ギルド加盟
俺は2年間のニート生活に終止符を打ち、生まれ故郷のノール村を後にした。すでに17歳。さすがにこれ以上無職で居続ける訳にはいかなかったのだ。
身一つで飛び込んだのは、地方都市エールボスだ。かつて俺が学んでいた王立アカデミーの在する古都である。都市の歴史も深ければもちろんギルドの歴史もそれなりで、ここエールボスには、並みの地方都市では考えられないほど多種多様なギルドが存在しているのである。
さて、生計を立てるにはまず、何らかのギルドへ加入しなければならない。そこで俺が目を付けのが、エールボスいち審査の緩いとされるギルド「テルフ」であった。受付へ赴き、書類を届けて数日後。簡単な経歴調査と面談の末あっさりと加入を認められてしまった。
二年前、俺が王立アカデミーを卒業したばかりの頃ではありえない話だ。確かに街路を歩いていても、武器を携えたギルドメンバーらしき人間を頻繁に見かけると思ったが。
面接はテルフ集会場の小部屋で行われた。ギルドメンバーの腕章を受け取った俺は、その足で集会場広間へと向かった。
テルフの集会場はエールボス街の中心部に位置し、俺の自宅からもさほど遠くない。すでに日は傾きかけていたが、俺はのんびりと広間を回ることにした。
集会場広間には、ギルドの受注したクエストが貼り出されている。依頼人は一般市民から豪商まで幅広く、時には王国発注クエストも存在する。
ギルドメンバーはここでクエストを選択し、無事遂行することで報酬を受け取る。これがメンバーの主な収入源であった。しかし大方のメンバーは、その報酬を一夜のうちに使い果たしてしまう。エールボスは古都であると同時に、欲望の街でもある。酒に女、そして賭博場。俺には無縁の世界であるが、アカデミー時代に何度か、忍び足で夜の街を散策したこともあった。
テルフに限らず、ギルド集会場の位置する通りには食堂や酒場、そして娼館が軒を連ねている。これらはほとんどギルドが元締めであり、客も大半はギルドメンバーである。とりわけテルフ集会場の周辺は、昔から大層賑わっていた。同時に治安も最悪である。さきほど面接中耳に挟んだのだが、テルフの所属メンバーは現在に200名を超えているそうだ。経験や能力を問わない入団規定のおかげで、団員数においてはエールボス最大勢力と言えるだろう。
広間の共有スペースを見渡すと、チームメンバー募集のビラを配る者がチラホラと見受けられる。また掲示板には募集要項を記した広告も貼られており、参加条件が記載されていた。
そう。俺の目的はこいつであった。このチームメンバー募集を探すために、広間をうろついていたのである。
戦闘経験の少ないギルドメンバーは、選べるクエストの種類も限られている。しかし何人かのチームを組んでいれば、多少難易度の高いクエストを受けることもできるのだ。もちろん報酬は、下位クエストのそれと比べ物にすらならない。
出来るだけ初級者同士のチームを希望していた俺は、掲示板を隅々まで見渡していた。