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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第八節

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1066/1113

─────………………………………………


「────お疲れ様でございました。此度も、誠に天晴」


 ……と、傍に現れたのは【聖女】様だけに非ず。それまでは遠目に見守っていた騎士様も労わりと称賛を引っ提げて寄ってくるに至り、確定と見ていいだろう。


 これにて、北の『試練』は突破認定であると。


 トラ吉ではないが、確かに思っていたよりも苦労はしなかった。いや大変は間違いなく大変だったし、下手すりゃ『狼』だの『俺』だので事故っていた可能性も少なからず在った……が、まあ運が良かった・・・・・・のだと喜んでおいた方が良さそうだ。


 プレイヤーによっては、再現される何者かによっては。下手すりゃ事故どころではない詰みの状況が発生することも、在り得たかもしれないのだからと。



 然らば────


「…………ん、で?」


 疑問の声を零してみた俺だけではなく、自然。ケンディ殿も含めたパーティ全員の視線と注目が向く先にて、ゆらゆらふらふらと揺れ続ける御仁。


 北の【聖女】ことミルフィエさんが……。


 …………なんだろうか。その身を塗り潰している〝黒〟が晴れることもなく、かといって西の【賢者】様のように言葉を寄越してくるでもなく。


 重ねて、ゆらゆら、ふらふら、初めからずっと変わらず。のんびり機嫌良く鼻歌を奏でながら踊っているかのような彼女に、ただただ俺たちは困惑するのみ。


 で? こっからどうなんの? ────と、


「……変わらないな」


 一瞬、言葉遣いから誰の発言か読み損ねた。


 しかし、声音を聞き解けば間違えはしない。聞き慣れない口調で一言を零したケンディ殿を振り返れば、彼は『失礼』とでも言うように薄く微笑み、


「少々お待ちを。なにぶん、彼女は未曽有の気分屋・・・・・・・でございますゆえ……」


 状況に首を傾げている、俺たち全員へと向けた言葉せつめい


 懐かしむような、慈しむような……──少なくとも、まだ二十年も生きていない俺なんかには真似できないし読み取れない、そんな深い表情を浮かべながら、



「その気になるまで、暫し





















「──────────っ……、………………ぃ……ッ゛……!!?」


 何事か、更なる説明を続けようとした、その瞬間だった。


 いや・・わからない・・・・・もしかしたら・・・・・・何時間も前のこと・・・・・・・・。さっきのような、今のような、ずっと前のような、なにが、とにかく────


「落ち着いてください。心配はございません」


「っ……ぁ、あぁ…………」


 斯くして、一瞬の断絶・・を経て。ふらつくまま崩れ落ちそうになった俺の身体を、逞しく頼もしい騎士の腕が肩を持って支えてくれた。


 無意味な強がりを見せる気は起きず、素直に体重を預けて任せれば微かな余裕が舞い戻る────然らば、咄嗟に辺りを見回して遅ればせホッと一息。


 どうやら俺は三番目、おそらくソラとニアも同じように助けてくれたのだろう。二人は地べたに転がることなく、目を回したまま寄り添って座らされていた。


 アーシェとトラ吉は……流石の古参アルカディアンとでも言うべきか。目を白黒させて身体を揺らしてはいるが、俺たちのように倒れるまではいかない様子。


 そして……────さすれば、一体全体、何が起きた・・・・・のか。


 仲間たちの様子を確認するために視線を回した結果、理解が及んだ。



「………………………………………………跳ん・・……?」



 すぐ傍に聳え立つは、青……ではなく、赤に染まる〝楔〟が一柱。


 加えて、俺たちを抱く結界の外。長い道の向こう側に在る、かつて『城』であった瓦礫の様子も……間違いなく、俺の『記憶』に刻まれたソレと違っている。


 即ち、転移・・。状況を表す言葉は、それ以外に浮かばない────のだが、


「空間転移は、東……というより、東に対応する〝白〟の権能、のはず……?」


「ッ……つか、なんや、この、ごッッッつい疲労……! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、どないやっちゅうねん……!?」


 自力で立ててはいるものの、平気なわけではない模様。それぞれ揺れる声音で疑問を重ねたアーシェとトラ吉が口にした通り、意味不明が乱立している。


 理解不能。となれば、答えを求められる相手は一人しかいないので、


「ご推察の通り。ミルフィエの仕業・・……彼女の、力でございます」


 至近の友へと視線を投げれば、レスポンス良く求めた解が返ってきた。


「えー、と…………え、北なのに・・・・?」


 然らば、重ねての問い。アーシェが言っていた通り『空間』に連なる『転移』の権能は、東陣営に対応する【白座のツァルクアルヴ】の権能のはずでは……と、


「ええ。彼女の転移これは、アルヴ様の『空間』を渡る御力とは異なる理。事象として導く結果は似たものとなりますが、過程が違う……というよりも」


「と、いうよりも……?」


「場と場を繋ぎゼロにする『転移』には在り得ない、過程が在る・・・・・のです」


 ぶっちゃけ、続いた解答に俺は「なに言ってんの?」と【聖女】様ばりにフラフラふらつく頭でツッコミを入れ掛けた。が、それには及ばず────


「…………わかった。『空間』やのうて『時間・・』やなコレ」


「ご明察でございます」


 至極アホくさとでも言うように呆れ返った声音。至った思考を口にしたトラ吉が、頷き微笑んだケンディ殿より正答の丸を贈られた。


 んで、トラ吉も解に辿り着いたのであれば、


「過程……道程じゃなくて・・・・・・・経過を飛ばしたのね・・・・・・・・・。つまり転移ではなく、実質的には……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、のようなもの……?」


「重ね重ね、ご明察。稀人様方の思考の柔軟さ、幾度とて驚かされますな」


 当然のこと、我らが【剣ノ女王】様とて辿り着いて然りだろう。こちらもケンディ殿から感心と花丸を贈られるが、アーシェもアーシェで憮然とした呆れ顔。


 いやはや気持ちが理解でき過ぎて、肩を貸してくれている騎士様に「馬鹿じゃねぇの」ってウッカリ謂れなき八つ当たりしそう。馬鹿じゃねぇの。


 なんとなく薄っすら『何が起きたのか』は察せられたが、察せられたからこそ余計に理解が遠ざかった────時間操作・・・・? What???


 アクションに要する経過時間を飛ばすことで、結果的に『結末』だけを強引に引き寄せた疑似転移? 身体に襲い掛かった極度の疲労は、北から南へ迷路を横断した場合に俺たちが負うべきソレを一瞬で支払ったから??


 端から端まで、なにを言っていらっしゃる???



「ゼライ様の巫女・・……【聖女】ミルフィエにだけ赦された、神の真似事です」



 …………との、ことらしい。もう「そうですか」って顔しかできねぇよ。


 しからば、俺たち全員揃って「そうですか」ってな顔で振り返った先────



『──────…………



 神の御業とやらで、疲労を代価に……元より俺たちの支払うべきコストであったと考えれば、実質的には一切の代償なしに空間の対極へと送り届けてくれた者。


 北の【聖女】が、幼い少女の如く、無垢に笑んでいた。


 嬉しそうに笑んで、そのまま。


 上から下へ、深度を増しては色濃くなる海のようなグラデーションを描き、仄かな光を纏う美しい青髪。その水面に映る満月のように、丸く大きな銀の瞳。


 東の【勇者】と西の【賢者】に次いで三度。一目でも見れば、鮮烈に。目蓋と記憶に焼き付く姿を披露したかと思えば……────


 物言わぬまま、何も存在しなかったかのように、消えていった。







 ────とある遥か過去の情景────


「信じらんないんですけど男どもめ。普通、麗しい乙女を夜中に追い出す?」


「えへへ~」


「レべ君もフォルも甲斐性なし甚だしい! なんなのかな!? ねぇミルフィ!」


「んふふ~」


「あれ、え? もしかして酔ってる? え、ミルフィもレべ君の宝物庫ガサゴソ・・・・した? え、いつの間に全く気付かなかったぞ、やりおるなコイツ……」


「んじゃなくってぇ、あたしはアリスと二人きりも好き~」


「お、なんだ。なにかな急に。そんなふわっふわに媚びて私が惚れるとでも」


「二人っきり~、真っ暗な夜道~、お散歩のんびり~」


「惚れるとでも────」


「好きな人となら『えへへ』『んふふ』ってなっちゃうよね~」


「んっもーぅ! 男どもなんて放っといて私らで結婚するかぁー!!!」


「うぉお~熱烈ハグぅ~……」


「もうレベ君はね! あの口悪粗暴朴念仁帝王は処置ナシお手上げしゃあなしとしてね!!! もう、この……ッフォルぅ‼︎ どうなってんだフォルぅッ‼︎」


「アリっ……、……アリ、ス~……っ、首、取れ、ちゃう~っ……」


「私ですらウッカリ押し倒しちゃいそうになるんですけど‼︎ 女の私ですら! この甘々ふわふわ好意全開【聖女】様!!! そんなえげつねぇモンスターから日々怒涛のアプローチを受けて何故に堪えられるッ!!! え、本当になんで!?」


「フォルフォルは、フォルフォルだからねぇ~」


「そういうフォルフォルだから好きになったんですって話ですか!!!」


「んへへ~」


「ぁっほんと可愛いなコイツえっ仮にソレその超絶にへら顔とか見せてもフォルはフォルフォルを維持してんの? え、フォルって本当に男? どうなってんの?」


「そもそも、あんま、あたしのこと見ないからねぇ~」


「見なさいってば!!! あたしのミルフィこんな可愛いでしょうが!!!!!」


「あたしが勝手に、くっ付いてるだけだし~」


「くっそ単純にソレは羨ましい……! くっ付くの許してくれるだけ馬鹿レベより点数高い……ッ! あーあー南の暴君様もフォルの一割くらい可愛げあればなぁ! ほっぺにチュー程度のことで即ガチギレですよ照れ屋さんめ!!!」


「レベベンは~、やきもち焼きだからねぇ~」


「はぇえー? なー、えー、やきもち? 何に対して?」


「アリスにチューされると~、誰にでもしてんだろーって思っちゃうんだよ~」


「してませんがぁ!!? 男の人には基本してませんがぁ!!!!!」


「それを言ってあげないからさ~、勘違いしたままなんだよねぇ~」


「 そ ん な 面 と 向 か っ て 素 直 に ア レ コ レ 言 え た ら 酔 っ た フ リ し て チ ュ ー な ん て し な い ん だ よ な ぁ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」


「アリス~」


「なによっ‼︎」


「夜道の近所迷惑勇者様ぁ~」


「ごめんなさいっ……‼︎ うぅー……ミルフィぃー……!」


「よしよ~し、今日は女子会しよぉね~」


 ──────────────────




 『原初の四塔』の〝アリスティア〟と〝ミルフィエ

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― 新着の感想 ―
頼むから外伝を!
2025/12/29 09:43 しおりすぐ失くす読書好き
匂わせムーブしすぎでケンディ氏の謎が深まる…これ他のNPCだったらどうなるんだ
え、いや、ほんとにマジで外伝読みたい。ちょっと気になリすぎるかもしれない
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