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27話 ヒーロー

〜〜〜〜〜〜〜



「うーん、思ったより普通だねココ」


「ですね、もっと荒れてるものかと」


 エリアを少し見て回った感じ、そこまで荒れている感じはしない。これなら外縁部の方がよっぽど怖い様な気がする。


「ま、言ってもここに集まってるのってみんな子供でしょ?」


 たしかに、ヤンキーと言っても所詮中高生だし。そこまで恐れる必要もないのだが──


「でも流石に女二人ですし、警戒するに越した事はないですよ」


 とは言っても、俺(正確には男だが)と歌恋さんというか弱い女の子二人で突っ込むんだから、そこら辺はしっかりしておくべきだろう。


「そもそも、今の時間ならみんな学校行ってるのかもね〜」


 ……ヤンキー達が真面目に学校通ってる絵面を想像してしまった。


「降りても大丈夫そう、外出て捜査しよっか」


「ですね」


 そうして、パトカーは路肩に停まる。っても、一体どこから調べればいいのやら。


「こういうのって何すればいいんですかね?」


「その辺いる人に聞き込みだよ!」


 いやいや聞き込みって、その辺歩いてる人に"SCARLET EYESって知ってますか?"って聞いて回っても仕方ない様な気がしてきた。


「……はぁ」


 気が進まなくなってきたけど、来てしまった以上は無駄にするわけにもいかない。


 俺はパトカーを降りる、外に出た途端にピリッとした雰囲気を感じた。まあ気のせいだと思うけど。


「じゃ、行こっか!」


 俺の微妙な気分とは正反対に、歌恋さんはやる気満々の様だ。



〜〜〜〜〜〜〜〜



「〜〜〜っっーか、案の定だなあの人!」


 嫌な予感はしてたんだけど……それが見事に的中した。


「まさか、探索から五分ではぐれるとは思わなかったぞ……」


 エリアを歩いて見て回っていたんだけど、気が付けば歌恋さんとはぐれていた。


「……あー、そういやあの人の連絡先知らねぇ」


 メッセージIDを交換しておくべきだった。




 ────ここまできて、突っ込みたがってる人もいるけど、決して俺が迷子になった訳じゃないからな!


 いやいや、確かにこの状況を普通に見れば。金髪ロリ美少女が保護者とはぐれて迷子に! 的なシチュエーションに見えるだろうけど。


 ……ってかそもそも中身は高校生の男だ。そんな高校生にもなって迷子なんて──


「とにかく、さっさと探さないとなぁ。まだ時間経ってないし」


 そんな遠くには行ってないはず。


 ここは若干物騒だし、もしかしたらトラブルに巻き込まれてるのかもしれない。


「……っし、行くか」


 そうして、人気の少ない倉庫街を歩き出す。まだ日が出ている時間帯だというのになんだか薄暗い感じの場所だ。


 ってか、やっぱりあの情報はデマだな。こんな陰気な場所に潜伏してないだろ。



 と、頭の中でデマを書き込んだ者への怒りをブツブツと呟きながら歩いてると。少し離れた小さな倉庫の方に人の気配を感じた。


 俺は足音をなるべく立たない様に、その倉庫の方に近づいてみる。



「ギャハハハ! それでよぉそのアプリ使ったら──」


 柄の悪い、いかにもな笑い声。そうしてその他にも数人の男の声。


「マジ、そりゃやべーな! 俺にもくれよ!」


 ……なんつーか、テンプレ過ぎて笑えるぞ。


 俺はそっと中を覗いてみる、中には数人の少年。このエリアにたむろっているという不良グループの一つだろう。


 書き込みをしてみるべきか? いや、あいつらSCARLET EYESすら知らなさそう……


 ここは大人しく去るべきだろう、決してビビった訳じゃないぞ。当てにならないと判断したのだ。



 カラン……!



「あ」


 やってしまった、足元に落ちているスチール缶に気が付かず。おもいっきり蹴ってしまった……!


「……ん、なんだ今の音?」


 と、不良グループの一人が。ちょっと、おいおいおい。君地獄耳過ぎません? そんな大きな音じゃなかったが!


「なんだあのガキ」


 見つかってしまった。嘘だろこんなテンプレイベント実際に起きるもんなのかよ!


 俺は急いでその場を駆け出す、とにかく逃げよう。面倒ごとはごめんだ。


「……今の話聞いてたか!?」「待てやぁ!」「どこの回しもんじゃコラ!!」


 と、少年たちはが追いかけてくる。つーかコイツらなんなんだよ。女の子の一人くらいスルーしろよ……


 あと、最後のヤツ。お前は極道映画の見過ぎだ。


「……はぁ、はぁ」


 とにかく逃げる。ってかなんだ? なんでこんな追ってくる? 聞かれたらマズい話でもしてたのかコイツら。


「って、行き止まり!?」


 無我夢中で逃げてきて気が付かなかったが、狭い路地に逃げ込んでいたみたいだ。そうして目の前は行き止まり──


「逃げ恥のはえーガキだな」


 後ろを振り返る、三人のいかにもな不良が。


「……コイツただの小学生ですよ、別に放っておいてもよくないすか?」


 そのうちの一人が、リーダーと思わしき先頭にあるスキンヘッドの少年に話しかける。


「さっきの会話聞かれたかもしれねぇだろ、大丈夫だ。ちょーっと痛い目に合わせれば他の奴に話そうと思わないだろ」


 ……いやいやコイツマジかよ、こんな小さな女の子(中身は男だけど)にそんな、頭のネジ出荷工場に置き忘れてきたのか?


 ジリジリと、近づいてくる不良ども。後ろは高い壁だ。逃げようもない。




「────おい、そこの猿ども」


 絶体絶命の危機、そんな中。よく通る男の声が辺りに響いた。


 不良どもが後ろを振り向く、そこには見知らぬ長身のイケメンが。まるでヒロインの危機に参上する主人公が如く、悠然と立ち構えていた。


「小学生の女の子相手に、何やってんだ? 情けなさ過ぎだろ」

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