アイハル配信中:Part.4
『それじゃ……まず根本の前提として、五色の御柱に連なる【黒歪のヒュプノニクロ】と〝黒〟は別存在。これを間違えると全ての考察が滅茶苦茶になるから注意』
「多分、それも聞いたんだろうな。覚えてないけど知ってる感」
『ん。はっきり区別するために、これから〝黒〟は〝敵〟に統一する』
「了解。シンプルでヨシ」
『別に、ハルが格好良い名称を考えてくれても構わな』
「 シ ン プ ル で ヨ シ だ 。 考察を続けたまえ姫様ほれはよ」
『ふふ……────そして私たちに許された〝知識〟と、攻略後ニアが二代目緑繋から通訳してくれた昔話。【勇者】と【王帝】、そして【賢者】と【聖女】それぞれが、一刻を争うように……恋を捨て置いてまで、成した事柄を併せて考えれば』
「うん」
『第一幕と第二幕。どちらでも現れた〝敵〟は、まさに世界の敵』
「うむ」
『恋する乙女の敵でもある』
「うん?」
『ニアが怒るのも無理はない』
「脱線してるぞ姫様」
『私たちがアレについて識っている情報は、現在の黒一色で不気味な姿は【黒歪のヒュプノニクロ】が何かしらの〝封印〟を施したゆえのものであるということ』
「復帰が早ぇーんだ」
『その上で原初の四塔と呼ばれる過去の英雄NPCたちが、各々の存在を賭して件の〝界〟へアレを封印していたらしいという事実。神々と英雄による二重策』
「ニアがラスト手前でメッチャ怒りながら語ってくれたアレな。視聴者諸君にも聞いてもらったやつ────【賢者】様の構築した人柱による儀式封印」
『ん。……詳しい内容は、わからないけれど』
「まあ、碌でもないってのだけは理解できるわ」
『ん……ともかく、その二点からだけでも察せられる事柄は一つ』
「ふむ」
『〝敵〟は仮想世界にとって、神もヒトも問わず、犠牲を支払うことを厭わず、徹底した対処を断行するだけの理由を持つ存在であるということ』
「仇敵、的な」
『えぇ。仇敵、的な』
「んじゃ実際、アーシェ的にツッコんだ予想としては?」
『そうね……ありきたりだけれど、侵略者、とか』
「うん。まあ、他に何があるって聞かれても思い付かんけど……」
『逆のパターンも、可能性がゼロではないけれど、ね』
「逆?」
『神々とヒトの方が、侵略者という説』
「ぁー……むしろアレが先住民だった可能性…………」
『ゼロではないというだけで、ほぼゼロだとは思う』
「その心は?」
『乙女の敵は必然的に悪だから』
「割かしダメなタイプの私情じゃねぇか」
『あっちが悪いに決まってる。ビジュアルも全体的に気持ち悪いもの』
「おい大丈夫か【剣ノ女王】様。深夜テンションでキャラ壊れてな」
『真面目な理由としては、そもそもアルカディアの大地……【隔世の神創庭園】が初代緑繋の御神体であるという点。もっと原初の成り立ちが在った場合は覆るけれど、それを〝始まり〟とするのであれば先住者は間違いなく神々とヒトの方よ』
「……もう切り替えにはツッコミ入れんぞ。持ちネタにする気だろソレ」
『〝敵〟については、ひとまず以上で区切り』
「無表情とドヤ顔とで差分の違いミリ過ぎない? 誰が見分けられるんだよコレ」
『ハル』
「なんすか」
『あなた』
「え、あぁ、いやまあ確かに俺は気付けたけど八割がた勘────」
『それじゃあ、次。立場の予測的な仮設定が終わったところで、本格的に歴史的な視点へ移る。いつから〝世界〟と〝敵〟は、戦っていたのかという考察』
「やりたい放題が過ぎるな今日どうした。本当に大丈夫かこれ……」
『ハル』
「なんすか」
『アルカディア世界の暦、覚えてる?』
「うん? うん。〝天歴110966年〟……じゃない。今は110967年か」
『残念、不正解』
「ありゃ? え、いや、でも確か……」
『ゲームとしてのアルカディアが始まったのは十二月だけど、世界としてのアルカディアが年明けとしているのは現実世界の四月よ。まだ一ヶ月以上も先』
「おぉ……っと? それは知らなんだ、つまり……」
『まだ110966年で合ってる』
「十万年分の一年とか誤差だろ。正解で良いのでは」
『ダメ。後で罰ゲーム────それは置いておくとして』
「おいなんだ罰ゲームって置いとくな聞いてねぇぞ」
『これまでは嘘か真かで二分されていた説だけど、今回の攻略……私たちが実際に体験した異常事態を踏まえて、大きく〝真〟の方へ傾いたと思うの』
「聞いてねぇな、そうですか…………ぁー、嘘か真か……えー、あの、あれか。あれだよな────『十一万年とか無駄に盛り過ぎだろ草生える派』と『時間加速技術によるガチシミュレーション有り得るだろコレ派』についての話か」
『それについての話』
「んー………………………………………………まあ、うん」
『第二幕で私たちが経験した加速倍率は、おおよそ数十万倍』
「…………うん」
『適当にキリよく十万倍と設定するとして……ほんの十万年程度の歴史を実演構築するのに必要な時間は、たったの一年と少しよ。とても現実的かつ容易』
「…………………………うん」
『怖い』
「怖いなぁ」
『百万倍なら一ヶ月強』
「もう何を信じていいのやらって感じになってくるわ……」
『そうね。────つまり、そういうことよ』
「どういうことよ。え、なんの話してたんだっけ?」
『歴史の話。戦いが、いつから始まっていたのか』
「あぁ……」
『そういうことよ』
「……………………あぁ……」
『本当に最初から、ではないにしても……おおよそ十万年くらい、続いていても不思議じゃない。長い時を────神の御使いが摩耗してしまうくらい、永い時を』
「…………………………うん。それが次のテーマ?」
『えぇ。進みましょうか』
「ついて来れてるか、視聴者諸君」
『頑張って』
「ちなみに俺は置いてけぼりだぜ?」
『ふふ……頑張って。────それでは、次』
「はいはい……よし来い」
『〝五色の御柱〟……私たちプレイヤーにとっての、ゲームマスターについて』
夜更かし配信、続行中。




