異世界ですか?
目を開くとそこは精霊の集まる異世界でした!
嘘です。異世界かどうかも判断できないような森の中です。
「ここどこ……」
正直さっきまでのあれやこれやは全部夢だったのではないか、と思いたい気持ちも無くはないです。
ただ……今の状況がそれを許してくれそうにもありません。
今の私は地べたに座り込んで、木に寄りかかっている状態らしい。
確かに眩しさに襲われたときも謎空間に座り込んでいたけど、地べたにそのまま座らせた状態で送り込むってどうなのよ……。
「……どうしよう? このままここに座り込んでる訳にはいかない……よね。うーん、探索とかした方がいいのかなぁ」
取り敢えず顔を動かし辺りを観察してみる。
やっぱりあるのは木ばかりですね。しかも結構なサイズ感のある。
木に詳しくないから種類までは分からないけど、同じ種類の木だけがあるわけではなさそうかな。
明らかに葉っぱの種類が違うのがあるし、たしか広葉樹と針葉樹だったっけ?
今寄りかかっているのは広葉樹っぽいけど、針葉樹っぽいのも普通に生えてるのが見えるものね。
辺りを確認した後目線を下に向けると、そこにあるのは土と太い木の根っこ。あと折れた枝と落ちた葉っぱがまばらに。
「うーーーん……。意図的にこの場所に送り込んだのか、不慮の事故なのかで危険度段違いだよねぇ……」
何故今自分がこんな森の中に居るのかも分かってないから、何をして良いのかすら分からないからなぁ……。
外来種何とかしてとは言われたものの、そもそも何が外来種かも分からないからどうしようもないよね。
……このままじゃ心細いだけだし、探索始めましょうか。
取り敢えず安全で落ち着いて考え事が出来る場所を見つけたいなぁ……。
「んぅーーーーっしょい! 元気だして行きまっしょい!」
木の根を支えに勢いよく立ち上がる。
おもいっきり地べたに座らされていたからか、土がついている箇所がいくつもあったので手で叩いて落としていると、嫌でも今の服装に目が向いてしまう。
つまり――――
「ちょっと私パジャマのままで送り込まれたの!? えっ、ちょっと、何とかならなかったの!? というか待ってよ私もしかして持ち物とかも無いの……?」
慌てて座り込んでた周囲を見渡すけど、あるのは自然由来の物ばかり。
嘘でしょ……、ホントに着の身着のままで送り込まれたの……?
小旅行的な展開想定してたなら必要な物って結構多いんですよ……?
幸いなことに今着ているパジャマは、中学時代のジャージを卒業と同時にそのままパジャマ化させたもので、運動にはまあ適してはいる。
けど限界はあると思うの。
というか服装に気が向いてるけど着の身着のままってことはもしかして裸足……?
「これ小旅行なんかじゃなくて遭難でしょ……」
この状況で私に探索しろと言うのですか神様……。
私に助けを求めたのではないのですか?
森の中で裸足でパジャマの人間が歩いているのはそれはもう何かの事件ですよ?
普通に怪我するよね?
何かこう精霊も居るらしいし私魔法とか使えないかな……?
駄目かな……?駄目そうかな……?駄目そうだな……。
せめて靴は履きたいんだけどな……。
「せめて! 靴ぐらいは! 履かせてよ! っ……ううぐぅぅぅぅぅ………………」
どんなに願ってもうんともすんとも。
もう唸るしかありません。
こんな場所ではふて寝も出来ません。
私の心は折れかかっていますので少し時間をください。
目を開けた時と同じように木に寄りかかって再度私は座り込む。
この場所にずっと居ても何も無い状態で暗くななるだけだし、只でさえ心細いのに夜になったらもう泣く。
何より水を確保しなければ生きていけない。
「っ……まずは水場。裸足で怪我とかもういい……。」
泣きたくなるけどそれは後。
今は飲み水探しと安全な寝床探し。
余裕があれば何か食べられそうな物探し。
もう時間が限られているから早く探さなくちゃね。
改めて気持ちを強くもって立ち上がり、辺りを見回してみる。
景色はどこも一緒だし最初に目を開けた時に向いていた方向に行こう!
「それじゃあ行ってきます! ずっと寄りかかってごめんね。私サバイバル頑張るよ」
寄りかかっていた木に挨拶をしてから、歩き始める。
なるべく怪我をしないように少し慎重になりながら進んでいこう。
待ってろ自称神様の詐欺師!
次会った時にはめちゃくちゃ文句言うからね!
……ここまで神様が恨まれてしかるべき展開になるとは思いませんでした。
ほのぼのどこ…?