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不思議探偵:山本小夜子の災難

【登場人物】

小山圭一:幼児期に義父から凄まじい虐待を受け瀕死の

状態から生還。それ以来、幽霊に触れたり話す

事ができる。現在はその能力を活かし手塚詩織

のもとで小銭稼ぎをしている。


手塚詩織:父が経営している個人経営のクリニックに務め

ている。小山圭一を雇い、知り合いや口コミ

のみで普通では解決できない事件を個人的に取

り扱う探偵業のようなものをしている。


山本小夜子:今回の依頼人。

圭一の隣町の私立学校に通う成績優秀な

美女。以前いた学校で周りの女生徒達

から執拗な嫌がらせを受けそのストレスで

人間レーダー的な能力が身についてしまう。

会ったことが無くても自分に強い意識を向け

ていたり、一度会ったことのある人間なら半

径100m以内ならどこにいるかわかってしま

う。



山本小夜子は下校していた。いつもの帰り道、下に車道が通る橋を渡ろうとしたら目の前にどこの学校かはわからない制服を着た女子生徒が柵の上から登り飛び降りる瞬間を目撃してしまった。あっという間だった。

「あぁーーーーー!!」

と大きな声をあげ、驚き走って橋の下を覗こうとしたら4mくらいの高さの飛び降り防止柵に思いっきり顔をぶつけた。

さっきはこんな柵無かったのに…。

と不思議に思い柵の隙間越しに車道を覗いてみると地面には叩きつけられた女子生徒どころか何も無かった。

幽霊など人生で一回も見たこともなく気味が悪くなった山本小夜子はそのまま後ずさりし、家に向かう進行方向に身体全体を向けた瞬間さっき飛び降りた女子生徒が自分の鼻先20cmくらいの目と鼻の先に立っていた。

飛び降りる前とは違い顔も全身も血まみれだった。

その真っ黒な瞳は山本小夜子の目をジーーーーッと覗き込んでいた。

山本小夜子は金縛りにあい、しばらく動けなかったがなんとか金縛りが解けた瞬間一目散に走って逃げた。

必死だった。

家に帰りお風呂で髪を洗っていると背後が気になって仕方がない。

ソワソワしながら髪をなんとか洗った。

ベッドに入ると今日会ったことは全部忘れようと思った。

なかなか寝付けなかったがなんとか寝た。

しかし夜遅く突然呼吸が苦しくなって目が開いた。

身体が全く動かない。

金縛りなど久しぶりであった。

しばらくすると自分の部屋のドアを何度もしつこくノックする音がした。

次第に音は大きくなりドンドンドン!!と叩きつけるような音に変わっていった。

怖くて目をそらし続けた。

しばらくすると叩きつける音がピタッと止んだ。

不思議に思いドアの方に目をやった。

見るとドアノブが勝手に回りだしドアが開いた。

山本小夜子は怖くなって思いっきり目を瞑った。

自分の中ではとても長い時間がたっていた。

目を瞑っていたが手が動くようになったことに気づいた。

思い切って身体を起こしドアの方に目を開けてみる。

ドアは開いてなかった。

ほっとして寝直そうとした瞬間、天井に貼り付けられたようにあの血まみれの制服姿の女生徒が虚ろな目でこっちを見下ろしていた。

そこで山本小夜子は意識を失った。


小山圭一は手塚詩織の連絡を受け、電車で山本小夜子の自宅へ向かっていた。先週の件で半分冗談交じりでなにかあったら連絡しますと言っていたのでもう何か起こったのかと心配になった。

山本小夜子は一昨日から学校を休んでいるようだった。

昨日、詩織のスマホに山本小夜子からメッセージが残されていたらしい。

圭一は何があったのか教えてほしいと詩織に聞くと、どうも以前別の件で圭一が関わった依頼で血まみれの女子生徒の幽霊が関係しているらしいとわかった。

圭一は学校が終わってすぐに山本小夜子のもとへと向かった。

最寄り駅に着くと山本小夜子の家までスマホのナビを使い歩いていった。

途中、下に車道が走っているとても高い柵を設置された橋を通った。

ここの橋は以前に圭一が市からの依頼で柵の建設に協力したところだった。

市はあまりにも自殺者が絶えなかったのとホラースポットとして夜中に動画撮影しようとする野次馬が増えて近所迷惑の苦情を受けていた。専門の霊媒師にお祓いをお願いして工事を執り行おうとした。。

しかしお祓いは終えたのだがいざ工事を始めようとするとどの工事業者も仕事に取り掛かろうとすると事故が頻発した。

そして最後に工事現場の担当の建設会社の社長から塚田詩織に依頼が来た。

圭一が現場を見た感じではお祓い自体は成功し地縛霊もほとんどいなかった。

工事を始めようとした瞬間全身が血まみれの女子生徒の幽霊がどこからともなくやってきて、あたりの浮遊霊を引き寄せ工事の邪魔をしていたようだった。

地縛霊のハズなのに行動範囲が広かったので圭一は不思議に思った。

圭一が現場に一緒に入り工事が始まった。

少々強引だったが圭一が橋にいる地縛霊の女子生徒と数十体の浮遊霊の気を引いている間に工事を行うという行為を繰り返し一週間ほどで工事は無事に終わった。

途中、女子生徒の幽霊に攻撃は受けたがなんとかなった。

圭一はその後、市にお願いして自殺した人達のために小さなお地蔵さまを設置するようお願いし、線香をあげ献花も行った。

工事は無事執り行われ柵も登れないような作りになって、自殺者は無くなり心霊スポットにくる野次馬達もいなくなっていった。

あたりに漂う浮遊霊の数も大分少なくなっていた。

工事が終ったあとしばらくしてから再び献花とお線香をあげにきた。女子生徒の幽霊がなかなかしつこかったので献花を終えると逃げるように自分の家に帰っていった。

久しぶりにやってきたが浮遊霊は全然いなかった。

少し安心した圭一は橋のそばにある小さな地蔵に持ってきていたお花を献花しお線香をあげた。

そして山本小夜子の自宅に向かっていった。


山本小夜子の家が視界に入った時点で圭一は異変に気づいた。

外観は3階建ての一軒家で多分山本小夜子の部屋は3階なのだろう。

その部屋の周りが浮幽霊だらけになっていた。

ただ事では無い雰囲気が、漂っていた。

圭一は自宅に入る前に手塚詩織に電話をかけた。

「圭一くん?どうだった。」

「けっこうまずい感じです。多分3階が山本さんの部屋だと思うんですけど幽霊が沢山集まって渦を描くように浮遊してます。」

「え!?大丈夫なの?あの子…。」

「あと多分、原因は昨年の橋の工事の時にいた女子生徒の幽霊のせいだと思います。」

「あぁ。。圭一くんの言ってたあのしつこい幽霊ね…。まぁ圭一くんだったらまたなんとかなるでしょ!?それよりサヨちゃんの部屋に入れそう?」

「サヨちゃん?あぁ!山本さんのこと。。ハイ、とりえずもうインターホン押そうと思うので電話切りますね!?」

「あ!!ちゃんとお土産持っていった?忘れずに渡すのよ。」

「ハイ。ちゃんと持ってますよ。じゃあ切りますね。」

圭一はインターホンを押した。

誰も出ない。

次は山本小夜子のスマホに通話のコールをしてみた。

「もしもし、小山くん?」

「あっ!?出た!!山本さん、インターホン押したんだけど玄関まで来れそうですか?ていうか話せるんですね?大丈夫ですか?」

「え!?インターホンなったの?ウン、話せるよ。全然気づかなかった。行けるんだけど、スッッゴイ身体が重いの。大分時間がかかると思うけど、ちょっと待っててくれる?」

「無理しないでください。どっかから入れないですか?」

「両親が仕事に行ってて私の調子が悪いから戸締まりを多分厳重にしてると思うわ。どこからも入れないと思う…。なんとか行ってみるわ。」

「わかりました。では少し待ってます。」

10分後くらいに玄関が開いた。

カチャッという音と同時に沢山の幽霊達が上に沢山折り重なり這いつくばったパジャマ姿の山本小夜子が出てきた。

「山本さん!!」

圭一は自分のチカラを使い山本小夜子に群がる幽霊を振り払った。

「わ!!凄い身体が軽くなった!!」

と思ったらまた群がってきた。

「わ!!また重い!!」

と山本小夜子がまた這いつくばった。

キリが無かった…。

「小山くん、ちょっと肩かして部屋まで連れて行ってくれる?」

「ハイ。大丈夫ですか?あ!?ちょっと待っててくださいね…。」

圭一は玄関口に座るとあらかじめ持っていた綺麗な靴下に履き替え、先程まで履いていた靴下をビニール袋に入れ家に上がった。

「お邪魔します。あとコレ、詩織さんからお土産でダックワーズっていうお菓子です。有名なお店のものらしくて凄い美味しいらしいですよ。」

「ありがとう。でも靴下なんて履き替えなくても良かったのに、私そんなの気にしないよ。部屋もけっこう散らかってるし。」

「恥ずかしながら女性の部屋に入るのは初めてなので、最低限のエチケットと思って持ってきました。それではお邪魔します。」

圭一は山本小夜子の手を取った。

「多分、僕に触れていると身体が物凄く軽くなると思います。」

「ホントだ…。」

二人は3階の山本小夜子の部屋へと向かっていった。

階段を上がっていくと圭一達の周りに渦を描くように幽霊たちがとりまきながらついてきた。

二人は部屋に入った。

散らかってると言っていたが綺麗な部屋だった。

二人は手を繋ぎながらベッドに並ぶようにもたれかけ話しだした。

圭一は部屋中を見回し、あの全身血まみれの女子生徒の幽霊がいないか探してみたがいなかった。

「山本さん」

「はい」

「今、自分の周りに沢山幽霊が取り憑いているのは見えますか?」

「見えないわ。でも昨日くらいから見えないけど物凄くいろんな声が聞こえるの。あと、感情が凄い沈むし暗いことばかり考えちゃう…。」

「もしかして帰り道の大きな柵のある橋で血まみれの女子学生の幽霊を目撃しませんでしたか?」

「そう!そうよ!それで怖くなって急いで走って逃げたの。それで寝ようと思ってベッドに入った瞬間、天井にあの女の子が張り付いてて、こっちを睨みつけてたわ。それから気を失って朝起きたら物凄く身体が重くなっていたの。一日目は風邪だと思って学校を休んで我慢してたんだけどね。。。ちょっと怖い事が起こって夜中に寝てるときに気がついたら私勝手に家を出ようとしてたみたい…。その時は偶然両親が見つけてくれて助かったんだけど、話しかけたらあの橋にいかなきゃって何回も言っていたらしいわ。そのすぐ後に詩織さんに電話したわ。」

「やっぱり。。。でも本当に良かったです。ご無事で。」

「でもなんでそんなこと知っているの?」

圭一は過去の経緯を山本小夜子に聞かせてあげた。

「ふ〜〜ん。そうなことがあったの?じゃあ今こんな状況になっているのはその女の子の幽霊のせいなのね。」

「あと、おそらく僕にも原因があると思います。すみません。」

「え!?なんで?」

「『幽霊が見える人』のちかくにいるとその人も見える人になるって話を聞いたことありませんか?」

「ある。」

「僕が幽霊を見たり触れたりできるから特殊な能力をもつ山本さんはたぶん感性が強すぎて少ししか僕と出会ってませんがそのせいで今のところ強い念を持った幽霊だけですが見えるようになったんだと思います。あの女子生徒の幽霊の怨念が強いのも原因の一つだと思います。あれでも大分怨念は薄くなりましたけどね。」

「そうなんだ。ところでどうやってこの状況は改善するのかしら?」

「多分ですけど山本さん自身の霊能力が引き寄せている原因だと思いますので山本さんの霊能力をご自身でコントロールしてもらいます。」

「そんなことできるの?」

「山本さんは特殊能力があるのできっとできると思います。今、僕たち手を繋いでますよね?」

「うん。なんか照れちゃうけど…。」

「僕も男なので変に意識しちゃいます。そういうことは言わんといてください…。手を繋いだままこっちに身体を向けてもらえますか?」

「うん。」

「一度、目を瞑ってリラックスしてみたください。」

山本小夜子は目を瞑った。

暗闇の中で圭一の声が聞こえる。

「とりあえず今取り巻いている幽霊の気配の感知レーダーのような能力を人にやるときみたいにこの周りにいる沢山の幽霊相手に感じとってもらいますか?」

「うん。やってみる。」

しばらく時間がたった。

「あ!できたかもしれない。わっ!!沢山いるわ。」

「多分できてますね。山本さんは目を瞑っているからわかりませんが取り巻いている幽霊たちが一斉に山本さんを見ています。もう目を開けると多分幽霊が見えちゃうと思うので驚かずにゆっくり目を開けてもらっていいですか?」

「うん。じゃあ開けるね…。」

「驚かないでくださいね」

山本小夜子はゆっくりと目を開けた。

目を開けると全方向、半径1メートルくらいのところにいろんな幽霊がこっちを見下ろしていた。

「わ〜。ホントにいろんな人たちがいるねぇ、、。」

「これが山本さんに順番に取り憑いたり全部乗っかっていたりしたんです。」

「へぇ〜。」

「山本さんには僕のように気配を消してもらいます。そうすれば幽霊達も離れていくと思います。」

「わかったわ。」

「もう一度目を瞑ってください。」

「山本さん。もう一度あのレーダーみたいな能力を出してもらいますか?」

「うん」

「今、山本さんのレーダーには幽霊達と僕の意識はひっかかっていますか?」

「うん」

「では、、う〜んと上手く言えないんですけど…、どう言ったらいいかなぁ〜。え〜っとなんていうか自分の存在…、というかオーラを消すような感じです。僕が先にやるので感じとってみてください。」

圭一は自分の存在感を消していった。

「あ!?ホントだ。なんか消えたというか凄い薄くなった感じがする。」

「でしょう?ではやってみましょうか?」

「わかった。」

山本小夜子は目を瞑ったまま自分の存在感を消すことに意識をした。

「あぁ。いいです。いいです。その感じです。ではゆっくり目を開けて周りの幽霊達を見てみてください。」

山本小夜子はゆっくりと目を開けた…。

「あら。幽霊さんたちが小山くんの方しか見ていない。」

「僕が今また気配を戻しましたからね。自分を見つけてくれる存在がいなくなって幽霊は自分の存在を知らせたいので見える人のところによってくるんです。では僕も気配を消しますね。周りを見ててください。」

「うん。」

「ではいきますよ。静かにしててくださいね。」

圭一が気配を消した瞬間周りから幽霊たちが次々と離れていき、3分ほど経つと周りから消えていってしまった。

「もう大丈夫と思います。楽にしてください。」

二人は手を離した。

「はぁ〜。疲れた。でも元に戻ったみたい。ありがとう。小山くん。」

「疲れているところ悪いのですが、もうちょい頑張っていただきたいです。今山本さんのレーダーに幽霊がどこにいるのかわかったりしますか?」

「う〜んと……。ちょっとやってみるね。あっいるいる。けっこう離れていくもんなのね…。えっ!!きゃあ!!!!」

叫び声と同時に山本小夜子は急に驚いたように尻もちをついた。

「どうしました!?山本さん!!」

「なんか凄い大きな強い念の塊って言うのかな…。そういうのがあっちの方から猛スピードで突っ込んでくるわ…。」

「多分あの女子生徒の怨霊ですね。橋だとあっちの方向です。山本さんは僕の後ろに隠れてください。」

「うん。」

圭一は山本小夜子の手を右手でしっかり握りしめて自分の身体の後ろにやった。

「手を離さないでくださいね。僕は取り憑かれませんが多分まだ抵抗できない山本さんを狙って取り憑こうとすると思います。手を繋いでいたらすぐに反応できるのでしっかり握っておいてください。」

「うん。わかった。」

しばらく緊迫した空気が流れた。

「山本さんこっち!!!」

「キャッ!!!」

圭一の声と同時に山本小夜子は圭一の体の後ろに隠れるようにして引き寄せられた。

さっきまで山本小夜子がいたところに下から床を貫通し女子生徒の怨霊が腰の高さくらいまでヌッと姿を現した。

圭一はその瞬間を見逃さなかった。

空けていた左手で女子生徒の怨霊の首根っこを掴み山本小夜子の手を咄嗟に離し右手を女子生徒の頭の中に沈み込むようにズブズブと突っ込んでいき圭一はそのまま目を瞑った。

女子生徒の幽霊もピタリとも動かなくなった。

そのままの状態がしばらく続いた。

山本小夜子はそんな二人を後ろでただ見つめていた。

5分ほどすると女子生徒の幽霊が突然、煙のように消えていった。

「何をやったの?」

「幽霊に記憶があるのかどうかはわからないんですけど僕が幽霊に触れるのはご存知かと思うんですけどついでにある程度の過去の記憶を見る事ができて、さらに最近の記憶を消したりできます。除霊ができたら一番いいんですけどね。。。脳や胸に近いところに手を入れると幽霊の記憶が入ってきます。」

「へぇ〜。凄い。それって人には効かないの?」

「以前、詩織さんに永遠に記憶から消し去りたいほどムカつくヤツがいるから記憶を消してくれって頼まれたんですけど、駄目でしたね。。そもそも人体なんで貫通しませんでした。どうも貫通しないと駄目みたいです。なので幽霊にしか使えません。」

「という事はさっきの幽霊の記憶を消したって事?」

「僕と山本さんの記憶を消しました。以前の時もあの幽霊なかなか執念深かったんでその時は僕の記憶だけ消しました。」

「じゃあもう追ってこないの?」

「ハイ。多分ですが…。実際僕もあれから追いかけられていないので。」

「あ〜良かった。やっと明日から普通に生活できる。」

「山本さんの中のレーダーで遠くからでもこのあたりの幽霊だったら先に感知して出会わないようにできるとおもいます。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。また何かあったら連絡してきてください。詩織さんでもいいし僕でもいいし。」

「わかった。………そういえば小山くん…?」

「はい?」

「その記憶を消せるって、全部消しちゃったらいったいどうなるの?全部消したことあるの?」

「あぁ…。いやそもそもまるごと全部の記憶は消せないですね。自分の感覚ですがなんとなくわかるんですよ。多分最高だと2週間分くらいの記憶だと消せると思います。あと死ぬ要因になった記憶もですね。コレをみるとけっこう気が重くなるので滅多に使わないですけどね。」

「へぇ〜。記憶を全部消せちゃったら幽霊の存在自体消せるかもしれないから便利そうね。」

「でも全部消しちゃったらなんか可哀想ですよね。死ぬ間際の記憶を見ちゃった時は特に。」

「襲われちゃったのに優しいね。小山くん。」

「好きで怨霊や地縛霊になる幽霊はいないと思いますからね。簡単に憎んだりできないです。」

「偉い!!小山くん!!」

「じゃあ僕もう帰りますね。」

「うん。今度お礼になんかあげるよ。」

「ありがとうございます。」

二人はそのまま家の玄関に向かった。

「じゃあさようなら。お邪魔しました。」

「うん差し入れまでもらっちゃってどうもありがとう。さようなら。」


帰り道で圭一は手塚詩織に無事に終わった事を報告した。

橋の近くまでくるとあの女子生徒の幽霊が柵の上に立って下の車道をジーっと眺めていた。

圭一は見つからないように気配を消してそっと後ろを通った。

少しして振り返り気味に彼女を見た。

頬から涙を流していた。

圭一の目に涙を流した彼女を見た瞬間そのまま車道に吸い込まれるように消えていった。

圭一は彼女の記憶を思い返したがすぐに辞めた。

悲しい気持ちのまま圭一は帰宅した。





































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