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35話 取り戻された鍵

「……んっ」


 徐々に現実世界に戻っていく意識。目を開けると俺の顔を覗き込んでいる翼が見えた。


「戻ってきたか、でどうだったんだ?」


 そう聞いてくる翼。俺はソファーから身体を起こす。


「まあ、一応取り返してきましたよ」


 起きてすぐに、先ほど拾った(キー)の情報を改めて確認する。


「どういう事だ?」


 翼は「なんじゃそりゃ?」とでも言いたげな表情をする。まあ確かにこれをパッと見ただけでは何が何だかわからないだろう。


 入手した鍵にはアイリスのアカウント、そのデータが格納されていた。


 データは暗号化されてはいるが、ごく単純なものだ。この程度ならすぐに復号出来るだろう。


 おそらく、あの男はなんらかの方法でプライベート用アカウントのIDとパスを不正入手しアカウントの乗っ取りを行ない、データを吸い出していたのであろう。


「けど……一体なんの目的で?」


 何故そんな事をしていたのかが気になる。他人のアカウントを集めて一体何をしようと……?


「おい、どうしたんだ?」


「いや、なんでもないです」


 まあ、ここで考えても仕方ないだろう。


「ともかく、アカウントは取り戻してきましたよ」


 網膜に映し出されたコンソールを操作して、自作のデータ復号ソフトを起動し入手した"鍵"を放り

込む。


 と、その時。まるで一連の出来事を見ていたかのようなタイミングで、マイさんからメッセージが届く。


「えっと、なになに……」


『やっほ~、葵ちゃん元気してる~?』


 と、なんとも気の抜けるような挨拶から始まり──


『葵ちゃんって今SCARLET EYEの事を調査してるんだっけ?』


 そのメッセージに俺は『そうですけど、もしかして何か新しい情報でも?』と返答する。


先ほどまでの一件ですっかり忘れていたが、自分らは今巷を騒がせているハッカーを探しているんだった。


『今、アイリスのアカウントが沢山乗っ取られているのは知っているよね?


 ……タイミング良すぎないか? ついさっきそいつと対峙して一部のアカウントを取り返してきたばっかなんだが。


『その犯人にちょっとばかり心当たりがあったんだけどね、ウチでも追っかけてたんだけど』


 そしてマイさんから一枚な画像データが転送されてきた。


「って、おいおいこれ……」


 添付されていた画像に映っていた二人の人間、おそらくアイリスないで撮影されたであろうもので、その片方は──


「俺じゃねーか!」


 まるでチアガールのような名若干露出度の高めな衣装。リアルの今の俺とほぼ同じ再現度の高い顔立ちと体形。そう、デジタル魔法少女姿の俺。


そしてもう一人は、先ほどまで俺が対峙していた例のアカウント強奪犯と思わしき人物だ。


『これ、ついさっきアイリスで撮られたばっかりのヤツなんだけどね、ここに映ってる男の方のアバターがその実行犯』


 はい、それはもう俺が一番よく知っています。先までそいつと戦ってましたしね。


『もう一人のかわいい子ちゃんについてはよくわかってないんだけど、まあ今はあまり深く考えなくてもいいよ』


 そうして添付されていた、もう一枚の画像データを開く。そこには先ほど俺も目撃した例の真紅の竜が。


『なんか、この二人が小競り合いしてる最中に現れたんだけど。この紅い奴、実は前にも目撃されてね~』


『……そもそも、この紅い奴何なんですか?』


 一応、そう聞いてみる。こいつは多分……電子精霊だろう。さっき俺のものに現れたあの可愛い魔術師のような。噂に聞く、電子の海にだけ存在する意志を持った生命体。


『SCARLET EYEが使役していると思われる攻撃型の複合プログラムかな、多分』


 攻撃型複合プログラムと来たか、まあ確かにこれが意思を持った情報生命体であるなんて普通の発想してたらでで来ないだろう。


『最初に映ってた二人も似たよなものを使っててね、足取りをってるんだけど』


『ロりの方は追わなくていいですよ、知ってるやつなので……』


 ややこしいことになりそうなので、ひとまずそう言っておく。マイさんには本当のことを話すべきだろうか。


「──────あ、こんなところにいた!」


 と、その作業の途中。聞き慣れた女性の声。


「恋歌さん、どうかしたんですか?」


「いやー、それがね! おっと、病院では静かに……」


 そう声のトーンを落とす彼女。


「先輩から連絡があってね、例の……何だっけ? ほら今追っかけてる──」


 そこで、何かを必死に思い出そうとする彼女。


「"SCARLET EYE"の事ですか……?」


「そうそう、それ!!」


 いやはや全くこの人は、今自分たちが調査している奴の名前すら忘れてしまうとは本当にポンコツな人だ……


「こっちも色々気になる事が聞けたから、一度集まって情報を整理しようって」


 ……気になる事か。一体なんだろうか。


「わかりました、えっと……じゃあ翼さん、俺らはこれで。アカウントの件は復旧が終わったらまた連絡します」


「ん、あぁわかった」


 そうして、俺は翼さんと連絡先を交換し、一度病室に戻り椿ちゃんとも連絡先を交換してさよならをした後病院を後にするのであった。

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