」


 顔を上げてサラッと言い放てば、片端を支えるままに少年は胡散臭いものを見るような目を向けてくる。


 無理もないだろう―――俺自身、つい最近自覚したこの『能力』の事を、死ぬほど胡散臭いと思っているから。


「よし、テストするぞ」


 俺の言葉に頷いたゴッサンが地図を取り上げ、此方へその背面を向ける。


「俺らの拠点から、そうだな……対面のヴェストールまでの道を答えろ」


「いや遠いっつの。えーと……」


 丁寧に解いてからでは無駄な時間を食うと思い、()()()()()()()()迷路のゴールをアドリブで目指しつつ、辿った順路を次々に口にしていく。


「右、右、左、左、右……で、ゴールだ」


 果たして結果は―――呆れたような笑みを零すゴッサンと、ドン引きと言わんばかりに引き攣った顔を見せるテトラの様子から推して知るべし。


「本当に、どんな記憶力してんの……?」


「いやぁ……リアルだとこんな謎技術持ってないんだけどなぁ」


 それは所謂、瞬間記憶や映像記憶などと言われる特殊な能力。それをどうも俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実が最近発覚したのだ。


 初めにキッカケ……というか、気付きをくれたのはお師匠様ういさん


 というのも正式に弟子入りしてからと言うもの、本格的に彼女から剣を教わり出してからの話なのだが―――どうにもこうにも、俺の技術吸収速度がおかしいとの事で。


 型を見て、覚え、再現する。そのプロセスを瞬く間にこなしていく様を見て、ういさんはとある仮説を立てて俺に実験を施した。


 ただ紙に書き殴った無秩序な文字の羅列を、一瞬だけ見て内容を覚える。という簡単なものだったが……結果、百文字だろうが二百文字だろうが、俺の頭は正確にそれを記憶し引き出して見せた。


 俺の頭というか、正確には仮想脳アウターブレインが、か。


 以前した、仮想世界に関する適性の話だ。俺のように「現実では持ちえない能力を仮想世界で発現させる」人間は前例があり、その能力は『才能ギフト』なんて気取った呼び方をされているらしい。


 つまりは畏れ多くも―――俺はその才能ギフト持ち、なんだとか。


「……良いぜ、文句無しだ。ブロック分けの数字も全部覚えたな?」


「当然」


「よし。お前さんにはその前提で指示を飛ばすからな、キビキビ動けよ?」


「了解。それじゃ、そろそろ……」


 気付けば、カウントダウンは残り十秒を切り―――そしてその瞬間、黒岩の迷路エリアにて無数の光柱が立ち上がった。


「おう、『柱』のお出ましだ―――予定通り、やれるな」


「あぁ、やれる。さっきの挨拶での無様は上塗りして見せるさ」


 口角を吊り上げた総大将が拳を持ち上げ……多くのプレイヤーが見守る中、その大きな右手に拳をぶつける。



 カウントはゼロに。



 さあ―――



「魅せ場だぜ、ぶちかましてこい【曲芸師ハル】」



「仰せのままに、【総大将】殿」



 踵を返せば、既に道は開け放たれていた。


 別れた人垣の間を、緊張と羞恥を捻じ伏せながら泰然を装って進む。


「【刃螺紅楽群パラベラム小兎刀バレット】」


 両手の指間一杯に喚び出した紅水晶の短剣ナイフを鳴らし、数秒だけ目を閉じて―――心の準備など、それで十二分。


 緊張を排する事が出来ないのは当然だ。しかしながら、覚悟に関してはこの半月でしっかりと固めてきた。


 俺はプレイヤーになって二ヶ月程度の新参者だが、


 同時に、東陣営イスティアの序列第九位【曲芸師】であり、


 序列第二位【剣聖】の『弟子』でもある。


 ―――覚悟と、そして自覚はここに用意してきた。


 堂々と胸を張れ、


 馬鹿みたいに格好付けろ、



 駆け上がり至ったこの場を―――心ゆくまで遊び倒せ!!



 一斉に投げ放った紅短剣が、星空を映す水路の上を真直ぐに飛翔していく。


 更に喚び出し、もう一度。


 更にもう一度―――そして、


「【愚者の牙剥刀ペイング・フール】」


 左手に喚び出すは、もう馴染み切った黒の小刀。


 トリガーを引く指に―――躊躇いなど、一片も無かった。


見さらせや世界・・・・・・・――――――《瞬間転速イグニッション》ッ!!」


 これまでも、そしてこれからも。


 ―――駆け出した脚は、もう止まらない。




――――――――――――――――――

◇Status◇

Title:曲芸師

Name:Haru 

Lv:100

STR(筋力):300

AGI(敏捷):350

DEX(器用):100

VIT(頑強):0(+50)

MID(精神):0(+350)

LUC(幸運):300


◇Skill◇

・全武器適性⇒万能ノ腕ガンダールヴァ Up!

《ブリンクスイッチ》

《フリップストローク》

《ガスティ・リム》⇒《ウェアールウィンド》 Up!

《エクスチェンジ・ボルテート》

欲張りの心得


・《リフレクト・ブロワール》

・《トレンプル・スライド》⇒《ブレス・モーメント》 Up!

・《瞬間転速》

・《浮葉》

・《先理眼》


・体現想護

・コンボアクセラレート

・アウェイクニングブロウ

・過重撃の操手

・剛身天駆

・兎疾颯走

・フェイタレスジャンパー

・ライノスハート⇒流星疾駆フローティングスター Up!

・奇術の心得⇒極致の奇術師 Up!

・削身不退 New!

・守護者の揺籠


・以心伝心


◇Arts◇

【結式一刀流】

飛水ひすい

打鉄うちがね

天雪あまゆき

枯炎かれほむら

七星ななほし

 ――――

 ―――

 ――

 ―

――――――――――――――――――

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― 新着の感想 ―
あー、なるほど。ブリンクスイッチ使えたのはそれが理由か…
[一言] 「今夜は、さ…………。伝説が蘇る夜さ……」 (HIGH SPEED DRIVING RPG並感)
[一言] 流星疾駆…名前がカッコいいような気がしたけどそんなことはなかったかもしれない。
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