ハルソラ配信中:Part.3
────宣告通り、十分少々の休憩明けより暫し。
「あ、そろそろだな。ってことで、第二の試練【賢者】編」
現在の配信映像進捗は、西に座していた小柄な影の僕……つまるところ、一人称視点にて見上げるばかり巨大な『瓦礫竜』との戦いにならない戦闘中。
ソラ、アーシェ、トラ吉と共に床一面へ並べられた武器を手に取り、次から次へと叩き付けては砕かれての無為な努力を続けていた過去の俺。
その視界が、
────見 つ け た ぁ ッ ! ! !
脳裏へと直接届いた『声』を受け取り僅かに震えた直後。
────よし来いッ!
当たり前のように、逢瀬を喚ぶ喝采を上げた。それ即ち、
「こっから反撃開始ってな運びでございます、はい」
『????????????????????????』『え?』『は?』『え、なに』『どゆこと???』『ニアちゃん?』『え、ニアちゃん』『頑張って視てるのは知ってたけどwhat??』『ちょっと待て瞬間移動!?』『なにしたん今』『縮地ニアちゃん!!?』『空間転移……?』『オノ持って飛んできた!?』
不可避の祭りが、始まる合図ってなもんで。
視聴者諸君に宣言した通り、反撃開始こと事実上ニアの独壇場が幕を開けた折。当然のこと公開などしていない俺作『語手武装』もとい『語手想具』こと【序説:光差す藍の恋導】の転移能力を目にして、画面越しザワつく観衆。
その様子を、コメント群から読み取りながら。
「とまあ、そんな感じで。我らが【藍玉の妖精】様の拍手喝采大活躍を粛々と見守りながら……ソラさん、チラッと感想会でも開いとこうか」
「────っへ? ぁ、ふぁ、はいっ!」
これまた勿論のことアレ……──『初恋の結晶』について詳しい解説など出来ようはずもない俺は迫真のスルーをかましつつ、隣部屋の相棒へと話を振った。
なんか『え、待って???』だの『ねぇ状況解説は???』だの『ニアちゃんコレ一体なにしてんすか!?』だの『おい実況解説しろよ。してくださいよ何卒』だのだの文句が飛んできているが知ったこっちゃない。いや本当に。
そも持ち主ってか『担い手』たるニア本人からも「え、やめてください」と詳細解説NOの御触れが出てるんだ。『紡ぎ手』が勝手に話せることなんざ────
「あー、うるさいうるさいっ。『語手武装』の亜種です。ニアのです。ご覧の通りバッシバシ瞬間転移できます。あとは持ち主に聞いてください以上解散」
と、そのくらいが精々である。
「え、と、あの……?」
「あぁ、大丈夫。皆さん非常に物分かりが良くて至極平和な────」
『そんなぁ!』『ソラちゃーん!!! 相棒がテキトー言ってまーす!!!!!』『ご無体ここに極まれり』『こんな横暴が許されるのか』『亜種ってなに!!?』『テラーの亜種とは???』『バッシバシできちゃダメなもの筆頭なんだよなぁ瞬間移動ってのはなぁ!』『なに? スーパーニアちゃんになったってこと???』『ニアちゃんは元からスーパー定期』『ほなハイパーか』『ウルトラまで行ってそう』『えぇ……』『なに? クラウン様は関わるもの皆システム的にぶっ壊すギフトでも持ってんすか?』『なにがどうなってそうなって』『持ち主に聞けって貴方……』『聞けたら苦労しないんだよなぁ?????』────
「────うん。平和なコメント欄だ」
「は、はぁ……」
然らば『独裁曲芸師を許すな』だの『我々の声を天使にも開示しろ』だの、愉快な歓声を上げている暴徒諸君へアバターを介して営業スマイルを贈りつつ。
「では、その……か、感想会? ですか……?」
「というか、まあ適当にコレこの時について喋ろうというか」
揺るがず隣────十分休憩を経て復活……というか奮起を果たした相棒へ、マイペースを気取りながら努めて穏やかな声で絡みに掛かる。
それに対してソラさんはといえば、
「んん…………、……その、いつも思っていることなんですけど」
「うん」
「お、大きな敵と戦う時は」
「うんうん」
「……き、」
「き?」
「………………緊張、します」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「────そうだよなぁ!!! 俺も俺も!!!!!」
「な、にゃ、なっ、なんですかっ! お、思い付かなかったんです、特にっ!」
……とまあ、今しがた口にした『緊張』とは別の意味で緊張を継続しつつも、身動きが取れないもとい喋れないほどのガッチガチは無事に卒業済み。
なにが偉いって、俺がアレコレ世話を焼いたからというよりも自分で気合いを入れて立ち直った結果がコレというところ。己を自らの意思により奮い立たせて世界に挑むとか並の十五歳美少女には不可能案件、流石は俺の相棒だと感涙に足る。
そんでもって、そんな頑張る姿(声)が世の暴徒共に響かぬはずもなく。
手のひらを返し……た、わけではないな。まあ俺への親愛満点批難文言はヨシとして、瞬く間にコメント欄が『ソラかわ』に染まっていく様はチョロいの一言。
世界取れるぞコレ────と、冗談ではない冗談を脳裏に浮かべて震えながら。
「実際、デカいと普通に怖いよな。こんなこと言うと『嘘だろアンタ』とか言われるけども、怖いに決まってんだよなぁクシャッといかれたら終わりなんだから」
「くしゃ……ま、まあ、そうですね。はい」
「あと、的がデカいのは遠距離ならメリットだけども近距離だと単に地獄」
「そう、ですね……目の前一杯に、わーって広がると、その」
「その?」
「…………わーって、なっちゃいますし」
「かわいい」
「っ……!? な、なんですか! もう、なんですかっ……!」
本当に、中身もなければ特に意味もない、他愛の無い話を……────つまるところ、それ即ち多くの視聴者が求めているのであろう『ハルソラ』とやらを。
「いや、そういうコメントがほら。わーって流れてきてるもんだから」
「か、揶揄ってますよね! 揶揄ってます! 一生懸命、やってるのに……!」
「揶揄ってないよ。心の底から超可愛いって思ってるよ」
「それも『そういうコメント』ですかっ! し、仕方ないじゃないですか……! そんなすぐに落ち着くとか、あのっ、普段通り頭が回らなくてっ……!」
「成程。確かに頭が回ってないようで」
「なんっ」
「いつものソラなら、俺の言葉かコメントの言葉かくらいは読めたはずだもんな」
「へ、ぇ……────────ぁ、っ、ぅう……ッ!!!」
まあ、なんだ。このように。
「はは」
「な、なに笑ってるんですか! ハルなんて嫌いですっ!」
『ねぇナニコレ』『ハルソラだよ。知らんのか』『どうやら私はここまでのようだな』『致死量という言葉の意味は存じておられますでしょうか』『全力殴打で壁ぶち破って隣人とタップダンス』『喜劇だね』『悲劇では???』『砂糖海我撃沈』『誰か来てくれぇ!!! コイツらエスプレッソに沈めてくれぇ!!!!!』『おい衝撃の新情報と既知の限界糖度で挟撃してくんのマジやめろ』『ちょっと俺そこらでヒロイン探してくる』『来世の抱負に〝これ〟って書くわ』『天使のような美少女に好意と羞恥満点の声で「嫌いですっ!」って言われたい人生だった』
需要に対する供給を当てつつ……少々強引ではあるが、流石に拭い切れていない相棒の緊張を俺のノリに引っ張る形で解きほぐしつつ。
ほどほどゆるり、進行していくとしよう。
はい。ここから基本ずっとコレこのノリで進行するつもりらしいですコイツ。
視聴者諸君は大変に禿げ上がった、もとい盛り上がったことでしょう。
読者諸君に関しましては残り一話分、お付き合いしていただければ幸いです。




