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7話 HelloWorld

〜〜〜〜〜〜〜〜



『初期設定を開始します……』


電脳(Nドライブ)内に身体データを確認しました、アバター設定をパスして自動スキャンを行いますか?』


 Yes← No


『スキャンを開始します、アバターを自動生成中です……』


『アバターの自動生成が終了しました。アクセスポイント"外縁部六丁目"からのアクセスを要請中……』


『"外縁部六丁目"からのアクセスが承認されました』


『データベースを構築中……』


『全ての準備が整いました。それではアイリスをお楽しみください』



〜〜〜〜〜〜〜〜



 暗かった視界が一気に開けてくる。そうして俺は生体ドールになってから初めて"アイリス"に降り立った。


「っと……」


 フワッと地面に降り立つ、ちゃぷんという水音。俺は辺りを見渡す。


 一面に広がるのは何処までも何処までも続いていく青空。


 一見すると空も地面も、両方が青空と雲に覆われているように見えるが……


 別に浮いているわけではない、しっかりと地面の感覚はある。


 例えるなら"ウユニ塩湖"みたいな感じだろうか、まあ間違いなくあそこがモデルっぽい場所に俺は降り立つ。


 ここはアイリスのメインホール。空には幾つもの特徴的な構造物が浮かんでいる。


 遺跡っぽい建物だったり、現代的なビルだったり……馬鹿でかい街が丸ごと浮かんでいたりもする。


 そうして、空を行き交う人々。あれはアイリス内でのアバターだ。


「こうして、メインホールから改めて見てみるとすごくカオスな世界だなココって」


 そんな事を呟きながら、俺は自分の身体を確認する。リアルのあの生体ドールと全く同じ姿をしている。着ているワンピースまで同じだ。


「めんどくさくてスキップしたけど、ちゃんと作った方が良かったかなぁ」


 と、その時。メッセージの着信を知らせる通知音が鳴る。俺はコンソールを開いてそれを確認。


「タイトル"無題"……怪しすぎる」


 一応デフォルトのセキュリティソフトを通してみる。特に怪しいファイルが添付されている様子もない。


「……ここに来いってことか?」


 中身はただ謎のURLが書かれているだけだった。それ以外に無駄な文字は一切ない。


 このURLには見覚えがある。たしかアイリスの深部にあるとある場所を表すものだ。


 俺はチラリと地面をみる。青空が反射して、自分が空に浮かんでいるんじゃないかと錯覚するような地面……


 この地面の下は"深部(アンダーグラウンド)"と呼ばれており、古い時代のデータが蓄積されている謂わばゴミだまりになっている。


「いくしかないか……」


 そこに好んでアクセスする様な馬鹿は少ないけど、でも呼ばれているなら仕方ない。


 メールに添付されているそのURLに触れる。


 身体が引っ張られる感覚、地面をすり抜けてグングンと地下に潜っていく。


 幾つもの"データの墓場"を通り過ぎていく。そうしてやがてそのURLの場所にたどり着いた。


「つい……た?」


 辺りの景色を確認する。そこはまるで人が完全に去って、ゴーストタウン化した街のような場所だった。


「不気味な場所だな……」


 まさしく"墓場"という言葉が相応しいだろう。他に人がいる気配もないが……一体ここで何が待ち受けているのだろうか。


 取り敢えず歩く、そのゴーストタウンと化した街を探索する事にした。


「──神社?」


 暫く探索すると、神社の様な建物を見つけた。


「……入ってみるか」


 なんとなく気になり、その神社に向かう。赤々しい色をした鳥居を潜り進んでいく。


「──!? だ、誰かいる……?」


 正面奥、神社の本殿と思わしき建物の前に一人の女性が立っていた。


「お待ちしておりました」


 巫女の様な格好をしたその人が静かに呟く。


「あなたが、俺を呼んだんですか?」


 人の気配など全くしなかったのに……この人、ただのAI? 人じゃないのかな……?


 と、警戒する俺の事など気にする様子もなく彼女はこっちに近づいてくる。


「──ふーん、なるほど、君がねぇ」


 俺を品定めする様な視線で見てくる彼女。


「……」


 この人、めっちゃ美人だな……なんだかドキドキしてきた。


「二ヶ月前、"スピカ・テクノロジー"のサーバーに不正アクセスしたのは君だよね?」


 ぎくっ、こ、この人何でそれを。


 俺はよくアイリスを通じ、色々な場所のセキュリティを破って暇潰しをしている。


 特に悪さをするわけじゃない、そんな事をしたらハッカーではなくクラッカーになっちゃうからな。


 ただプロの大人が作った厳重なセキュリティを破って見せるのが楽しくて仕方ないだけなのだ。


 彼女が言った"スピカ・テクノロジー社"へのハッキングにも心当たりがあった。だけどちゃんと痕跡は消したはず……


「別に糾弾しようとしている訳じゃないから、そもそも私はスピカ・テクノロジーの人間じゃないし」


「ど、どういう事ですか?」


 てっきりその会社の人間がやってきて、俺をとっ捕まえて警察に引き渡すつもりなんじゃ……と思ってた。


「アナタのそのハッキングの腕を見込んで頼があるの」


 頼み? 何処かに不正アクセスしてデータを盗んだり改竄してこいとかか? 嫌だぞそんなの……


「アイリスを、この世界を救ってくれないかな」


「……え?」

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