アイハル配信中:Part.5
「……………………………………ん? ゲーム、マスター……」
『………………』
「え、GM? カラードモンスターが、アルカディアの?」
『……ん、ちょっと』
「ちょっと?」
『格好良い言葉を、選んじゃった』
「………………………………………………そっ、かぁ。選んじゃったかぁ」
『ん』
「ぁー……え、本当に今日どうした? 酔ってる???」
『正確には、ゲームデザイナーと言うべきかもしれない。これまでも違和感が見え隠れしてはいたけれど、今回の件で読み取れた情報諸々によって確信が近付いた』
「あぁ、はい。続けてください」
『皆も……考察勢も数多く挙げていた、仮想世界アルカディアの節々に見られるチグハグなメイキング。現実的な世界とゲーム的なロジックが違和感なく────とは到底のこと言えないような、違和感を多大に抱えながら共存している世界』
「うーん」
『浮いているのは、どちらか? ゲームでありながら必要以上に現実的な様相を形作られた……形創られた、世界の方? それとも……時として現実に勝るとも劣らないリアルを見せ付ける世界に根付く、どこまでも娯楽的なシステムの方?』
「うーん……」
『後者の方が後付けである────と、私は今回の考察で判断した』
「うーん…………?」
『つまり、仮想世界のデザイナーとゲームとしてのアルカディアのデザイナーは、別々であるという説よ。ただし、ある意味では同一でもあるのかもしれない』
「ごめん、わかりやすく」
『世界を創ったのが〝女神〟であるとして、ゲームを造ったのが〝御使い〟であるという説。つまり私たちプレイヤーを導いているのは女神ではなく五色の御柱』
「……………………どゆこと?」
『どういうことかは正直、わからない。私が思い至ったのは〝構造〟であって〝事情〟じゃないから、あくまで読み取れた形を語っているだけよ』
「…………わ、わかった」
『ふふ、わかってない』
「また後でアレコレ聞いて理解できるよう努めますの未来系」
『……個人授業? いくらでも』
「続けてくれたまえ」
『ん……まず始めに、アルカディアをプレイする中で名前だけは頻繁に見聞きする〝女神〟という存在。結局のところ〝なんなの?〟と思っている人は多いと思う』
「多いというか、一人残らず全員では……ぁ、続けて?」
『そう。もうずっと、アルカディアというゲームのサービスが開始してから今に至るまで、私たちの前に〝女神様〟が直接的に姿を現したことはない』
「まあ……神様って、そういうもんでは?」
『そして、間接的にも』
「ん?」
『間接的にも、私たちは〝女神様〟に触れたことがないのよ』
「んん? いや、間接的には……」
『ある? そうね────たとえば、ゲームを始めたばかりの時。陣営を選択した私たちに祝福を授けてくれた、虚ろな光のようなもの?』
「おう、まさしく……あれは、流石にアレだろ。戦神様の語り掛け的な」
『アレ、多分だけど女神じゃない。戦神とやらでもない』
「ほぁっ?」
『月の女神様とやらでも、おそらくない。各陣営名の由来……イスティア様でも、ヴェストール様でも、ノルタリア様でも、ソートアルム様でもないと思う』
「え、じゃあ誰」
『というよりも、イスティア様たちなんて存在しない可能性すらある』
「え、世界設定の根幹否定???」
『違う』
「違う?」
『娯楽のための嘘を、不躾に読み解いて賢しらに考察しているだけよ』
「やだ、なに言ってんだかサッパリわかんないけど超カッコイイ」
『ん』
「ドヤ顔してないで続けてください。サッパリわかんねぇつってるだろ」
『むぅ……それじゃ、まずそもそもの話。既に〝女神〟は消滅済み、あるいは完全に力を失っており静かに世界を眺めているだけの状態にあるのではという話から』
「とんでも考察から更なるトンデモに乱反射して収集つかなくなってない?」
『失った、ではなく手放した、が正確ね。……と言えば、行き先はわかる?』
「…………え、俺に聞いてる?」
『ハルに聞いてる。仮想世界を創生した、神の権能の行き先は?』
「…………………………まぁ、カラードモンスター、か?」
『えぇ。相変わらず事情は知る由もないけれど、その可能性が高い。遥かな過去、何らかの理由で女神は五色の御柱それぞれに己の力を分割して授けた』
「ぇー……白。【白座のツァルクアルヴ】が、空間を司る〝境界〟の権能で」
『赤円が、おそらく生命を司る〝無限〟の権能。青点は時間を司る〝悠久〟の権能、緑繋は文明を司る〝盟約〟の権能。そして黒歪の…………〝刹那〟』
「あら、黒歪だけ……」
『予想はあるけれど、それは後で。他に関しても私が感じた方向性というだけ』
「まあ、それっぽくはある」
『ともかく、それぞれの〝力〟が神様の力であることを……私たちは識ってる』
「あるなぁ、覚えちゃいないけども知識が」
『そして、その力が更に────最終的に行き着く先も、私たちは知ってる』
「んー……それは何処?」
『世界』
「んん?」
『世界よ。仮想世界アルカディア』
「どういう……」
『カラードの討滅あるいは葬送が果たされる際、追加コンテンツという体でプレイヤーに還元される新要素。おそらくアレが女神から御使いへ、そして御使いから世界へと順に渡された……女神が手放すべくして手放した、神様としての全て』
「………………さっきも言ってたけど、手放した? なんのために?」
『ニアが、言っていたでしょう?』
「へ……? ニアが、なんて?」
『正しくは、翻訳で。ニアを巫女に選んだ神の御使い曰く……』
「………………」
『「〝神様〟は、自分で直接的に手を下しちゃダメ」────って』
「………………………………」
『つまり、私たちプレイヤーの〝ゲームプレイ〟とは』
「……………………………………………………」
『とてもとても気の長い……────神の力、その引き継ぎ作業なのかも』
「…………なんのための?」
『ふふ……さぁ? 来たる時に来る〝なにか〟のため、かしらね』
壮大になってきたなぁ(白目)




