首脳陣会議中
────お泊まり会の後日。
即ち、お馬鹿さんからトラウマの大きさ重さを共有された後の日。
「……ということで、今回ハルは留守番させる」
「聞いてはいましたが、そこまでのものでしたか……」
「ま、しゃあねぇわな」
場は南の集会場。四陣営を纏める『代表首脳』と言えばで知られる三人こと【剣ノ女王】並びに【侍女】および【総大将】が、常なる形で顔を合わせていた。
プレイヤーの代表たる『序列持ち』の内からも突出する代表。カリスマ云々だけではなく、智謀に長けるがゆえ信を預けられた姫が一人と大人が二人。
いつもいつとて、一体どんな叡智満点の会議が成されているのか……といったところが、過去も今も変わらない世間が向ける好奇心の内訳だが────
「アイツも人の子ってことか。可愛げあっていいじゃねぇの、なぁ?」
「ん」
「なぜ貴女が誇らし気に?」
「将来的な夫の〝可愛げ〟を誇ってる」
「うわぁ……」
「カッカ! 気が早ぇって坊主に引かれるぞぉ?」
「問題ない。今のハルは喜んで受け止めてくれる」
「わぁ……」
「いやぁ若けぇなぁ……おいヘレナ。いい加減お前も見習っ」
「は? なにか?」
「さって会議を進めるとするかぁ! なに話してたっけかなぁ!?」
実際のところ彼ら彼女らも『人の子』に過ぎないゆえ、世間が思うほど会話内容が常の如く浮世を離れることなどない。ほどよく穏やかに、ほどよく緩やかに、気を抜いて……誰かさんの心が溶かされた約一年前から、それは猶更のこと。
「私の王子様は留守番。それ以外の面子からパーティを組む」
「おいどうするよコレ。多分もう今日ずっとコレでいく気だぞコイツ」
「なにか問題が?」
「お前も引いてたじゃねぇかよ。急に全肯定すんなビックリするから」
アルカディアの代表攻略会議は、至極平和に進行していく。
────とはいえ、
「とりあえず、私は出るつもり。タイミング良く適性も上がったから」
「ま、それがなくとも」
「当然ですね。【銀幕】様から提供していただいた情報によれば、件の【青源の深域】は推定難易度〝無制限大規模戦闘〟級……序列持ち部隊を組んだとて」
「あぁ。舐めねぇ方がいいだろうからな」
じゃれあい、おふざけ、それはそれ。三人の『会議』が真剣かつ意味あるものであるという事実は、今へ至る仮想世界攻略の道筋が確かに示し続けている。
ゆえに
「ただでさえ絶対的にプレイヤー不利な水中ステージです。変化が生じて現在は攻略の道が存在するとしても、それが見えないことに変わりはありません」
「手探りになるぞぉ……? 水ん中への適正は勿論、馬鹿おっかねぇ環境で長時間フラつかねぇとならねぇんだからな。特別タフな奴じゃなけりゃ堪えらんねぇぜ」
「疲労や消耗に関しては、交代要員を充てて緩和したいところですが……」
「ん……水中適性持ちの絶対数が足りてない」
「お前さんの他には……まずパッと浮かぶのはリンネだな」
「えぇ、彼女は確定ですね。攻防共に要となるでしょう」
「そしたら相方を挙げたいとこだが、繊細技巧は水と相性が悪りぃ────」
「思い切って、メイを連れて行こうと思ってる」
「あぁー……そりゃ、成程」
「………………そう、ですね。手堅過ぎる択にはなりますが……」
「多分、オーバーレイド級だとしても私とリンネで火力は足りる。ダンジョンが直通で『青点』攻略にでも繋がっていない限り、ゲーム的枠内で用意された相手に通用しないということはないはずよ。……多分、きっと、おそらく」
「……それで、もし通用しない事態になれば」
「そん時、また考えればいいこったな」
「ん。────それから、感知系が一人必須」
「それだ。【糸巻】の嬢ちゃん……は、ダメか」
「〝糸〟と水中の相性が悪過ぎます。機能停止とまではいきませんが」
「あとサヤカ。支援効果による水中での活動時間延長も必須」
「リンネも『音』による疑似的な感知は可能でしょうが、それよりも攻守にリソースを割かせたい上に本人の適性問題が……その、少々、言いづらいことですが」
「あまり、よろしくない」
「………………最悪、ニアの嬢ちゃんでも連れて」
「だめ、流石に可哀想。精神安定剤なしで極限ホラー空間には連れていけない」
「んだよなぁ……ヘレナ。もうあれだ、お前さんが」
「戦場を退いて何年経っていると? もう悪巧み以外で役には立てませんよ」
「そうかぁ……したら、なんだ。とりあえずアイリス、リンネ、サヤカ、メイで四人。もう一人を感知系として…………最後の六人目は、やっぱソラか?」
「…………いえ、違う。感知系と広域殲滅火力は言い出した人に担当させる」
「うぉ、マジか。いやまあ、流石に今回は首を縦に振る、か……?」
「……全く手堅くない択ではありますが、道理ですね。では、最後の六人目は?」
「ん、決めた」
つらつらと、紆余曲折しながらも淀みなく連ねられた言葉の果て。
「幅広い意味で────【無双】に頑張ってもらいましょうか」
今日も今日とて、会議は決に行き着いた。
お師匠様? 火力は足りてるんで迷子の達人は留守番していてください。
道標皆無の水中行とか二秒ではぐれても不思議じゃないとアーシェは思ってる。
ちなみに次点候補はテトラ君とリッキー氏でした。残念だったな非モテ雲。




