22話 本庁に住む……
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「せんぱーい!!!」
パトカーを降りた歌恋さんは、市警本庁舎の入り口前にいた龍二さんの元に駆け寄っていく。
「はぁ、にしてもでけえな……」
俺も降りて、新京市警本庁舎ビルを見上げる。オシャレなガラス張りの外観を持つツインタワーのビルだ。
やれやれ、一体このビルを建てるのにどれだけの税金が投入されてるんだか。
「葵ちゃーん! どうしたの!?」
「あ、いえ。いまいきまーす!」
そうして、俺も龍二さんの元に。
「どうかしたんですか? 龍二さん」
一体何故呼び出されたのだろうか。
「あー、お前に会いたいって奴がいてだな……」
俺に会いたい? 一体誰が?
「マイさんですか?」
と、歌恋さん。マイ……何処かで聞いた事があるような。
──あ、そうだ。龍二さんや秋田課長が何度か連絡をとっていた人だ。
もしかして特犯課の人なのだろうか、にしても何故本庁に? 特犯課が入ってるのは外縁部の分署のはずじゃ……
「とにかくついてきてくれ」
本庁舎ビルの中に入っていく龍二さん。俺と歌恋さんもそれに続く。
市警本庁舎ビル、メインホールに入る。広々とした開放感のある作りだ。
「葵、おばさんにはもう言ったのか?」
「あ、はい言いました」
エレベーターの中で、龍二さんがその事について聞いてきた。
「おばさんは何て?」
「驚いてました」
そりゃもう、これでもかというくらい。まぁ当たり前っちゃ当たり前だけど。
「そうか……まあそりゃそうだよな」
そうして、エレベーターは目的の階にたどり着く。俺たちはエレベーターを降りる。
「……葵、これから会う奴なんだかな。ちょっと変わった奴でな」
「そ、そうなんですか?」
まぁ、特犯課ってどうやら変わっている人の集まりみたいだし。
「そうですかー? 私はマイさん好きですよ!」
と、変わってる人第一号が。
「てか龍二さん、あぁいうタイプの人苦手なだけなんじゃないですか?」
「──否定はしない」
……うーん、一体どんな人物なのだろうか。その"マイさん"という人物は。
「おっと、この部屋だ」
立ち止まる龍二さん。ドアのプレートには"特犯課・情報支援センター"と書かれていた。
「入るぞ、マイ」
ノックして、ドアを開く彼。そうして部屋に入っていく。
「し、失礼します……」
俺と歌恋さんも続く。部屋の中は薄暗く、大げさなマシンが幾つか設置されていた。
そうして、壁に設置されている大きなモニター。"情報支援センター"名のイメージ通りの場所だ。
「あー! やっと来た遅いっての!!」
ガタッと椅子から立ち上がり、俺たちの方を見る一人の女性。この人がマイさんとやらなのだろうか?
「待たせたな、葵。コイツがマイだ」
マイと呼ばれた女性、見た目はいかにもギャルという感じだ、髪を派手な金色に染めているようだ。
……ふふ。俺は天然の金髪だ。羨ましいだろうマイさんとやら。
「天海葵です、はじめまして」
ともかく挨拶をする。挨拶は大事だ。
マイさんは俺の事をジーっと見つめる。まるで誰がの事を思い出すかのように。
「……いやホント似てるねー」
やはり、愛理ちゃんの事を連想していたようだ。どうやらこの人は彼女の事を知っているみたい。
「こんな娘そっくりな女の子がいて、龍二くん大丈夫? ねえねえ葵くんウチに住まない? ここ住み心地いいよ?」
マイさんが食い気味にそう聞いてきた。……って、この人もしかしてこの部屋に住んでるんかい。
「……遠慮しておきます」
なんか散らかってるし、ちょっと薄暗いし住み心地は悪そう。
「あ、フラれた」
「フラれちゃいましたねマイさん!」
イェーイ、と何故かハイタッチするマイさんと歌恋さん。いかにも"ギャル"って感じのノリだ。
「突然だけど葵くん。一ヶ月前くらいにウチの庭に入ったの君でしょ?」
「に、庭? 何のことですか……はっ、まさか──」
もしかして市警のサーバーに侵入した事か!? いやいやあれはちゃんと痕跡は消したはず……
「ふふふ、甘いわね葵くん。甘々だよ! 消し方が少しお粗末だった、筋は悪くなさそうだけどね〜」
……マジかよ、バレてたのか。
「なんか面白かったからアナタの事泳がせてたんだけど。まさか女の子になっちゃうなんて、ウケる!」
いや、ウケないで欲しいんだけど。こっちはめちゃくちゃ大変なんだけど。
「よいしょ、でりゃ!」
「ちょ! 何するんですか!」
何故かいきなりマイさんにスカートを捲られた。いやいやこの人何して──
「……んっ、ちょ、くすぐったいですって!」
太ももをペタペタと触られる。
「ふーん、"LD201/AR"ねえ」
マイさんは、しゃがんで俺の太腿に刻まれている刻印をジーっと見つめる。
「心当たりあるか?」
龍二さんが彼女にそう問いかける、もしかしてマイさん、何か知っているのだろうか。
「LDはその名前の通り"愛玩人形"、201はロット番号だね。200〜はぜーんぶ北米工場産。すぐに照会にかけてみようか?」
スラスラと、刻印の意味を解き明かすマイさん。すげぇ……この人何者だよ……
「できるか? なら頼む」
「さっすがマイの姉御!」
そうして、マイさんは椅子に座りなおす。どうやら俺のボディについて詳しく調べるみたいだ。




