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31話 Account hack

「うーん……ホントなんですかねコレ」


「だろ? なんか変だろ。こんなの見た事ないぞ」


 翼がホログラムの画面を俺に見せてくる。


 椿ちゃんと、しばらく楽しくお話しした後。俺たちは病院内のアクセススポットに来ていた。先程言っていたアカウントの件を確認するためだ。


 取り敢えずそこで、翼のアカウントステータスを見せてもらう。


 そこには"《error"0x000123" アイリスアカウントに深刻な問題が発生しています、回復セッションを実行してください》"という謎の警告文が。


 コード0x000123か、心当たりがないな……


 俺は検索窓を開き、アイリスで該当する"0x000123"というコードについて調べてみる。すると──


「ん、同じ状態になっている人たちの嘆きが……」


 アイリス上では同じような症状に悩まされている人のつぶやきが散見していた。


 どうやら最近になってよく発生しているモノのようだ。


「不具合のせいでアイリスにフルダイブ出来ない、かぁ」


 完全にアイリスに接続できないわけではないようだ。


 しかしながら、仮想世界であるアイリスに入ることが出来ないという。



 と、ネットでこの不具合について調べていると。メッセージが届いた事を知らせる音が聞こえた。


「は? これって……」


 届いたのは差出人不明のショートメール、そうして内容は──


《その事件、デジタル魔法少女の出番じゃない?》


 という、謎のメッセージだった。


 いやいやなんだコレ? デジタル魔法少女って、それがなにを示しているのかはわかるが……


「もしかして……」


 これを送って来たのはあの巫女服を着た謎の女性だろうか。


「葵ちゃん? どうした?」


「あ、いえ何でも」


 それにしても、俺の出番という事はこの件は……


 そう考え込んでいるうちに、また差出人不明のメッセージが届く。


《https://○○○.○○○○○○○○○》


 そこには、ある場所のURLが。またここに行けって事か?


「仕方ない……翼さん、ちょっと俺の身体見てて」


「ちょ、葵ちゃん何言って──」


 何慌ててんだこの人、あ……


「何変な勘違いしてるんですか、ロリコンですか? アイリスに潜るんですよ」


「あ、そういう事」


 まったく……さて、早速アイリスに潜ってこのURLにアクセスしてみよう。


 俺は病院内に唯一設置されているアクセスポイントに近寄る。


 そうして、近くにある待合用のソファーに座った。


「よし……」


 コンソールを展開して、アイリスへのフルダイブを選択。


《アイリスへのフルダイブを開始します》


 ダイブ前に、周囲の状況に気をつけろとか長時間の利用がどうたらみたいなお決まりの警告文が流れる。


《Access start!》


 そうして、俺は電子世界へのダイブを開始した。



〜〜〜〜〜〜〜〜



 電子世界、俺のメインアバターが構築されていく。


「よっと」


 そうして、またあの青空が一面に広がるアイリスのメインホールにたどり着いた。


「さて……」


 メッセージボックスを展開する、ショートメールに記されたURL、今更だが。


「踏んで大丈夫かこれ?」


 まあ正直、このURLの場所は結構有名なとこなんだが──


 この前、あの巫女服の女性に会った時は特に警戒せずに踏んでしまったが、今考えるとあれはかなり迂闊だった。


「よし……」


 俺はコンソールを弄る、そうして自作した拡張ソフトウェアを起動した。


《Decoy avatar》


 ソフトウェアが立ち上がる。これは指定したURLにダミーのアバターを飛ばして安全性を確かめる超初歩的な拡張ソフトだ。


 元の身体にはこういう自作の電脳拡張ソフトウェアを何個か入れていた。


 昨日家に帰った時、予備に保存していたソフトを全てこのボディにインストールし直した。


「ふふ、コレで何となく魔法少女味が……っていかんいかん。俺までアイツに毒されてきてるぞ」


 ともかく、新しい身体で慣らしがてら確認確認。おっ、すぐ帰ってきた。


 超簡易的な、何の飾りっ気もないボール型のアバターがふわふわと戻ってくる。


「よし、大丈夫みたいだな」


 俺はソフトウェアの窓を閉じる。そうしてショートメールに記載されているURLに触れた。


 身体がふわりと持ち上がり、スゥーっと飛んでいく。


「はぁ、いつやっても思うけど。高所恐怖症には耐えられんだろこのシステム」


 俺は大丈夫だが、高所恐怖症の人にはたまったもんじゃないだろうなコレ。


 そんな事を思っているうちに、あるエリアへと辿り着く。そこは──


「うーん、またコレは趣味的なエリアだな……」


 たどり着いたのは、江戸時代チックな街並みが広がるエリアであった。


 街の中には結構なアバターがいる、まあまあアクセス数の多いエリアのようだ。


 しっかし、なかなか魅力的な光景だな。こんなの電子世界くらいでしか楽しめないだろうなぁ……


「えーっと、指定されたURLは……ここで間違いないみたいだが」


 果たして、この古風な街で一体なにが待ち受けているのであろうか?


「──まあ取り敢えず、観光がてら散策してみるか」


 ここには一度も来たことが無いし、ひと回りして見て回るのも悪くは無いだろう。

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