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24話 手作りのプレゼント

「はぁ〜、ホント綺麗な金髪だなぁ」


 歌恋さんは俺の髪をシャワーをかけながら撫で撫でする。


「うぅ……」


 なるべく薄目で、見ないようにしているんだけど。やっぱり──


「葵ちゃんどうかした?」


「い、いえ! なんでも……」


 歌恋さんって意外と……デカい。そのお胸が。


「ほらー、目瞑ってないとお湯かかっちゃうよー!」


 はぁ、全くなんでこんな事になってんだマジで……


 その後も、俺は散々歌恋さんに色々なところを触られたり、もうホント半分羞恥プレイみたいな仕打ちを受けてしまうのであった──



〜〜〜〜〜〜〜〜



「帰ってたか葵……って、なんでお前もいるんだよ」


 紅い愛車に跨り、ガレージへと帰還する龍二さん。ガレージ内に止まっているパトカーと俺たち二人、交互に視線を向ける。


「だって葵ちゃんを一人にするわけにはいかないじゃないですか!」


 ぷんすかと、怒ってみせる歌恋さん。全く過保護というかなんというか……


 ってか、やっぱこの人。俺の事見た目相応の年齢だと思ってないか?


「だったらもう帰れ、俺がいるしもういいだろ」


「ぶー、先輩冷たーい!」


 ぶーぶーと抗議する歌恋さん。


 結局押しに負け龍二さんは「私もここに泊まらせろ!」という彼女の要求を飲むハメに……



「……zzz」


 ガレージのソファにもたれかかり、スヤスヤと眠る歌恋さん。


「まったく、この人よくこんな場所で寝れるな……」


 と、気持ちよさそうに眠る歌恋さんを横目に、俺は側の椅子に座りながら龍二さんが買ってきたコンビニ弁当を食べる。


 冷めててとても不味い。この拠点ってレンジすら無いんだよなぁ。


『はーい、今日はここ! 私立空星学園に──』


 ガレージの隅に置かれている立体投影型のテレビ、新京市にある有名なアイドル育成高校の特集が流れている。


「はー、面白い番組やってねー……」


 チャンネルを変えてみるが、他に面白そうな番組はやっていない。


「なぁ葵。お前ってライセンス持ってるのか?」


 と、俺がボケーっとテレビを眺めていると唐突に龍二さんがそんな事を聞いてきた。


「ライセンス? 一応持ってますけど、普通二輪」


 ちょっと興味があったから、十六歳になってから直ぐに取得したんだけど……まあそれを生かす機会は皆無だった。


 だって今主流の水素モーター駆動バイクってめちゃくちゃ高いし。とても高校生に手が出せる代物じゃない。


「そうか、ならコイツに乗れるな」


 龍二さんは、側に置かれていたピンクのバイクを指差す。って、いやいやいや……


「いいんですか? だってそれ──」


 愛理ちゃん用に作ったヤツじゃ、一からハンドメイドで。


「まあ、このままここで腐らせておくのも勿体無いしな。使ってくれて方が嬉しい」


 そ、そこまで言われたなら断るわけにもいかない。ありがたく受け取っておこう。


 俺はそのマシンの側に寄る。俺のこのちっこい身体(ボディ)でも問題なく乗り回せそうなレベルのコンパクトさ。


 しゃがんでエンジン部を確認する。斜めに走る、三つのスリットから水素モーター特有の柔らかな蒼い光が漏れ出している。


「しっかし、ホントにこれが手作り……」


 市販のものと言われても、全く違和感のないレベル。


「お前拾ったあの廃棄場な、うちの知り合いの敷地なんだよ。あそこにあるジャンクは好きなだけ持っていけって言われてるからな」


 あぁ、俺が倒れてたって場所か。見たことは無いけど……確かにそういう場所ならパーツもたくさん集まりそうだ。


「ウチの仕事手伝ってくれるんだろ? なら足が必要になるはずだからな」


「は、はい。そりゃもう」


 確かに、新京市は広大だ。その面積は旧東京二十三区にも匹敵する。


 いつまでも歌恋さんのパトカーや龍二さんの後ろに乗っているわけにはいかないしな。


「っと、葵。俺はこれから知り合いと会う約束がある。戸締まりは頼むぞ」


「──え? はい、わかりました」


 約束、一体誰とだろう? まぁ仕事じゃなくてプライベートな事かもしれないので詮索はよしておこう。


「ほら、ソイツのキーだ」


 ぽいっと、鍵を投げてくる彼。俺はそれをキャッチする。


「ありがとうございます」



 そうして龍二さんはヘルメットを被り、愛車に跨りガレージを飛び出していった。


「いってらっしゃーい……」


 俺はそれを見送り、ガレージの施錠をした。


「……ふぁあ、俺も寝るかぁ」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 新京市内、夜の街を一台の真っ赤なカラーリングをしたマシンが駆けていく。


 赤い尾灯(テールランプ)の輝きが尾を引き、ネオンの輝かしい街に溶け込んでいく。


 その真紅のマシンを駆るのは、他でも無い新京市警の刑事"新橋龍二"である。


 将来を有望視されたキャリア組であった彼は、ある事件がきっかけで出世街道から外されしまう。


 そうして今は"特犯課"などという隔離部署に身を置いていた。


(まったく……いくらなんでも急すぎるだろ……)


 その彼は、困惑の感情と共に新京国際空港へと急いでいた。新京市へ急にやってきた元妻に会いに行くためだ。


(愛理が居なくなって、離婚してからずっと連絡取ってなかったが。一体どういう風の吹き回しだってんだよ……)


 複雑な感情と共に、空港へと急ぐ龍二。そうして彼は愛用のマシンと共に眠らない夜の新京市内を駆けていくのであった……

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