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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第八節

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私は〝恋〟と、詠み続ける


「────『王鍵を導くアンサー代眼の賢頭キングス』……あ、さっきの〝頭〟のことな? あれが弱点と言えば弱点なのは、まあそうなんだが、それだけじゃなくてだな」


「っ……!」


 ゆらり、悠然と。いまだ紅に瞳を染めるハルが歩み、双腕の消失と共に地へ転がされた剣……その一方、精緻荘厳な白金の大剣を拾い上げた。


 斬り込めなかった、理由は一つ。……否、二つ。


「ぶっちゃけた話『王道を拓くアンガー白金の双腕トラムズ』……〝腕〟の方も含めて、()()()()()()()()()()()()()()、なんというか……弱点ってより、面倒の具現・・・・・?」


 好奇心。


 そして、恐れ。


「アーシェには俺の体力、全快に見えてるだろうけどさ。実は今、H()P()()()()()()()()()()()()()()()。回復不能のデバフってやつだ。それが解放形態の代償」


 言われて注視するも、ハルの頭上に表示されるステータスバーに異常は無しの全快状態。成程、削れているのは上限であるから、こちらにはメーターが満タンに見えていようとも内訳が十分の一まで減っているということだろう。


 ……それで、それがどうしたというのだろうか。他ならぬ【曲芸師】にとってHPが十分の一に制限される程度、()()()()()()()()()()()はず────


「つきましては、俺の《鍍金の道化師クラウン・クラウン》と非常に噛み合いが悪くてな。【真説:王鍵を謡う契鎧(アン=レ・ガルタ)】の方をガッツリ運用すると、王冠・・が出せなくなるんだわ」


「……、…………なる、ほ、ど……?」


 それは……それは、どうなのだろうか。


 確かに〝自傷無効化〟の権能は無法中の無法。『特大のデメリットを以って特大のメリットを呼び込む』という強化法が大体の場合は存在するゲームにおいて、彼の特殊称号『曲芸師』が誇る強化効果は甚大と言って差し支えない。


 例えば装備。一瞬で死に至るようなダメージをデメリットに設定してしまえば、生じた莫大なリソースを用いて馬鹿げた支援効果を付け放題。


 控え目に言って、ハルのようなプレイヤーに渡してはいけない類の権能である。


 ……けれども、それを踏まえても。


 〝自傷無効化〟の権能が機能を停止したところで、幾らかの手札が使えなくなるだけ。たったそれだけのデメリットを呑み込めば許容されるほど、


「………………──」


 彼が新たに得た『真説』の力は、生半なものではなかった。


「……、………………………………」


 生半なものでは、なかったけれど────冷静になって、思い至る。


 まさしく、先の戦い一幕を。……その、終盤を。



 自分たちの戦いに、最終的には、ついて来れなくなっていた、鎧の様子を。



デメリット・・・・・。納得していただけたか?」



「……ん」



 それは至極、当然のこと────あの鎧は・・・・ハルより・・・・弱いのだ・・・・



 手数を増やす? 誰よりも速い【曲芸師】の舞いに、本気とあらば追随できない〝腕〟二本が加わったところで、一体なんだというのか。


 膂力を頼る? まだ一度のみとはいえ、他ならぬ剣の閃で以ってアイリスの『剣』を打ち破った本人の火力で十二分ではないか。


 知れたこと、最早なにもかもハルには足りている・・・・・



 自らの命と手札を削ってまで、ただのお荷物・・・を呼び出す意味がない。



 然らば、在る。その〝意味〟が────『顕現解放』……語手武装テラーアーマメント共通の真なる力を顕現させる言の葉をも、前座とした何かが。


「……さぁ、それじゃ、見とけよアーシェ」


 空間に揺蕩う黄金の燐光が、集う。


「────こっからが、本番だ」


 主の掲げる、その『剣』へと。




鍵 願 解 放・・・・




 世界が知らない、次の景色。


 竜巻の如き黄金の奔流。砕けて転じた鎧の光が、その魂に内包する真なる姿を容成すように、彼の手に在る大剣の刃を眩い金光で満たしていく。


 ────それは、いつか見た金色。


「……、っ……!」


 しかし、過去の記憶ソレをも、呑み込んでしまうほどの燦然たる輝き。



「──……『星架の名を以って』」



 拍動。



「『いま此処に、王威を示す』」



 鼓動。


 その最中で。




「世界を拓け────【永朽に輝くアンヴァー星彩の王剣レグルス】」




 不遜にも世界を照らすが如き、黄金の『剣』が産声を上げる。


 ────そして、彼は。



 あぁ、あなたは。



「……………………お、なんだよ。見惚れてんのか? 気合い入れろ気合い!」


「……、っ…………────っふふ……ふ……!」



 いつもの、あなたで。私を笑わせてくれるから。



「……ハル」


「おう」


「……────愛してる。やっぱり、あなたが私の王子様」


「──────……、…………か、カメラさん。今のとこカットで……‼︎」



 私は一生、あなたに〝恋〟をするのだろう。






 ──────然して、大晦日。年の暮れる、賑やかな祝いの夜。


 待ち侘びた祭りの開幕を怒涛の〝熱感〟と〝熱甘〟にて埋め尽くされたゆえ、阿鼻叫喚の騒ぎで端から端まで満たされた世界を他所に置き……。


 白銀と黄金の『剣』は高らかに、心ゆくまで、逢瀬を重ね続けた。







◇評価値の更新が認められました◇


◇称号の更新が実行されます◇






アレやコレやの説明なんか後でいいでしょ。

今は最強馬鹿ップルの心だけ読んどいてください。

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― 新着の感想 ―
この詠唱、アルカディアと…………!(エモさに消滅する音
『心を攫われた、あの日より』 『芽生えた想いを、何度でも』 『私は〝恋〟と、詠み続ける』 このサブタイ繋がって読めるのめっちゃいいわ
初戦で戦った時に主に使った武器を使用してのリベンジって部分もいいなー
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