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夏祭りの連作短編(なろうラジオ大賞4参加作品)

夏祭りに着ていく浴衣には、勇気の出る魔法がかかっていると聞いたから



 私は臆病だ。

 人と仲良くなるのに時間がかかるし、幼馴染以外の男の子とはまともに話せない。


 でも幼馴染が「夏祭りに着ていく浴衣にはね、勇気の出る魔法がかかってるんだよ」と言ってくれたから。

 本当は魔法なんてなくても、頑張れって激励してくれただけだとしても、浴衣の魔法を信じると決めた。


「草加くんが好きです! 夏祭りでデートしてください」


 いつもの私なら絶対に言えない台詞を口にできたのは、魔法のおかげ。

 でも去年のサンダルを慌てて出したのは失敗だった。

 足が痛くてうまく歩けないし、さっきから草加くんと話すこともできていない。

 どうしよう。これじゃ彼を退屈させちゃう。


「鹿内さん、屋台で何か食べる?」

「ひゃい! う、うん」


 声が裏返った。恥ずかしい。

 でも草加くんは笑いもせず、すぐ近くの屋台を順に指差した。


「たこ焼きとベビーカステラならどっち?」

「じゃあ、たこ焼き」

「座れるとこ探してくるから、買っといて」


 あれっ、一緒に並んではくれないんだ?

 ストック切れのたこ焼きができるのを待って、二つ買った。でも草加くんは戻ってこない。一人でいると不安が膨らむ。


「一人? 俺たちと遊ぼうよ」


 知らない二人組に声をかけられた。年上の男の人だ。

 首を横に振って後ずさったけれど、二人が前に出てくる。

 なんとか声を上げようとしたら、私の前に草加くんが割り込んだ。


「すいません、俺のツレなんで」


 二人を追い払ってくれた草加くんは、なぜだか汗だくで、紙袋を持っていた。

 屋台のない端っこまで手を引かれる。繋いだ手が熱くて顔が溶けそうで、さっきまでの不安なんか吹き飛んだ。


「遅くなってごめん。混んでたから、これ使って」


 紙袋から出てきたのはキャンプ用の折りたたみ椅子。家まで取りに走ってくれたの?


「絆創膏ある? 妹の靴でよければ貸すけど」

「だっ、大丈夫! ありがとう」


 知ってた、草加くんは優しいって。好きになったのはこういうところだ。

 どうしても次が欲しくなって、私はまた浴衣の魔法を頼った。


「来週、隣町で花火大会があるの。それも一緒に行かない!?」

「あ……うん」


 目を丸くした草加くんは、ほんの少し赤くなって、私から顔を背ける。

 いつもクールな彼が初めて可愛く見えて、私は嬉しくなってしまった。




読んでくださってありがとうございました。感想、評価などいただけると喜びます。


※彼女が告白するお話はこちらです。

「幼馴染が夏祭りに告白する相手を確認したい」って言うけど、その相手はおまえだろ?

https://ncode.syosetu.com/n0748hz/


※彼女を励ました幼馴染のお話はこちらです。

「大好きなお姉さんを夏祭りに誘うためなら、小狡い手だって使うよね」

https://ncode.syosetu.com/n0826hz/

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― 新着の感想 ―
[一言] 椅子を取りに帰るって発想がすごい。 青春真っ盛りの男の子が大好きな人のためにできることを考えた結果なんだろうなぁ。 まさにアオハル!
[良い点] よくあるおんぶとかじゃなくて、椅子持ってくるんだ……椅子!?って思ってなんかかわいくて笑っちゃいました♡ このあともずっと椅子もって夏祭り楽しんでるのかと思うと、なんかちょっと不器用でかわ…
[良い点] かわいい~! 草加くん優しいですね。「帰ろうか」とは言わずに椅子を準備してくれる。いいですね~! 読ませていただきありがとうございました。
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