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20話 緋色の眼を持つエルフ

〜〜〜〜〜〜〜〜



「ふぁぁ……」


 朝が来た、なんとも清々しい朝。さて今日も学校に行かなければ──


 スタッと、足をベッドから下ろす。自分の足の方に視線を向けるとそこには、小さくて可愛らしいお御足が。


「あれ?」


 何故自分の足はこんな可愛い事に? ふにふにと足を触る、そうして細く柔らかい脚に手を伝わせていく。


「──あ、そうだ」


 忘れてた……俺、女の子のボディになってるんだっけ。


「夢じゃなかったんだなぁ……」


 覚めたら元通りなんて淡い希望を抱いていたけど、そうはならなかった様だ。


 ベッドから離れ、部屋の隅に置いてある鏡で今一度自分の姿を確認する。


 そこには昨日と変わらず、ロングのブロンドヘアー(ちょっと寝癖がついてた)に。青空を映し取ったような綺麗な色をした瞳。


 街頭アンケートを取ったら、100%の人間が美少女と答えるであろう見た目をしたロリ美少女がボケーっと突っ立っていた。


「ふわぁ……」


 大きなあくびをする、鏡の中の俺も同じように馬鹿みたいに口を開けてあくびをする。


「やれやれ」


 俺は部屋を出て洗面所に向かう。顔を洗い歯ブラシを……歯ブラシがない! ゴソゴソ……あった。新品の歯ブラシ、よかったよかった。


 そうして歯を磨き一階のガレージへ。


「おはようございます……」


「おう」


 既に龍二さんは起きていたようだ。


「コーヒー飲むか?」


「あ、はい。お願いします」


 俺はガレージ内にあった適当な椅子に座る。龍二さんはインスタントコーヒーの粉を注ぎ、ポッドでお湯を沸かしてカップに注ぐ。


「ほら」


「あざっす」


 カップを受け取る。テーブルの上に積まれている"デリシャス・ドーナツ"と書かれた箱を開ける。


「もぐ……もぐ……」


 シナモンシュガーがたっぷりとかかったオールドファッションドーナツを取り出して朝食がわりにいただく。


「……あ、龍二さん。下着とかパジャマとか。支払いありがとうございました。あとで返します」


「いや、別にいいぞそれくらい」


 "それくらいなんて事ねぇよ"みたいな態度をとってみせる龍二さん、かっこいい大人だ。


 正直そんな余裕がある訳じゃないのでここは彼に甘えておこう。


 龍二さんは昨日に引き続きピンク色のバイクを弄っていた。俺はそれを横目にコンソールを開く。


 受信した謎のメッセージ。昨日はこれの意味を考えているウチに眠ってしまった。


 改めて、メッセージボックスを展開してそれを開く。


『"緋色の眼を持つエルフ"と接触しろ』


 ただそれだけが記されたメッセージ。


「緋色の眼を持つエルフってなんだ?」


 うーむ、全く心当たりがないんだが、ってかこのメッセージ、送信者が『不明』になってやがる。


 ……怪しすぎるだろ。


「謎だ」


 うーん、でもこのワードなんか引っかかるんだよなぁ。


 まあとりあえず、この謎のメッセージについては保留しておくかな。


「……っし」


 作業がひと段落したのか、龍二さんは立ち上がりピンクのバイクにシートをかける。


「何処か行くんですか?」


「ああ、特犯課にな」


 どうやら、今日も特犯課が入る第四分署に行くようだ。


「俺も行きます!」


 捜査を手伝う以上は俺もついて行った方が良いだろう。


「……まあいいか」



 そうして、俺は制服に着替える。そのまま龍二さんのバイク乗せてもらい海沿いにある特犯課の第四分署に。


「おはようございます!」


 そうして特犯課に。部屋に居たのは秋田課長一人だけだった。


「おはよう、あれ? 葵くんも連れてきたの?」


 手元にあった電子新聞をオフにして、俺に視線を向けそんな事を呟く秋田課長。


「課長、昨日も言ったと思いますが……」


「うん、わかってるよ」


 ……よくわからないが、昨日俺が知らない間に何かやり取りがあったのだろうか?


「────葵くん、分かっていると思うけどこれは遊びじゃないんだよ?」


 秋田課長は、昨日龍二さんが言ったのと似たような事を問いかけてくる。


「もちろん分かってます」


「うーん、決意は揺るがないようだねぇ」


 俺だって生半可な気持ちで、捜査を手伝うなんて言っている訳ではない。


 俺は"抜け殻事件"という不可解な事象に巻き込まれた。そうして元の身体を失った。


「俺は知りたいです、この時間に何が隠されているのか」


「はぁ、ホントなら一般人のキミを警察の仕事に巻き込む訳はいかないんだけどなぁ」


 と、ため息をつく秋田課長。


「……まあ君は特例中の特例だからねぇ。被害者の視点から見れば色々わかる事もあるかなぁ」


 そうして、考え込む様子をみせる秋田課長。


 と、その時だった。特犯課のドアが喧しい悲鳴をあげバンッ! っと開け放たれる。


「上郷歌恋!! すみません!!! 遅刻しましたー!!」


 ……この人、ほんと喧しいな。もう少し静かに出来ないのだろうか。


「あ! 葵ちゃーん!」


 俺の姿を見つけた上郷さん、俺の方にやってきておもいっきり抱きついてきた。


「んーっ、今日も可愛いねぇ」


 頬をすりすりしてくる彼女。くすぐったい……


「あっ! 頼まれていた情報収集やっておきましたよ!!」


 思い出したようにそう叫ぶ上郷さん。情報収集とは仕事に関する事だろうか。


「あー、そうだ。その案件も残ってたんだっけ……」


「そうですよ! 抜け殻事件と並行してこっちもちゃんとやっておかないと!」


 そうして上郷さんは、ポケットから何かを取り出す。あれは簡易的なポケットサイズのホログラム投影機だ。


 空間に画面が浮かび上がる。映されたのは……


「SCARLET EYESを語るスレ?」


 どうやら、アイリス内にあるBBSのスレッドの一つの様だ。


「それって……あの?」


 アイリス内では有名なカリスマ的ハッカーだ。


「あぁ、今コイツを追っていてな」


 龍二さんが答える。しかしこの名前、何かが引っかかるような……


 俺はホログラム画面に目を向ける。そこには──

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