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48.手仕事の妙技



 ギルドを出て昼食を食べた後、服を買いに行った。でも最初に見つけた店は農地から近いこともあって作業着や冒険者用の装備が主だった。おしゃれな人は西のグレートブリッジ近くまで買いに行くらしい。ルカがお店のおばさんと話していたけど彼女たちに似合いそうな服は古着の花嫁衣裳ぐらいだった。なんで売りに出されてるんだろう。


 ぼくとしては作業着で大満足。これで街でも浮かないし不幸な身寄りのない奴隷とは思われないだろう。


 とか思ったらぼくがどんな恰好でも関係なかった。ルカたちのことを旅の芸人一座やら踊り子と勘違いしてからんでくる人がいるし、とにかく目立つ。みんなが荷台の中にいた時と違って一緒に歩いているとぼくへの視線は決まって嫉妬だ。

 ちょ、みんなあんまりくっつかないで。視線が痛い。

 あれ? でもその中に冷静で一定の距離を保ったものがいくつかある。ロラスも気づいているらしい。監視されているんだ。


 ぼく『索敵』できるって言ったのに。バレバレだよ。


 不気味だけど何もしてこないから気にしないことにした。

 日が沈んだ頃、ガリウスさんの紹介で職人街の鍛冶屋さんに会うことになっていたので待ち合わせ場所に向かった。ルカの鎌を見てもらおうという件だ。


「リグスビーだ。ガリウスがどうしてもと言うから見てやるが、見込みがないとわしが判断したら終わりだ。いいな?」


 同じドワーフでもガリウスさんと違って怖い。女は入るなとぼく以外は入れてもらえなかった。


「とりあえず、それを打ってみろ」


 言われたままぼくは金床に置かれた鉄の塊を金鎚で打った。向こう打ちだ。まず金属の不純物を叩いてはじき出す。その為に向かい合って交互に叩く。その後も刃を研がされたり、いろいろやって短剣ができた。高い砥石で本砥ぎまでやった。


 ふぅ、一から剣を造ったのは初めてだ。おお、これもらえるのかな? あ、くれないんだ。


 あれ? なんか普通に手伝わされてない?


「筋がいい!!」

「うわっ、あ……ありがとうございます」

「どこで修行した!?」


 声が大きいな。よし。


「いえ、昔よく炭切りをやっていて!!」


 鍛冶仕事の初歩。炭を一定の大きさに切る仕事だ。鍛冶仕事は火加減が命。だからそこから始めて、向こう打ちをする前にクビになった。スキルが無かったからだ。


「お前ならワシの弟子に相応しい!!」

「ありがとうございます!!」

 

 ガリウスさんが後からやって来た。カルヴァドスの鎌を持っている。どうやら手伝う代わりに鎌を見てもらうということらしかった。弟子にはなりませんけどね。

 リグスビーさんは鎌を見て一段と険しい顔になった。また、ボロくそ言われる……。


「面白いっ!!!!」

「え?」


 ぼくだけじゃなくガリウスさんもびっくりしている。


「そんな不格好で適当な造りの武器がか?」

「バカやろー、だからてめぇは半人前なんだ!! 少しはコルベット君を見習え!! もっと独創性を持て!!」


 見た目は同じだけどリグスビーさんの方が歳が上なのかな?

 ガリウスさんは基本や理想的な形状があると力説しているけどリグスビーさんは基本に捕らわれて客が満足できないなら意味がないと言う。


「コルベット君、なぜこの形状になったかコイツに教えてやれ!!」

「あの、持ち主が鎌を欲しがったんですけど、鎌は脆いし大きい割に間合いが狭いと他の仲間に言われて、それなら大きくして攻撃範囲も広ければ問題ないんじゃないかと……」


 ルカの力ならどれだけ大きくても振れるから平気だろうと。


「これが武器職人と野鍛冶の違いだ。野鍛冶は同じもんを造る。一個ずつ特注で鍋や包丁を受けるより同じもんを造り置いておいた方が儲かるからな。確かにお前の日用品は評判がいい。だが武器は違う。大事なのは扱う者のことを良く知ることだ。それが武器職人にとっての基本だ! コルベット君はそれができている!!」


 ガリウスさんは反論しているけど、ぼくは聞いていなかった。プロに褒められたのがうれしい。


「だが、これのメンテナンスはワシでもできん!!」

「どうしてですか?」

「ワシは魔導の類は素人だが、これがただの武器ではないことは分かる。エンチャントされた効果が分からない武器は下手に手出しできん!!」


 これは武器というより魔道具に近いという事らしい。

 だけど、リグスビーさんの兄弟子が例の魔法都市アルクスにいるらしく紹介状をくれた。


「ありがとうございます!!」

「さぁ、次はこれを打て!!」

「え?」


 その後もぼくに技術を教え込むと言って中々帰してくれなかった。そろそろ夕食の時間だ。でも夕飯のことを考えているとリグスビーさんから怒られる。ぼくは集中して聞くことにした。その技術はたぶん短時間で教わるものではない。


「弟子じゃないのになんでそこまで教えてくれるんですか?」

「どうせ教えても身にならん。全て習得するには10年かかる。だがお前の中でワシの技術が少しでも生きると思えば少し酒が美味くなる」


 鍛冶は大変な仕事だ。体力と精神力が必要な上修行は厳しい。危険な作業が多いから仕方ない。ここも弟子がいないということはリグスビーさんの技術は彼が引退したら潰える。


 ぼくは集中した。


《ガンバレガンバレ! あ、『鍛冶・初』が『鍛冶・中』に上がったよ! あと『金属細工』が発現したよ!!》


 神様がお知らせしてくれた。

 え? ぼく『鍛冶・初』なんて持ってたっけ?

 

 その瞬間、さっきまでリグスビーさんが言っていたことやっていたことが一気に理解できた。


 ふいごで風を送り、火加減を調節し、何度も叩き不純物を取り除く。


「いい仕事だ」


 気が付くと、ぼくは美しい長剣を一振り造っていた。


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