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遭難ですか?

「景色が……全然……変わらないっ……!」


 短い休憩を何度か挟みつつ、おおよそ二時間ほど森の中をさまよった人間の言葉である。


 もちろん完全に景色が変わっていないという訳ではない。

 斜面になっている場所を根っこを支えに登ったり、腰くらいまで伸びた草っぱらを掻き分けたりもした。

 けれども、やっぱり景色が変わった感は出ないです。


「んっっ……しょいとぉ……。んんうぅーーー! ふへぇ……流石に歩き疲れるよ……。足も痛くなってきたし、もーーー気が滅入る!」


 休むのに良さそうな木の窪みを見つけたので腰を下ろして伸びをする。

 流石に裸足でずっと歩くのは駄目だね。

 怪我しないようにって変に気を使うから余計に疲れるよ。

 でも現状私は怪我らしい怪我をしていないので、そこは幸いかな。

 

「いやー、でも結構歩いたよね~。今って何時なんだろうね? 暗くなる前には色々見つけたいんだけどなぁ……」


 木が密集しているので、全体的に薄暗いと言ってもいい状態。

 と言うことは暗くなるのもきっと早い。

 今のところは寒くないけど、夕方にでもなれば冷える可能性も高い。

 怪我のリスクも高まる。

 何より暗いと怖い!


「暗くなったら何か変なの出ないよね……。ホラー展開はホントに嫌だよ……?」


 異世界だから出ない訳がないとは思うけど。

 せめて何か出るなら明るいときにして欲しいよね。

 それこそ会わなければいけないであろう精霊とかね。

 ……未だに精霊どころか動物やら虫やらにも出会ってないけどね。

 

 そういえば不思議だよね。

 異世界だし、見たことないファンタジー感満載の生き物とか居てもおかしくないだろうに。

 ここまで何も居ないとそれはそれで不気味……。


「うーん……何か居たら襲われるかもしれない……。かといって居ないならそれはそれでちょっと怖い……。安全で可愛い動物と出会うのが理想だね」


 今までの流れから確実にそんな都合の良いことにはならないとは思うけれど。

 


………………



「んしょっと! 休憩終わり~。今日を生き延びる場所を見つけるぞ~!」


 あんまり長い時間休憩出来ないしね。

 休憩してると眠気が襲ってくるし、何より精神的に復活出来なくなりそうで……。

 話し相手が居ればまた別なんだろうけど……。

 

 そういえばここに送り込んでくれやがった神様は、現地の精霊がうんぬんって言ってたような?

 精霊って事は何かに宿ってる的な認識であってるのかな?

 んーーー……考えることが多いなあ……。


「何にせよ、歩かなきゃ始まらないかな。よし、それじゃ行ってきます!」


 立ち上がり、今まで寄りかかっている木に挨拶をしてまた歩き始める。

 既に同じようなことを何度も繰り返しているので、土が付着して汚れた部分はもはや気にならない。

 裸足だしジャージを転用したパジャマだし、汚れは今更だよね。


「この数時間で慣れたくない事に慣れちゃったなあ……。何でこうなっちゃったのかなあ……」


 怪我をしないように注意して歩き続けて十数分、つい口に出してしまう。

 こんな代わり映えのしない景色の中を遭難者として歩くつもりは無かったんだけどなぁ。

 っと珍しい、随分とおっきな木が倒れてるや。

 こういう代わり映えの仕方は違うと思うな。


「……? この辺り落ちてる枝の量多いよね。ちょっと歩きづらいな」


 倒れていた木を迂回するように歩いていると、そんな事を思う。

 そりゃ木が倒れてればその影響を受けるのかもしれない。

 それにしたってさっきまでとは大分違う。

 意図的に枝をどかした方が歩きやすいまである。


「よい……しょっと。枝どかしながらは腰痛くなるから勘弁してくださいな。太めの枝が多いからまだ拾いやすくてマシだけどっ……さ」

 

 枝を拾って歩いてを繰り返していると、良い感じの長さと折れにくさの枝を拾った。

 これで足下の枝を避けやすくなったかな。

 どうせなら杖の代わりになりそうな枝とか落ちてないかな~。


 枝拾いばかりをしていたので足下にばかり注意を向けていた私は、目線を上げ周囲に向ける。

 と、何となくの違和感を覚えた。

 今までさ迷ってきた時と少し雰囲気が違う……?


「……木の種類? そういえばいつの間にか同じような種類だけになってるかも」


 見た感じ、明らかにこれ種類違うでしょ! っていうのが無くなっている。

 雑多な森から統一された森というか……。

 とにかく何か変わったことは事実なのだろう。

 ほんの少しだけど気が楽になる。

 歩いてきた意味あったよ……!


「やっと景色が変わった……! 足下危ないけど嬉しい……! このまま川とか……へくっっっし!」


 ……うん。少しだけ嫌な予感するんだ、私。

 

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