表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
尊き君に愛を謳う、遠き君に哀を詠う 第七節

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1000/1032

Let there be light


 ────『魔工』術式、起動。


「……魔工作業用の姿ハルちゃんじゃなくて、いいのー?」


「今その絵面で、お前が構わないなら俺はどっちでもいいんだけどな」


 もうすぐ、サービス開始から四年が経とうとしている今に至り。


 アルカディアの総合的制作基盤概念たる魔工技術、その出来栄えに関して魔力の多寡は一切関係ないと膨大なデータから結論が出されている。


 魔工師が誰しも精神(MID)ステータスにポイントを積み上げているのは、単に作業に注ぎ込むMPを確保するため。そして気分的なゲン担ぎ程度に過ぎない。


 そう、結局のところ、大事なのは気持ちソレ


「いいから、見とけよ」


 技術も、才能も。魔工これに関しちゃ恥ずかしながら、俺は甚だ凡庸だけれど。



「今なら────感情リソースありったけ、籠められるからさ」



 この仮想世界せかいは、現実世界よりも余程、人の心を〝力〟にするから。



 静かに真っ直ぐ見つめる藍玉に、生意気な顔した俺が映っている。そいつは一層、人の気なんか知らないような様子で無邪気に笑いやがって────



 他でもない彼女から……──【藍玉の妖精ミルマリナス】から受け継いだ青く蒼く藍い光が、燦然と輝き空間を満たす。時を経て変遷した、その〝容〟は、



「…………星」



 ニアが手元で自由自在に操る精緻の極みパズルとは、似て非なるモノ。もっと大雑把に、もっと破天荒に、どこまでも果てなく広がるかのような────


「プラネタリウムだー……」


「ま、実力に関わらず無駄に壮大な感じは俺っぽいだろ?」


 幾重にも交わる藍の光輪、無数に浮かぶ白い星点。


 寄り添い合って形作るは……ひどく大袈裟で、粗削りで、みっともなくて、けれども否応なく目を奪われるような、燦然と輝く天体軌道図。


「ニア」


「……はい」


 さあ、その中心で。



「好きだ」



 あの日の答えを、今キミに。



「……っ」



 重ね合った掌の上。仄かな光を放ち続ける腕輪ブレスレットに、光点が宿る。



「目が好きだ。藍色こっち緑色あっちも、どっちも綺麗で、いっつも落ち着きなくあっち見てこっち見て、いつもいつもキラキラしてる。いつもいつも、見てて眩しい」


 いくつでも、


()()()()()()()()()()()()()()()()。お前の言葉こえに、ずっとずっと助けられてきた。支えられてきた。……音でも、文字でも、いつだって、()()()()()()


 いくらでも、


「それから……なんて言うかなぁ────心が、好きだ。俺のことを好きになってくれて、不器用だけども一生懸命で、ずっと健気で、たまに生意気で、稀にムカつく感じも……まあ、そこはお互い様ってか、そういうところも本当に、全部さ」


 尽きるはずなんてないから、いつまでも。



「────俺、ニアのことが大好きだよ。もうどうしようもねぇ」



「────……っ!」



 俯かない。俺を見つめ続ける宝石ひとみが、ささやかに形を歪めて雫を纏う。



 胸に衝撃。視線を下げればゼロ距離に藍色。


 重ね合わせていた手は繋がり合って、お互いの身体の間。引力に逆らうことなく自然と絡め合った指の隙間から、拍動を強める〝光〟が差す。


「………………」


「……、……っ」


 愛おしい呼吸の音を聞きながら、目前の頭頂。他に眺めるものもないので可愛らしい旋毛つむじを眺めていれば、困ったことに俺まで視界がぼやけてきた。


 ────術式制御? 知ったことかよ。



 特等席で〝恋〟を叩き付けてやってんだ、勝手に腹一杯になりやがれよと。



 暴挙も暴挙。仮想世界中の『紡ぎ手』を夢見る魔工師たちに呪われても仕方ない……けれども、これでいい。これ以上は、きっと俺にはできないだろうと。



 確信を以って、代え難い熱を抱き続けて、その時が来る。






 ◇特殊称号を獲得しました◇

 ・『伝承の紡ぎ手』



 簡素も簡素、いっそ素っ気ないまでのシステムメッセージが一行だけ。


 視界端に流れた時には、既に光が止んでいた。


「…………ニア」


「…………」


「ニアちゃんや」


「…………ん、……うん」


 空いている片手で頭をペフペフ。


 さすればニアは、人の服で盛大にグシっと顔を拭った後に身体を離して、



「「────……」」



 二人一緒に、繋いでいた手を開いたならば。



「……………………っ、ははっ……! ぁー、恥っっっっっず」



「………………ほんとだね。キミ、どんだけニアちゃんのこと好きなのかな?」



 その瞬間。


 理解した『結果』に二人揃って、一周回って気の抜けた笑みを零し合い、


「まあ、そうな…………こんくらい・・・・・?」


 俺は、掌に在る紛れもない我が作品を。新たに仮想世界へと生まれ落ちた『語手武装テラーアーマメント』────否、どうも違う・・らしい。


 武装ならざる、その名も『語手想具テラーオーナメント』を指して宣えば、



「………………────ずっと・・・傍にいろって・・・・・・?」



「願わくば」



 ニアは、わざとらしい苦笑い一つ。


「……さっきも、言った通り」


 藍と白、二本のラインを一本の赤い糸が紡ぐ、揺れる光を湛えた小兎の姿を宝飾に頂いた腕輪ブレスレット────【序説:光差す藍の恋導(メレ=ア・ルミナ)】を握り締めて。



「キミの頑張り次第、だよ? ────ハル君」



 俺を落とした笑顔でまた、何度でも俺を魅了するんだ。








愚かで尊き恋の道行きに、光あれ。


1000話 おめでとうアルカディア。

10/31 Happy birthday ニアちゃん。






といったところで五章第七節、これにて了といたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
祝1000話&ニアちゃんおめでとう!!!
おめでとう!おめでとう!!
祝1000話目
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ