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21話 捜査開始

〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「んーっ……今日もいい天気〜」


 新京市、中心部を少し外れた海沿いにあるビルの屋上。一人の少女が寝そべって空を見ていた。


「んふふ、にしてもあの精霊は当たりだったみたい」


 コンソールを開き、先日補足して眷属にした"プログラム"を確認する。ミニサイズで浮かび上がる真紅の竜。少女はそれを眺める。


「情報通りだったなぁ、あのエリアに電子精霊が出現するって」


 ホログラムを切る。そうしてヒョイっと立ち上がる少女。


「はぁ、ここからだと外縁部がよく見えるなぁ」


 ビルの淵に立ち、外縁部の方を眺める少女。彼女の長く紅みがかった髪が海風に揺られる。


「それにしても……歪んだ街だなぁ」


 外縁部、そうして中心部。交互に視線を向ける彼女。


「醜いし、碌な奴らが住んじゃいないし…………でも、この街のどこかに居るはず、待ってて。絶対に復讐してやるから」


 彼女の紅い瞳は、復讐という燃え盛る感情に染まっている。


「──あ、そろそろ仕事の時間。表の仕事はちゃんとやっておかないとね〜」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「……あったあった」


 床に落ちていたCLEARを拾い、そうして改めてこの前までで住んでいた部屋を見渡す。


「他に必要なモノは──」


 そうして、適当にいくつか使えそうなモノをリュックの中に詰める。


 俺は今、"天海葵"として過ごしてきた一昨日まで住んでいたアパートの一室にいた。


「はぁ……にしても、結衣おばさんはホント相変わらずっていうか」


 まぁ、あの人らしいっちゃらしいけどさ。



 俺こと"天海葵"。その身体は既に亡き者となってしまった。


 そうして俺はついさっき、唯一の親戚である結衣おばさんに連絡をとった。


 色々とややこし過ぎたけど一応全部話した。あの人なんだかんだいって心配性だし。黙っているのも悪いだろう。


 黙っていて捜索願とか出されたら面倒だしな……


「え、葵くん女の子になっちゃったの!?」


 なんとも気の抜けた反応、あの人らしいけど……



「葵ちゃーん! 必要なモノ持ったー?」


 玄関から聞こえる上郷さんの声。


「はい、もう戻ります!」


 それにしても……元はと言えば、全部あれを開いてからこんな事になってるんだよな……


 俺は手に持っているCLEARに視線を落とす。あの日、妙なファイルを拾いそのセキュリティを破りファイルにアクセスした瞬間、俺は元の身体を失った。


 CLEARの電源を入れる。ストレージにアクセスして目的のファイルを探す。


「……ない」


 なんだか嫌な予感はしていたが。あの時拾ったはずのファイルが見当たらない。


「葵ちゃん? どうしたの?」


「あ、いえ。なんでもないです」


 とりあえず、この件は後回しにしよう。


 俺は玄関に向かい上郷さんと合流する。


「お待たせしました、上郷さん」


「もー! 葵ちゃん? 私の事は歌恋って呼んでいいって言ったでしょ?」


 これでもかというくらい、わかりやすくぷんぷんと怒る彼女。


「すみません歌恋さん……」


 やれやれ、なんだかこの人と一緒にいるとテンションが狂うな。


 そうして、俺と歌恋さんは部屋を出て下に降りる。そのままアパート前に止まっているパトカー乗り込んだ。


「あー、それにしても……中々見つからないねぇ」


 と、歌恋さん。見つからないというのは例のハッカーの事だろう。


「あのスレにも大した情報は載ってませんでしたからね」


 ハッカー"SCARLET EYES"、俺も一応その筋の人間だ。彼女の事は把握している。


 SCARLET EYESは一年ほど前から、国や企業の様々な不正を暴き、世間に公開している謂わば"義賊"的なヤツだ。


 アイリスのBBSにも個別スレが立つくらいには人気で、彼……いや彼女? とにかくコイツを支持する奴は多い。


「にしても、SCARLET EYESか。スカーレットアイズ、緋色の眼……」


 もしかして、あの謎のメッセージに書かれていた"緋色の眼を持つエルフ"とはコイツの事なのだろうか。


「葵ちゃん? どうかしたの?」


「いえなんでも──。ってかその"ちゃん"呼びやめてくれません?」


 正直ものすごくむず痒い。


「えーなんで?」


 不満げな様子の彼女。


「────ん、先輩から連絡だ」


 歌恋さんは手のひらを耳に当てる。龍二さんは今本庁に行って俺以外の抜け殻事件の被害者情報を集めに行っているらしい。


「はぁ……」


 俺はパトカーの座席に深くもたれかかる。思わずため息が漏れてしまうくらいにはやる事が山積みだ。


 抜け殻事件の捜査、そうして"緋色の眼を持つエルフ"との接触。ついでに歌恋さんからSCARLET EYESの捜査のお手伝いも依頼された。


「これじゃホントに警察みたいだなぁ」


 まさか、ハッカー崩れだった俺が警察のお手伝いをする事になるとは。


 ま、抜け殻事件の捜査に関しては俺が進んでお願いした事だけど……


「はい。あ、じゃあ私達も合流します!」


 通話を切り、ハンドルに手をかける歌恋さん。


「どうかしたんですか?」


「いや、なんか葵ちゃんを連れてきて欲しいって」


 ……だからちゃん呼びは、いやもう言うのやめよう。それより──


「俺を連れて来い? どうかしたんですかね」


 まあ、行けばわかるか。

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