7.タイムリミット
ただ泊まっているだけでは申しわけないので、畑仕事や掃除、料理などを手伝った。
村人たちは良く知りもしないぼくらを受け入れて良くしてくれた。
「ずっとここにいろ。おめぇは何でもできて、すげぇな……姉ちゃんはまぁ、かわいいなぁ」
経験したことのないぐらい慕われた。
ぼくがスキルを複数持っていることを何となく察してのことかもしれないけど、役に立てる喜びは、おやっさんとあの本を直して以来だ。
もしぼくがゾンビじゃなかったら、この生活をずっと続けていこうとしただろう。
けど、リミットはすでに訪れていた。
「兄ちゃん、風呂入ったか? なんか臭いぞ」
「ああ、ごめんよ」
身体が腐り始めた。
それに伴い、時々無性に怒りが沸き上がる。
身体が腐れば、自我を失ったタダのゾンビになってしまうのか?
そんなの嫌だ!!
焦る気持ちと怒りを抑えながら、ぼくはただ待った。
「コル君、ここで幸せを実感したのに、どうして素直に人間に戻ろうとしないんだい?」
「戻ろうと思って戻れるわけじゃないだろ。ぼくはもう死んでるんだ。戻るべきでもない! あんなに何人も殺しておいてなぁ!!」
「そうかい、私は君の考えを尊重するよ」
そう言って、彼女はぼくの側に寄った。
腐敗の進んだ醜く、臭気を放つ身体でも、少し安らぎを感じた。
◇
三日目の朝、『索敵』に反応があった。
「大きい、何か大きいモンスターが来るぞ!!」
この三日、ぼくがいるせいか全くモンスターが現れなかった。
だが、そいつはやって来た。つまり大物だ。
すぐに現場に向かう。
「みんな、逃げろ!!」
「ドラゴンだぁ!!!」
「焼かれるぞ!!」
村人たちが逃げ惑う。
ドラゴン!? やったぁ!!
「おい、二人とも逃げろ!! 焼き殺されたいのか!!」
「うがああああ!!!」
ぼくは本能のまま、ドラゴンに向かって突進した。
いや、待て、殺してはいけない。
ぼくを殺してもらうんだ!!
[グロォォォ]
は?
これが、ドラゴン?
森の緑に擬態して、火を噴いていたのは緑色のサラマンダーだった。
「『ステータスオープン』!」
===ステータス===
■フォレスト・サラマンダー(20)
・種族:魔獣
・レベル.25
・体力:B 魔力:B 精神力:C パワー:E スピード:E 運気:E 器用度:C
・スキル
B:『再生』
C:『潜伏』
近づくと火を噴かれた。
「こいつじゃない」
全然だめだ。
油+焚火よりは高温だけど、消滅させるには程遠い。
「コル君! 畑燃えちゃうよぉ!!」
ああ!!
ぼくは大丈夫でも村に被害が……
「お母さーん!!! 助けてー!!!」
炎は広がり、煙が子供たちを襲っていた。
あの、苦しみ、辛さをぼくは知っているのに、なんでこうなることを考えなかった!?
《スキルが上達しました 『火耐性・中』が『火耐性大』へ》
《スキルを獲得しました 『火魔法・中』》
《スキルを獲得しました 『光耐性・小』》
「その口を、閉じろ!!」
ぼくは炎を吐く口を正面から無理やり閉じ、そのまま、首をねじ切った。
《スキルが上達しました 『筋力向上・小』が『筋力向上・中』へ》
《『スキル強奪』成功 『再生』『潜伏』獲得》
《『再生』発動……成功》
フォレスト・サラマンダーによるブレスをまともに受けたが、ぼくの身体は戦う前に戻った。
「ば、バケモンだぁ!!」
その言葉が一番ダメージが深い。
「今のは迫力あったねぇ」
「子供たちは? 治療を……」
「コル君、止めよう」
引き留められた。その真意はすぐわかった。
村人たちの敵意はモンスターからぼくに向かっている。
ゾンビになっても心が痛い。
まるでこれがぼくの宿命であるかのように感じた。
「お世話になりました」
ぼくは森へと逃げるように立ち去った。
===ステータス===
■コルベット・ライソン(享年17)
・種族:アンデッド
・職業:ハイゾンビ
・レベル.90
・体力:A 魔力:A 精神力:A パワー:S スピード:S 運気:F 器用度:S
・スキル
SS:『スキル強奪』
S:『言語マスター』『オートスキル』『経験値倍加』
A:『ステータス確認』
B:『☆再生』『↗ 筋力向上・中』『治療・中』『斧・中』『↗ 火耐性・大』『☆火魔法・中』
C:『☆潜伏』『索敵』『体温調節』『革加工・中』『精肉・中』『格闘・初』『投げ・初』『短剣・初』『飼育・中』『栽培』『裁縫・中』
D:『☆光耐性・小』『服飾・初』『解体・中』『嗅覚向上・小』『視覚向上・小』『聴覚向上・小』『投擲・初』『弓・初』『調理・中』『掃除・中』『調合・小』『解毒・初』『採掘・中』『採取・中』『伐採』『算術・初』『速記』『校正』
E:『威嚇』『発声・初』『看病・初』『採石・小』『釣り』
続きが気になる、面白いと思った方はぜひ、ブクマ・評価をお願いします。